『Marvel vs. Capcom: Infinite』:巨大ロボの憂鬱

『Vs.』シリーズ最大の議論を巻き起こしたキャラクタータイプはシリーズ最新作でも登場すべきなのだろうか?
『Marvel vs. Capcom: Infinite』には巨大ロボが登場するのか? © Capcom, Marvel
By Michael Migliacio

Capcom Cup 2016で『Marvel vs. Capcom: Infinite』の存在が明らかにされた直後から『Vs.』シリーズファンの間では様々な噂が飛び交い始め、彼らは自分たちの間で長年に渡り争点となってきたコンセプトをすぐに机の上に再び持ち出した。彼らは、短命に終わった『タツノコ vs. CAPCOM CROSS GENERATION OF HEROES』で初めて導入され、ゲームプレイ自体を破綻させてしまった “巨大ロボ” がこの新作でも持ち込まれるのではないかと噂するようになったのだ。

現時点では、このような噂はあくまで噂に過ぎないことが証明されているが、格闘ゲームコミュニティ内の数人の有名なプレイヤーたちは、この噂が現実化することを心配している。その中のひとりが、NorCalシーンのギミックマスター、Jason “MC|GCYoshi13” Wangだ。『Ultimate Marvel vs. Capcom 3』や『Guilty Gear Xrd』など複数のゲームで上位成績を残してきた(あーくれぼ2015でのベスト16を含む)GCYoshi13は、巨大ロボキャラクターを好むことでも知られており、『タツカプ』時代には巨大ロボスペシャリストとして活躍していた。そのようなキャリアと趣向を持つGCYoshi13は、当然ながら今回の『Marvel vs. Capcom: Infinite』における巨大ロボキャラクターの復活について様々な意見を持っている。

Wii独占タイトルとしてリリースされた『タツカプ』 © Capcom

全ては『タツカプ』から

『タツノコ vs. CAPCOM CROSS GENERATION OF HEROES』は2008年、久々の『Vs.』シリーズとしてリリースされた。この作品はタツノコプロのアニメキャラクターとリュウ、春麗、アレックス、モリガンなどのCapcomのゲームキャラクターがクロスオーバーしている奇妙なタイトルでありながら、海外のトーナメントで一定の人気を得ることになった。この日本のみでリリースされていたクロスオーバータイトルは、海外のトーナメントプレイヤーに『Vs.』シリーズを改めて紹介することになり、その面白さを知った彼らのリクエストに応える形で、Capcomはこの作品を海外向けにアップデートした『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』を2010年にリリースした。

『CROSS GENERATION OF HEROES』と『ULTIMATE ALL-STARS』は共にそれまでの『Vs.』シリーズからある程度フォーマットを変更しており、たとえば、『Marvel vs. Capcom 2』の3on3のシステムがより簡単な2on2に戻され、操作もシンプルな4ボタンへ変更された。しかし、この『タツカプ』で最も興味深く(そして最も議論を呼んだ)特徴は、“巨大ロボ”(Giant)キャラクターの導入だった。Capcomチームとして参戦した『ロストプラネット』シリーズのPTX-40A、そしてタツノコチームに参戦したゴールドライタンの2キャラクターは、『タツカプ』のゲームプレイ(そしてトーナメントでのメタ)を完全に変えることになった。

巨大ロボの強さ

このシリーズで巨体キャラクターを選択すると、キャラクター2人分を占めてしまうそのサイズからプレイヤーはパートナーキャラクターを選ぶことができなかった。しかし、この2キャラクターには、コンビネーション攻撃や体力復活など、パートナーがもたらす恩恵を得られない代わりとして、(GCYoshi13が熟知しているような)複数の特殊なアドバンテージが与えられていた。その中で最も異常と言えたのが、常時ハイパーアーマー状態という仕様で、この結果、2キャラクターは攻撃を受けても “ひるむ” ことがほとんどなかった。

言い換えれば、この2キャラクターは、他の普通のキャラクターからの必殺技を含むほとんど全ての攻撃をものとしなかったため、ダメージを気にせずに攻撃することができた。GCYoshi13は「たとえば、リュウが真空波動拳を放ったとしても、この2キャラクターなら無視して前進してリュウに攻撃を仕掛けることができたんだ。相打ちにならないから、ネコがネズミを追いかけるような一方的な対戦になったのさ」と振り返っている。

PTX-40Aとゴールドライタンはサイズとアーマーという特徴は共通していたが、PTX-40Aの方が明らかに厄介な存在だった。中・長距離を得意とする強烈な攻撃と高火力のコンボを備えていたこの巨大ロボは、『タツカプ』のトーナメントに参加していた多くのプレイヤーたちに厄災をもたらした。「PTX-40Aには上段から下段へのフェイントを経由して対戦相手の体力の半分を奪えるコンボがあったし、セットプレイや追加ダメージに使える防御不可能なホーミングロケットも備わっていた。驚くほど万能なキャラクターで、『タツカプ』の中ではパーフェクトなキャラクターだった」とGCYoshi13は説明している。では、よりテクニカルなスタイルで、近距離やプレッシャーに秀でているゴールドライタンはどうだったのかと訊ねると、GCYoshi13はこう回答している。「それほど使い勝手は良くなかったね」

