まずは「『シティコネクション』なら大丈夫」と思われる必要があった─ジャレコゲーム"再復活"のキーマン

かつて多くのゲームファンを虜にしたゲームメーカーの"遺産"は、現在、東京・秋葉原のとあるオフィスで、再び世に出る日を待っている……
ジャレコゲーム“再復活”のキーマン
By Giichi Totsuka

 

『シティコネクション』というゲームをご存知だろうか?

 

プレイヤーが操作するのは、おてんばな美少女・クラリスが運転するクラリスカー。世界各国のパトカーの追撃をクールにかわしながら、フィールド内のすべての道(足場)を走破すればステージクリア……という内容の、横スクロールカーアクションゲームである。1985年のアーケード版リリース時は、テクニカルな操作が要求されるゲーム性と、世界各国の風景モチーフにした美しいステージ背景、クラシック音楽を大胆にアレンジしたBGMが話題に。同年にリリースされたファミコン版の移植度の高さもあって、いまでも多くのゲーマーに愛されているタイトルのひとつである。

『シティコネクション』を開発・販売したゲームメーカー、ジャレコは、すでに存在しない。西暦2000年代以降、ゲーム開発部門の分社化、母体企業の社名変更、外資系企業への自社ブランドゲームのライセンス譲渡……と激動の時を経て、現在は、ゲーム開発部署を持たない国内企業が、ジャレコゲームのライセンスを保有している。

その企業名は、"シティコネクション"。

いまから約10年前、ジャレコと業務上まったく接点のない新会社の立ち上げの際、社長となる人物が「一番好きなゲームのタイトルだから」という理由だけで命名した会社が、現在、ジャレコ・ブランドを後世に残す"最後の砦”になっているのだから、巡り合わせというものは、おもしろい。

 

ジャレコゲーム“再復活”のキーマン

株式会社シティコネクション代表・吉川延宏氏の前職は、大手CD・DVDレンタルチェーン店のサウンドバイヤー。確かな商品知識と気さくな人柄を見込まれ、同チェーン店のCD発注業務などを行う新規受託外部企業(現・シティコネクション)の社長に抜擢されたという、異色の経歴を持つ。就任から数年後、独自の事業による経営規模の拡大を模索していた最中、ネットワークサーバーにアップした動画のQRコードを提供する代理店事業の取引先として、ジャレコ・ホールディングス(※後のEMCOMホールディングス)との繋がりができたことから、すでに新体制で子会社化されていたゲーム事業部(株式会社ジャレコ)とも、「ミーハーな気持ちで」コンタクトをとるようになったという。

以降、担当者レベルで友好的な関係を築いてきたことから、シティコネクションが2011年にビデオゲームのサウンドトラックCD制作・販売事業を始める際も、ジャレコゲームのライセンス許可がスムーズに下り、2011年1月、ジャレコのファミコン用ソフト15タイトルのBGMを収録した第1弾アルバム『RomCassetteDisc In JALECO』(廃盤)のリリースとともに、"クラリスディスク"というレーベルを「ノリで作った」。レーベル名の由来はもちろん、『シティコネクション』の主人公、クラリスである。

家庭用ゲーム機用ゲーム主体のサウンドトラックというニッチ路線が、コアなゲームファンから支持を受けていたシティコネクション。2013年には、紆余曲折を経て、ジャレコゲームのライセンス権を取得した。前述のオンラインゲーム運営会社体制変更の際に、譲渡を受けたのだという。

やはりそれも"ジャレコゲーム愛"のなせるわざですか? と尋ねると、「もう引き継ぐしかない状況になっていて、その時はいらないとさえ思っていました」と、意外な答えが返ってきた。

吉川氏は、過去に、ジャレコのゲーム事業部の次期社長を打診されたことがあった。しかし、条件として提示された額の資金を調達できず、結果的に就任話は立ち消え。その直後に前述の買収話がまとまったことで、「(いちファンとしての)ジャレコ熱が冷めてしまった」のだという。

