Casuals:NuckleDu

謙虚な性格ながら剛胆なプレイが売りのトッププレイヤーNuckleDuを紹介する。
APEX 2015で『ウルIV』をプレイするNuckleDu
APEX 2015で『ウルIV』をプレイするNuckleDu © Robert Paul
By Michael Martin

『ストリートファイター』シリーズのガイルの映像をオンラインで検索すれば、Team LiquidのNuckleDuの映像に出会う可能性は非常に高い。彼は米国の『ストリートファイター』プレイヤーの新世代を代表するひとりだ。週末になれば彼はTeam Liquidの白いジャケットを身にまとい、『ストリートファイター』シリーズのトーナメントで生活を賭けた戦いに身を投じており、勝利を重ね続けている彼は、格闘ゲームコミュニティの中で尊敬と憧れの眼差しで見られている。「向こう見ずで気が強い」とさえ表現される時がある彼のユニークなゲームプレイが原因で、彼自身の性格が誤解される時もあるが、本人は自分の勝敗に関わらず、このゲームとプレイヤーたちへのリスペクトを忘れない若き優秀なプレイヤーだ。

NorCal RegionalsのNuckleDu
NorCal RegionalsのNuckleDu © Alex Rubens/Red Bull eSports

謙虚な男

「格闘ゲームは本当に馬鹿なゲームだなと思っていたんですよね」上下左右にしか動けないという点をその理由として挙げたNuckleDuだが、叔父が大会に出入りしていたプレイヤーだったことから、『ストリートファイター』の世界へ入っていった。叔父と定期的に対戦を求められ、何回も叔父に倒されたNuckleDuは、結局自分でPlayStation3を買い、叔父を倒すべく練習を重ねていったが、当時彼の周りにはPlayStation3が大会レベルで戦うにはベストの選択肢ではないことを教える人さえもいなかった。NuckleDuは『ストリートファイター』の基礎を教え、トーナメントに参加させてくれたのは叔父だと振り返っている。

昨今の『ストリートファイター』シーンが誇れる部分は、その発展にある。昔はシーンの発展を目指し、地元のアーケードで大会が開催されていたが、オンラインプレイがその流れを変え、今や絶滅に近いオールドスクールなアーケードシーンに足を踏み入れたことさえないかもしれない若いプレイヤーたちが大会に参加できるようになった。NuckleDuも主にオンラインでプレイした。何故ならタンパでは『ストリートファイター』シーンが存在しなかったからで、今はその選択が花を開きつつある。

Combo Breakerで対戦するNuckleDuとJustin Wong
Combo Breakerで対戦するNuckleDuとJustin Wong © Red Bull eSports

みんなの男

数年前のNuckleDuの夢は、自分が映っている映像がYouTubeに投稿されることだった。YouTubeの遍在性を考えれば、それはかなり控えめな目標に思えた。しかし、今や彼の名前で検索すれば、様々なマッチハイライトや映像集が表示される。また、彼が所属するTeam Liquidのライブストリーミングを試聴すれば、『ストリートファイター』をプレイし、サポーターと交流する彼の日々の活動が確認できるだろう。しかし、彼は人気のストリーマーのような何万人もの視聴者を抱えている訳ではない。あくまでカジュアルなプレイヤーとファンが彼を近くに感じられるだけのリラックスした内容で、『ストリートファイター』のトッププレイヤーの控えめで正直な姿が確認できる。

来る日も来る日も、彼はチキンウイングを箸で食べながら、ストリーミングをチェックし、視聴者とチャットしながら彼らに感謝の気持ちを述べている。NuckleDuはストリーミングでも現場でも彼とのプレイを希望する人たちを嫌がることはない。「僕は対戦で人からお金を取ることはないですね。僕のストリーミングを見てくれる全員に感謝しているし、くつろいで欲しいから」そしてメジャートーナメントでは、観客で埋まった会場と、何十万もの視聴者のライブストリーミングが行われていることを知りつつも、決してクールで冷静な姿勢を崩さない。しかし、対戦相手を怒らせてしまうようなプレイや自分と観客を盛り上げるようなプレイを見せる時もある。

