Punk:『ストリートファイターV』のライジング・ワイルド

トーナメントを通じてプレイヤーとしてはもちろん、人間としても急成長を遂げている若き米国人プレイヤーを紹介する。
© Cameron Baird / Red Bull Content Pool
By Ian Walker

言うまでもなく、格闘ゲームで上に位置するためには純粋なスキルが重要になってくるが、ハイレベルなプレイヤーたちはゲームの練習だけをしているわけではない。厳しい真剣勝負に対応できるようになるためにはメンタルに特殊な “余裕” がなければならない。そしてプレイヤーがそれを学ぶ最適な方法が、往年のアーケードのような、大声が飛び交う大観衆の中での対戦だ。

それゆえに、格闘ゲームのキャリアをスタートさせるのは難しい。快適な自宅からのオンライン対戦での勝利から、ローカルトーナメントへの参加へ目標を変更することは、大きなショックを伴う。Justin WongやAlex Valleのようなトッププレイヤーたちは10年以上に渡るトーナメントプレイでスキルを磨いてきたが、これからの若手プレイヤーたちは、ゲームプレイはもちろん、ゲームを取り巻く環境にも慣れる必要があるからだ。

そしてそれこそが、Victor “Punk” Woodleyが『ストリートファイターV』リリース後に体験してきたことだ。複数のメジャートーナメントで素晴らしいパフォーマンスを披露してブレイクしたPunkは、すぐに追われる立場の厳しさを知ることになった。Punkは格闘ゲームトーナメントの深部へ歩を進めていくにつれ、世界を代表する経験豊かなベテランプレイヤーたちと対戦を重ねるようになっており、その厳しさを体で味わっている。

ニューチャレンジャー

Punkは『ストリートファイターIV』がリリースされた2009年に格闘ゲームの世界を知った。近年活躍しているプレイヤーと同じく、彼にとっても『ストリートファイターIV』は、1990年代初頭から存在する巨大なコミュニティに自分を引き込んだという意味で、格闘ゲームキャリアのターニングポイントになった。しかし、当時のPunkは、勢いを得つつあったそのシーンの中で極めて小さな存在だった。オンラインを中心にプレイして、たまにオフライントーナメントに参加するというスタンスを取ってはいたが、何よりもまず学業が優先されていた。

Punkは「『ストリートファイターIV』で本格的なトーナメントプレイをしたいと思っていたけれど時間がなかった。でも、『ストリートファイターV』がリリースされた時は高校を卒業していた。だからトーナメントに参加し始めたのさ」と振り返っている。

そして、『IV』と同様、『ストリートファイターV』も大量の新規プレイヤーを格闘ゲームコミュニティに引き込むことになり、EVO 2016の『V』の参加プレイヤー数は、リリース直後だったということもあり、5,000人を上回った。PunkはEVO 2016には参加しなかったが、同年のCapcom Pro Tourの北米ファイナル、Red Bull Battle Groundsでの活躍でその名を知られるようになった。

オンラインで予選を突破したPunkがオフラインのファイナルで活躍することを期待している人は多くなかった。オンラインの対戦環境は年々整ってきているとは言え、『V』の接続環境は安定しているとは言えず、また、ファイナルに進出していた他のプレイヤーのレベルの高さが、Punkの実績を霞ませていた。

しかし、優勝すればCapcom Cup出場権が得られたこのトーナメントで、Punkはチャンスを最大限活かした。ウィナーズファイナルでときどに破れてルーザーズファイナルに回り、そこでCapcom Cupで優勝するDu “NuckleDu” Dangに破れてトーナメントから敗退するまで、この若きプレイヤーは、Ryan “Filipino Champ” Ramirez、Chris Tatarian、Justin Wongなどを含む数多くのトッププレイヤーを相手に勝利を収めた。最終的に3位で終えたPunkの驚きのパフォーマンスは、瞬く間にコミュニティの話題になった。