「前の会社や、その前のジャレコ自身でも、IPをうまく使えていないという印象がありました。自分だったら、それを使って収益を出せるという自信がありました。ビジネス視点での判断ですね」と、吉川氏は笑った。

ジャレコ作品の"遺産"を引き継いだ最初の1年で吉川氏が行ったのは、ジャレコのOB、開発会社、ゲームに出演していた声優の所属事務所……など、これまでにジャレコのゲームに関わってきたあらゆる企業・人物とコミュニケーションを図ることだった。

「これまでのジャレコのIP(知的財産)の扱いにたいする、関係者間のネガティブなイメージを変えていく必要がありました。当時の契約書をひとつひとつ確認して、たとえ買い切り契約であったとしても、そのゲームの資料を使うなどの際には連絡して商品サンプルを送るなど、可能な限り誠実な対応を心がけました。大手メーカーでは逆に手が回らない、こうした細やかなやりとりも、これ(ライセンス)をどうにかするしかなかったウチなら、可能でした。その甲斐あってか、現在では、当時の関係各所から、ライセンス事業を応援していただいています」

吉川氏

 

ライセンス権取得とともに、ゲームソフト用のレーベル"クラリスゲームス"を新設した、シティコネクション。現在は、ライセンスアウト(自社取得のライセンス等の、他社への使用許諾)を中心に、ジャレコのゲームを、現行のコンシューマプラットフォーム上に、着実に蘇らせている。2016年4月にリリースされたプレイステーション4用野球ゲーム『燃えろ! プロ野球2016』(※ダウンロード専売ソフト、開発・販売はメビウス)では、ジャレコが1987年に発売し大ヒットしたファミコン用ソフト『燃えろ! プロ野球』のテイストを忠実に再現しつつ、ジャレコゲームの代表的なキャラクターが描き下ろしのグラフィックで登場するオリジナルチームを収録するなど、"ジャレコゲーム新時代の開幕"を予感させる内容となっている。

 

ジャレコゲーム“再復活”のキーマン
ジャレコゲーム“再復活”のキーマン

また、クラリスディスクでは、'90年代コアゲーマーの記憶に残るセガサターン用シューティングゲーム『ゲーム天国 GAME PARADISE!』(1997年)ほか、プレイステーション用ソフト『GUNばれ!ゲーム天国』(1998年)、アーケードオリジナル版(1995年)の音源を収録した『ゲーム天国 THE GAME PARADISE! オリジナルサウンドトラック』を、2016年6月にリリースしたばかり。人気声優・かないみかが歌うオープニング曲を含む全ボーカル曲が収録されている、ファン待望の内容であるとともに、当時関わった人物・事務所が、本作が現代に"復活"することを認めた証としても、大きな意味がある。

 

ジャレコゲーム“再復活”のキーマン

今後は、業務提携できるゲーム開発のパートナーを募りつつ、コンシューマゲームのパブリッシャーとしての側面を強めていきたいと語る、吉川氏。その一方で、ジャレコゲームの膨大な資産を活用するには、従来の開発体制では追いつかないとの自覚もある。「まだ大々的に発表できる段階ではありませんが……」と前置きした上で、ファンからも要望が寄せられている、IPのオープン化を検討していることを明かした。

「すでにバンダイナムコエンターテインメントさん行っている"カタログIPオープン化プロジェクト"よりも、もう少しハードルの低い形で参加できるようにする予定です。ウチはそんなに大きい会社ではないので、ジャレコ・ブランド……というより、ジャレコのゲームひとつひとつを後世に残すには、いろいろな方の力や協力が、必要なんです」

吉川氏

 

インタビューの終わり際、「そういえば、社名になっている"あのゲーム"の話題が一向にないようですが……」となった時、吉川氏は「ライセンスアウトという形ではなく、やっぱり、自社で出したいですね。企画書だけはずっとあるんですが」と、照れくさそうに答えた。その時の表情は、ライセンスビジネスの経営者としてのそれではなかった。

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