APEX 2014でフレンドリーを楽しむNuckleDu
APEX 2014でフレンドリーを楽しむNuckleDu © Robert Paul

リスペクトの男

ガイル使いのプレイヤーの大半は守備を重視したアプローチでマッチに臨む。ソニックブームやサマーソルトキックで相手と距離を取りながら、攻撃を仕掛けるタイミングを待つのが一般的だ。ガイルの強さが中位であることを考えれば、NuckleDuが似たような戦術を用いても納得が行くが、彼は本人が言うところの「逆のプレイスタイル」を用いており、ソニックブームとダッシュ、バックナックルやローリングソバットで相手にプレッシャーをかけていく。これはガイル使いの中では希有なスタイルのひとつだ。「ガイルはトーナメントで優勝できるキャラクターですよ。リュウみたいですし、安いキャラクターじゃない。プレイヤー次第で上手く使えるキャラクターです」彼が自分の作戦通りにプレイできている時は、プレッシャーをかける彼のプレイは美しい輝きを放つ。彼は数秒でパーフェクトラウンドを演出し、ガイルを中位のキャラクター以上に見せる時もある。

そしてサングラスだ。「サングラスをかけていることでネガティブなフィードバックをもらうんですよ。アクセサリーを装着できるのはガイルだけだから、やらない方がおかしいと思うんですけど(笑)」彼はこう言って笑うが、サングラスは対戦相手を見下すつもりでかけている訳ではないと強調する。「単純に観客を味方に付けるか、観客の目を覚ますか、対戦相手を倒すか、負けている場合は自分をなんとかしようとしているかのどれかです」要するに心理戦の一環に過ぎないという訳だ。怒りのパワーで強くなるプレイヤーもいるので、常に期待している結果が出せるわけではない。しかし、NuckleDuのマッチで関してひとつだけ確かなのは、どこかのタイミングでサングラスがかけられるということだ。

© Red Bull eSports

切磋琢磨の男

トーナメントで恐れられる存在になりたいと考えているNuckleDuは、最近は自分のプレイでそれを確かなものにしようとしている。「僕がそのレベルに辿り着けているかどうかはまだ分からないですが、僕と対戦したくない人が多いのは知っています」こう答える彼だが、Combo Breakerが始まる前、本人は自分がこれまでビッグトーナメントでは勝てなかったプレイヤーという評価を受けているように感じたと振り返っている。NorCal Regionalsでは、もしウメハラと対戦していなければ、キャリア最大の勝利のひとつを収められていたかも知れない。NorCalではウメハラの殺意リュウに対抗するためにディカープリに代えたことが本人を窮地に追い込んでしまった。NuckleDuはウメハラが殺意リュウ対ガイルの対策を熟知している(英文記事)と考えてしまったため、キャラクター選択を迷ってしまったと後悔している。「どのキャラクターにするか迷ってしまう場合は、負ける時が多い。これが原因で沢山のマッチを落としてきましたよ」

Combo Breakerは個人としても、プロとしても重要な勝利だった(英文記事)。優勝できないと耳元で囁く悪魔に打ち勝ち、同時に待望のCapcom Pro Tourポイントも獲得した。ここでもNuckleDuの控え目で正直な性格が見受けられ、彼は自分の家族が経済的に苦しんでいるので、賞金が助けになると告白した他、また、交通事故で背中を負傷し、その怪我に悩まされていたため、スポンサーとカイロプラクターからはCombo Breakerに参加するためにCombo Breakerの開催地だったシカゴ行きをやめるべきだと助言された上での参加だったことも告白した。NuckleDuは週末を通じて痛みと戦いながらトーナメントを戦っていた訳だが、本人は一切それを表情に見せなかった。幸い彼の怪我に生命の危険はなく、CEO 2015への参加や、Capcom Cup出場権獲得への道を妨げるものではない。また、NuckleDuは優勝の可能性についても控えめで、「CEOで優勝できる可能性は15%位だと思う」とコメントしている。

Code Breaker 2015を制したNuckleDu
Code Breaker 2015を制したNuckleDu © Red Bull eSports

NuckleDuは『ストリートファイター』でかなりの好成績を収めており、2012年以降、数々の大会でベスト8入りを果たしてきた。また、NorCal RegionalsとCombo Breakerでの力強いパフォーマンスによってCapcom Pro Tourのランキングのトップ10入りを果たし、Capcom Cup 2015の出場権獲得も視野に入っており、出場すれば昨年の9位以上の成績を残せるチャンスもある。『ストリートファイター』シーンを代表するビッグプレイヤーとの対戦を重ねてきた彼は、格闘ゲームのコミュニティとファンに親しまれる努力を重ねることで、米国人プレイヤーの中でトップレベルの人気を誇るようになった。数年前は格闘ゲームが好きでさえなかった青年としては上出来だ。

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