しかし、残念ながらそのような話題が全てポジティブなものとは限らない。Punkも、Red Bull Battle Groundsを終えた直後に他のプレイヤーたちから、オンライン対戦で格闘ゲームコミュニティに付きもののトラッシュトークの範囲を超える侮蔑的な発言があったとして、態度を厳しく批判された。

「あの頃の俺はかなりのトロールプレイヤーだった。でも、最近のオンライン対戦ではああいう発言はしていないよ」と説明するPunkは、オフラインのトーナメントへの参加を重ね、格闘ゲームコミュニティとより深く繋がるようになったことが、オンラインのマナーを修正する助けになったと感じている。Punk は、先日ESLが主催したトーナメントKing of the Hillで、Peter “Flash” Susiniに激しい言葉を浴びせるなど、まだいくつかの衝突をしているが、オンラインコミュニティでの彼のマナーの悪さは、このような純粋なトラッシュトークとは比較できないほど酷かった。

狙われる立場

他のプレイヤーからの批判は、Punkの対戦相手たちが彼をどう捉えているのかも明らかにした。トッププレイヤー相手に勝利を重ねていたPunkはすぐに全員から狙われる存在となり、トーナメント出場にストレスが伴うようになった。しかし、その苛立ちをPunkが表現することはなく、むしろ、Northeast Championships、Winter Brawl、The King of New Yorkの3トーナメントでは優勝を果たした。

Punkはこの急速な台頭について次のように説明している。「世間は俺のことを良く知らなかったから、俺のことを一発屋だとか、ラッキーボーイだと言っていたんだ。でも、今は俺がただのラッキーボーイじゃないことを知っている。俺は『V』のトッププレイヤーになるために多くの時間をつぎ込んできたから、世間がようやく俺のスキルに気付いてくれたのは嬉しいね」

しかし、Punkの勢いは、SXSW Gamingが先日開催した招待制のトーナメント、Fighters Undergroundで止まることになった。NuckleDu、ももち、Arman “Phenom” Hanjaniなどに勝利し、無敗で予選グループを突破したPunkだったが、彼のテキサス遠征は決勝トーナメント(トップ8)進出直後にあえなく終わってしまった。

トップ8のPunkは、初戦でRed Bull Battle Groundsの雪辱を狙っていたJustin Wongとのミラーマッチ(かりん)に破れていきなりルーザーズに回ると、続くFilipino Champ戦も同じミラーマッチを仕掛けられて完敗し、早々にトーナメントから敗退した。前日に7-0という見事な記録で予選を突破したPunkだったが、トップ8では0-2で終わり、7位タイで終了した。

Punkは当日について「予選を無敗で突破したことがストレスになってしまった。このまま良い成績を維持して優勝しないとっていうプレッシャーを自分にかけてしまった。ナーバスになったね」と振り返っているが、その緊張を敗戦の直接の原因としては考えておらず、「単純に負けたんだ。言い訳はしないよ。Filipino ChampとJustin Wongが強かっただけさ」と素直に負けを認めている。

かりん使いのPunk © Capcom

恐るべき存在

我々がPunkについて何よりもまず覚えておくべきことは、その若さだ。まだ18歳のPunkは、他のプレイヤーがトーナメントに割いてきた時間のほんの一部分しか体験していない。しかし、彼は比較的短いキャリアながら、既にトップレベルに食い込んでいる。

「追われる立場にいるのは好きだね。みんなに狙われるのは面白いよ。俺と同じプールに入った他のプレイヤーが俺を恐れたり、ナーバスになったりしているのを見るのが好きなんだ。たまらないね」

Fighters Undergroundこそプレッシャーに呑まれたPunkだが、TBSが主催する招待制トーナメント、Eleague Invitationalの前半戦は上々の成績を残しており、キャリア初期にこのようなビッグトーナメントに参加できることに本人は興奮を覚えている。Punkのストーリーは現在の『V』を取り巻くストーリーの中で最も魅力的なもののひとつだ。彼が今後どう成長するのかを見守っていくのはエキサイティングな体験になるはずだ。

言葉少ないPunkは格闘ゲームコミュニティに向けて最後に次のメッセージを残している。「中継で会おう!」

 

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