カウンターピック地獄

しかし、巨大ロボ特有の能力があっても、この2キャラクターは無敵からはほど遠かった。『ULTIMATE ALL-STARS』で追加されたテッカマンブレードなど、数人のキャラクターは、この巨体キャラクター2体の繰り出す恐怖への対抗手段を複数備えていた。GCYoshi13が説明する。「テッカマンブレードのボルテッカはムービー演出が入る関係でハイパーアーマーを無視できた。テッカマンブレードは巨大ロボキャラクターにかなり有利なキャラクターだったんだ。このマッチアップがどういう結果を生み出したかは想像できるよね…?」

GCYoshi13が上で言おうとしているのは『タツカプ』のトーナメントシーンにキャラクター選択が及ぼしていた影響だ。「このゲームではカウンターピックが何よりも重要になったんだ。巨大ロボキャラクターは、対戦相手によっては1-9で不利になる。たとえば、テッカマンブレード/テッカマンのコンビとゴールドライタンの対戦だと、ゴールドライタンにまず勝ち目はない。だから、巨大ロボキャラクターと通常キャラクターを両方使いこなせるプレイヤーが圧倒的に有利だった。両方使えれば、対戦相手が選ぶキャラクターに合わせれば良いだけだったからね」

『タツカプ』のトーナメントシーンで話題となった巨大ロボ © Capcom

この通常の格闘ゲームでは見られない特殊な戦術が披露された対戦の中で最も有名なものが、EVO 2010でのAdam “Keits” HeartとRyan “RyRy” Cadiente(巨大ロボを苦手とするリュウ/春麗コンビがメイン)の対戦だった。Keitsは1本目でRyRyに先にキャラクターを選ばせ、その後でゴールドライタンを選んで先勝した。

EVOの定めていたルールでは、敗者のみがキャラクターを変更できたため、RyRyは2本目で難しい判断を迫られた。巨大ロボに有利なコンビをカウンターピックして巨大ロボを倒しても、今度はその巨大ロボ戦専用コンビで最終戦の3本目に挑まなければならない。しかし、それが嫌ならば、自分のメインコンビを再選択してゴールドライタンに挑むしかない…。結局、RyRyは前者を選び、巨大ロボに有利なコンビでゴールドライタンを倒した。しかし、この結果、今度はKeitsが好きなキャラクターを選んで最終戦に臨む権利を得た。そして、巨大ロボ戦専用コンビを使い続けなければならなかったRyRyは、Keitsが適切に選んだコンビに破れ、2先だったこの対戦で敗退した。

ここで記しておくべきことがいくつかある。まず、EVOを含むメジャートーナメントの多くには、 “ブラインドピック” ルールが存在するということだ。これはプレイヤーが自分の使用するキャラクターを対戦前にジャッジに申告し、実際の対戦でその申告通りのキャラクターが使用されているかをジャッジが確認するというルールだが、RyRyがこのルールに助けられることはなかった。しかし、GCYoshi13は次にように補足している。「EVO 2010までのトーナメントや対戦では、カウンターピックが当たり前だったんだ。このルールは、Keitsがダーティだってことを言いたいから紹介したわけじゃない。巨大ロボキャラクターがもたらしたメタの変化を説明するために紹介したんだ」

この対戦で見られた手法は、その後、多くのトーナメントがこの2キャラクターの使用を禁止する原因となった。しかし、使用禁止は適切な処置だったのだろうか?「実は、巨大ロボ対策は数多く存在するんだ。でも、多くのプレイヤーが巨大ロボ対策を学ぼうとはしなかった。なぜなら、巨大ロボを使うプレイヤーはほんのひと握りだったからさ」とGCYoshi13は説明する。また、GCYoshi13はKeits vs. RyRyのような巨大ロボを含んだ対戦は、観客にもプレイヤーにも楽しいものではなかったと続ける。「対戦は見ていて退屈だった。大半は追いかけっこをしているだけだったからね。また、相手に巨大ロボを使われたプレイヤーも、対戦を全く楽しめなかった」

GCYoshi13は巨大ロボを厄介な存在と見なしている © GcYoshi

巨大ロボの可能性

『Marvel vs. Capcom: Infinite』についてはまだ多くの情報が明らかにされていないため、巨大ロボが参加するのかどうかは分からない。しかし、GCYoshi13は積極的に新しい挑戦をしているCapcomの姿勢を称賛している。格闘ゲームのキャラクターのバランス調整は非常にデリケートで、ゲームプレイそのものを変えてしまう可能性がある特殊なキャラクターを登場させれば、望んでいなかった結果を生み出してしまう可能性もある。しかし、Capcomを称賛しているGCYoshi13も、巨大ロボは復活させるべきではないと考えている。

「ちゃんと調整されない限り、巨大ロボは『Vs.』シリーズに登場すべきではないと思うね。正直に言えば、無限のハイパーアーマーを備えた巨大ロボが2on2の格闘ゲームに登場すべき理由が見つからないよ。巨大ロボは他のキャラクターとの差がありすぎる」

CapcomがGCYoshi13のこの意見に同意しているのかどうかは、2017年後半になれば明らかになるだろう。

 

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