テレビゲームとボードゲームを作った男、野村紹夫の生きる道

デジタルとアナログ、両方のゲームクリエイターとして活躍した野村紹夫氏へのインタビュー!
By Munetatsu Matsui

筆者は2012年以降、突発的にボードゲームにハマってしまい、ボードゲーム界隈の様々なイベントやゲーム会に参加するようになった。テレビゲームも面白いけど、ボードゲームならではの良さもいっぱいある。いろんなボードゲームに触れるにつれ、今度はそれらを作っている人にインタビューがしたくなってきた。職業病なのだが、聞きたいんだからしょうがない。

できればテレビゲームもボードゲームも両方作った経験がある人がいいなあ、なんて思っていたところ、ルートイレブン社の野村紹夫氏と出会った。'80年代に一世を風靡したボードゲーム『パーティジョイ』シリーズを数多く手がけ、以降はテレビゲームの開発にも携わったという。氏の生い立ちからゲームデザイン論まで、じっくり話を聞いてみた。

有限会社ルートイレブン 野村紹夫氏

1962年生まれの野村氏は、小学生のころから『花札』や『バンカース』といったゲームを遊ぶのが大好きで、中でも友人宅で遊んだ『人生ゲーム』はその面白さに大変驚いたという。親にねだるも買ってもらうことができず、ならばと自作を開始。もともと漫画や小説を書く小学生だったこともあり、その創作活動にボードゲームが加わったのである。四畳半サイズのものや、お気に入りのテレビアニメを独自にすごろく化したりと、その創作意欲は中学生まで続いた。

高校卒業後、グラフィックデザインの勉強をするため専門学校へ行き、就職は印刷会社を選ぶことになる。

「その印刷所の募集内容を見たら、"ゲーム企画"と書かれていたんですよ」

この当時、ゲームと言ったらボードゲームのこと。出来合いのすごろくの盤面やカードの版下を起こすような仕事だろうと思ったら、本当にボードゲームそのものを考える仕事で、それこそが『パーティジョイ』シリーズだったのだ。

「それより1年くらい前におもちゃ屋で『パーティジョイ』シリーズを見かけて、1000円で遊べるボードゲームってすごいなあと思っていたんですが、まさかそれを自分が担当することになろうとは……」

野村氏が手がけた『パーティジョイ』シリーズの数々

『パーティジョイ』シリーズは'80年代に流行ったバンダイのボードゲームブランドで、1000円というお手頃価格で毎月発売されていた。アニメや流行してるものを題材として取り入れているため、その題材が人気のうちにどんどんリリースされる。

「テレビ番組のスタートに合わせて合わせて発売することが多かったですね。どれもあまり時間がなくて、ゼロから企画を考えて最初のテストプレイまで一週間程度しかありませんでした」

20作近く『パーティジョイ』シリーズを作るが、今度はテレビゲームも作ってみたくなった。

「そっちもやっておかないといけないと思って、印刷会社を辞めてテレビゲームを開発している会社に転職したんです」

バンダイの絵合わせゲーム(子ども向け麻雀)『ドンジャラ』など引き続きボードゲーム企画の仕事も受ける一方で、テレビゲームのプランナーも仕事として始めた。スーパーファミコンはもちろん、1996年に発売されたMacintosh互換のマルチメディア機ピピンアットマーク用ゲーム、1999年からスタートしたNTTドコモのiモード向けゲームなど、さまざまなプラットフォームを経験した。

野村氏が手がけた『ドンジャラ』や大盤ボードゲーム、家庭用ゲーム
野村氏が手がけた『ドンジャラ』や大盤ボードゲーム、家庭用ゲーム

2005年に独立、有限会社ルートイレブンを設立する。携帯やスマホなどインターネットに関わるさまざまなプラットフォームのゲーム開発を行い、昨年で設立10年を迎えた。

