RING OF FIRE : 火山狂走曲

三宅島・雄山に、MTBライダーのスティーブ・スミスが挑む。日本の自然美と高速ダウンヒルのスリルがMIXした壮大なライディング映像『Ring of Fire』、ついに世界同時公開。
By Hiroyuki Nakagawa

 

「あれ、富士山じゃない?」

 

三宅島へ向かう19人乗りの小さなプロペラ機の窓から、遠く西の方向に富士山を見つけたスティービーは目を輝かせてそう言った。カナダ人のダウンヒルトップアスリートであるスティーブ・スミスはワールドカップで見せる鋭い眼光そのままに、日本にやってきた。地元バンクーバーでは日本食レストランを食べ歩き、日本の文化も勉強したという彼は、このプロジェクトでついに念願の来日を果たす事となった。

日本は火山の島である。だからこそ、人々は畏敬の念を抱いて、そして火山と共に暮らしてきた。現在でも100を超える活火山が日本列島に点在し、その中でも特に噴火の可能性が高く、ランクAに分類される火山が13ある。その一つが三宅島だ。

2000年の大噴火では全島民が避難する事態となり、2005年までの4年半に渡って、島の人々は島外での避難生活を余儀なくされた。避難指示が解除された現在ではおよそ3000人が島に戻り、今年は帰島10周年を迎える。この10年で着実に復興の道を歩んだ三宅島は、すでに以前のような日常を取り戻しており、行政の観光に対する取り組みが進む中で、このプロジェクトに対して撮影の許可がおりた。これは三宅村から正式に許可を得て、2000年の噴火以降、初めて公のカメラが山頂まで到達して撮影に成功した映像記録である。

 

Ring of Fire © Hiroyuki Nakagawa

 

三宅島は周囲8km、海底400mからそびえる火山の、その火口だけが海上に姿を現しているような島だ。2000年の噴火によって約2500年ぶりにカルデラが形成された。海岸線まで迫った溶岩の固まりや火山灰と土石流で埋もれた神社など、噴火の痕は未だあちこちに見る事が出来る。しかしながら海に囲まれ海産物も豊富で、かつて「日本のハワイ」と例えられたほどに、自然の力に満ち溢れた美しい島でもある。

海沿いの集落から高度を上げていくと凄まじい勢いでその景色が変わっていく。通常は立ち入りが禁止されているゲートから上は、長年の火山活動の影響で朽ちた樹木の幹だけが乱立する世にも不思議なゾーンが広がる。そこでは黒い溶岩と火山灰が地面を支配していた。車止めから最後のアプローチは当然ながら徒歩となる。2000年の噴火以前は登山道であったという尾根沿いの道、しかし以前のルートは火山灰に飲まれ、今はどこが道なのか判断できない。40分ほどの登山で山頂に到達したが、そこでの景色は想像を遥かに超えていた。立っている足下から垂直に切り立った火口は数100m下まで大きな口を開けており、そこからは噴煙が絶え間なく吹き出ていた。そこはまさしく火山の頂だった。

 

Ring of Fire © Hiroyuki Nakagawa

 

予定されていた滞在期間中、三宅島山頂は不幸にも連日霧に覆われてしまった。それでも彼は毎日山頂までバイクを押し上げ、路面を確認し、カメラの回っていない深い霧の中を走り続けた。撮影日程の延長を決めた次の日、ようやく山頂の霧が晴れた。撮影できない日々の鬱憤を晴らすかのように、彼のライディングは常に100%。カメラの前を通り過ぎた後も、止まる事なく走り続けた。

 

「奇妙な体験だった。地球のパワーを感じたよ」

 

三宅島の火山灰に刻んだ彼のトラックはクレイ・ポーターの作品で確認できるだろう。

 

 

※三宅島での撮影は特別な許可を得て行っております
撮影協力:三宅島、富士見パノラマリゾート、渋谷マークシティ、新中央航空(株)

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