「そろそろ新しいことをやってみてもいいだろうと思い、自社でボードゲーム開発に取りかかりました。昨年は『エア・アライアンス』、今年は『ウォービット:ダイズジャーVSサイコロン』をリリースしました。1996年にアニメ化合わせで『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のボードゲームを作ったのが最後だったので、20年ぶりですね」

2015年にリリースした『エア・アライアンス』は空港から空港へと飛行機を飛ばし、乗客を運ぶゲームだ。旅行計画と航空業界を凝縮したような楽しさが詰まっている。乗客ごとに勝利点があるので、最終的にいちばん点数を獲得した人が勝ちとなる。

『エア・アライアンス』

2016年の新作『ウォービット:ダイズジャーVSサイコロン』は2人専用ゲームで、プレイヤーは「ダイスジャー」と「サイコロン」にわかれて、互いに相手勢力の惑星を攻めていく。盤面上にある8つの宇宙船のうち、一手番でふたつしか動かすことができないのが悩ましいポイント。相手側の星系に自軍の施設を5つ設置したほうが勝者だ。

宇宙船にはシールド数値が設定されており、これが移動や戦闘で変化していく。宇宙船のコマに円盤状の数値カウンターが仕込まれているので、これを回すことでシールド数値を変更することができるという、凝った仕組みになっている。シールド数値は移動・戦闘以外に建設時も使用するため、この数値のコントロールがキモとなる。

一度プレイすれば「次は勝てそう!」、「こういう作戦でやってみたい」と、すぐにもう1回プレイしたくなるはずだ。最初は説明に20分、プレイに1時間前後かかるが、慣れれば30分で勝負がつくので、短時間でじっくり遊びたい人にはもってこいだろう。

本作のボードは、見る角度によって絵柄が変化するレンチキュラー印刷で作られているのも大きな特徴だ。まるで宇宙空間に浮いているような立体イラストになっており、これがじつに宇宙っぽい。写真や動画ではまったく伝えられないのが残念なのだが、この立体感はなかなかに感動するはずだ。

『ウォービット:ダイズジャーVSサイコロン』

こうしたゲームのアイディアはどこから生まれてくるのだろうか。野村氏の場合、子どものころに遊んだいろんなゲームが、創作活動すべての源であるという。『人生ゲーム』にときめいて、その勢いで自作のすろごくを作ったあの原体験、たくさんの友だちの家まで遊びに行って遊ばせてもらった数々のボードゲーム。このときの楽しかった思い出、その感覚を元にゲームで「楽しさ」を表現しているのだそう。

同じゲームでも、テレビゲームとボードゲームでは制作上の違いはあるのだろうか。

「プレイ時間の管理ができないのがボードゲームで、プレイ時間を管理しまくるのがテレビゲームですね。運の要素もボードゲームならではだと思います。テレビゲームでもランダムは盛り込まれてますが、どうしても「コンピューターだからインチキしてる」と思われてしまいがちで。こういった特性を意識しながら作っています」

「また、制作スタイルでいうと、テレビゲームは映画的で共同作業、ボードゲームは小説・漫画で個人作業、というイメージがありますね。大人数による共同作業だと、ゲームデザイナーとしての能力とは別にまた別のスキルが必要になるじゃないですか。それにテレビゲームだとキャリアを積めば積むほど現場から離れてしまう。自分はずっと現場にいたいし、だったらボードゲームのほうが私に合ってます。自分がすべてをコントロールできますしね」

今後は『エア・アライアンス』に続く航空もの、『ウォービット』の初期アイディアを発展させたもの、さらには子ども向けの簡単なものも作る予定だという。

現在発売中の2作に興味を持ったら、12月11日(日)開催のゲームマーケット2016秋のルートイレブンブース(L-9・L-10)をチェックしてみよう。実物を見るチャンスなので、『ウォービット』の3Dっぷりをじっくり見てほしい。公式サイトから問い合わせてもらえれば、通販で購入することも可能だ。

30年以上も最前線でデジタル・アナログ双方のゲームを作り続けている、野村紹夫氏の次なる新作も期待したい。

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