学業とeSportsの両立:Immortalsの取り組み

18歳未満の『オーバーウォッチ』プロプレイヤー3人が高校生活との両立と所属チームのサポート体制について語った。
 
Immortals『オーバーウォッチ』チーム © @IMTVerbo
By Kristine Hutter

どのゲームでも若手プレイヤーがスターへと育っていく。『League of Legends』のWorldsに4度出場しているSøren "Bjergsen" Bjergは16歳からプレイを始めており、また、Fnaticの『Heroes of the Storm』のタンクプレイヤー、Pontus “Breez” Sjogrenも同じ年からキャリアをスタートさせている。そして北米では、eSportsチームのImmortalsが年齢よりも才能を重視したロースターを起用することで『オーバーウォッチ』シーンで大成功を収めている。

17歳のプレイヤーが3人所属しているImmortalsの『オーバーウォッチ』チームは、懐疑的な保護者を抱え、学業とのバランスが求められる中でも、若手プレイヤーがプロプレイヤーとして成功を収められることを証明している。DPSプレイヤーのChristopher “GrimReality” SchaeferとBrady “Agilities” Girardi、そしてセカンドサポートのStefano “Verbo” Disalvoは全員17歳の現役高校生だ。16歳から『オーバーウォッチ』をスタートさせた彼らは、現在高校の最終学期を迎えている。

高校生からプロプレイヤーへ

eSportsのプロプレイヤーとしての活動のために学業を犠牲にすることは特に目新しいものではない。たとえば、2017年2月には『League of Legends』のプロプレイヤー、Jung “Youngbin” Young-binがカリフォルニア州立大学アーバイン校(州立大学の名門校)を中退し、Team Liquidに加入している。しかし、Immortalsの場合は、3人全員が高校に通いながらフルタイムのプロプレイヤーとして活動を続けている点が他とは違う。また、Immortalsも3人を全面的にサポートしている。今回はVerboとAgilitiesを捕まえて、Immortalsとの契約が持つ意味や、学業とゲームのバランスを取る中で直面した問題などについて話を聞いた。

Verboは「『League of Legends』をプレイしている時から、プロチームと契約したいと思っていたんだ。だからImmortalsのようなトップチーム… 僕が昔からファンだったチームと契約できたのはクールだったよ」と切り出す。

VerboとAgilitiesはかつてLeague of Legends Championship Series(LCS)の大ファンで、共にImmortalsの北米チームの対戦を観戦しては、声援を送っていた。このように昔から尊敬していたチームとの契約は2人にとってまさに夢が叶った瞬間だった。

Agilitiesが続ける。「信じられなかったよ。Immortalsの『League of Legends』チームのプレイはずっと見ていたし、『League of Legends』を一緒にプレイしていた僕の友人たちも大ファンだったからね。自分が『オーバーウォッチ』のプロチームに入れるとは思っていなかったから、Immortalsのようなトップチームから声がかかるなんて露ほども思っていなかった。だから素晴らしい気分だったよ。現実とは思えなかった」

  
若手プレイヤーは保護者からの許可が必要 © Blizzard Entertainment

家族の問題

GrimReality、Verbo、Agilitiesの3人は現在高校3年生で、全員が2016年6月~7月にかけて卒業する予定だが、3人にとってこれまでの道のりは簡単ではなかった。Verboは最初に乗り越えなければならなかったハードルは、学校よりも家族だったと振り返っている。

「最初は両親から反対されたんだ。ルーターを片付けられてインターネットから切り離された時もあった。実は、Immortalsと契約する2週間前の段階で、両親からはゲームをやめるように言われていたんだ。両親はゲームなんて時間の無駄だ、何も得るものがないと考えていたからね。でも、僕の契約内容を精査した両親は、僕のやっていることがシリアスだってことに気がついたんだ。ネットワークも作れるし、キャリアも築けるから、僕にとってプラスになるって考えるようになったのさ。だから今はクールに受け止めているよ」

一方、Agilitiesは以前から母親と弟から積極的なサポートを受けたとしており、弟は自分が以前使っていたPCで『オーバーウォッチ』をプレイしていると誇らしげに付け加えている。VerboとAgilitiesに共通しているのは、トーナメントカレンダーに沿って活動しながら通常の高校生活を送るのは不可能だという意見だ。Verboの場合は、学業とトーナメントプレイの両立はトゥーマッチだと両親に伝えなければならなかった。

「毎日6時間高校に通って、帰宅後に約8時間練習をする生活を繰り返していたから、徐々にストレスが溜まっていった。よく眠れなかった。最後には両親も両立できないことを理解してくれた。それで、普通の高校に通う代わりに、オンラインの通信制高校に通わせてくれたんだ」

職業:『オーバーウォッチ』プレイヤー

Agilitiesは高校2年次からオンラインの授業を受けていたため、プロプレイヤーとしての活動を続けるために通信制を継続したい意思を母親に伝えるのは比較的楽だった。しかし、驚くことに、学業における最大の変化はImmortalsがもたらしてくれた。

Agilitiesが説明する。「僕は実習クラスを取っていたんだけど、『オーバーウォッチ』のプロプレイヤーとして15単位も取れたんだ。というのも、僕たちのコーチ、Chanceが必要書類に記入して申請してくれたのさ。『オーバーウォッチ』をプレイすることで単位をゲットできたのは助かった」

Immortalsは他の形でも彼らをサポートしてきた。VerboはOverwatch Winter Premierに出場する関係で、期末テストが受けられない状況に陥ったが、有り難いことに、ImmortalsがVerboの状況を説明して、期末試験の日程変更を嘆願する書類を学校側に提出してくれたため、Verboは、Ghost Gamingとのファイナルを3-1で制して優勝したあと、ひと休みしてから期末テストを受けることができた。

3人より年上のチームメイトGeorge “Hyped” Maganziniは、Sodipopと契約したあと、2016年からImmortalsでプレイしている(ImmortalsがSodipopを吸収)フレックスプレイヤーだ。元『ハースストーン』のプロプレイヤーだったHypedは、6人編成のチームへの加入を心配していた。ソロプレイヤーとして長く活動してきたHypedは、チームメイトに運命を任せる状況に耐えられるかどうかが不安だったと振り返っている。

「加入後は苦労するだろうなと思っていたよ。チームメイトに苛ついたり、チームメイトをコントロールできない自分に苛ついたりするんじゃないかってね。全員仲が良いチームに出会えたのは単純にラッキーだったのかもしれない。でも、実は自分が気にしていたのは “チーム” じゃなかったんだ」

チームワークをある程度心配していたHypedだったが、実は20代の自分がティーンエイジャーと組むことが気になっていたのだ。しかし、Hypedは、Immortalsは上手く機能していると続ける。

「素晴らしい若手プレイヤーに恵まれているから、チームは非常にスムースに機能しているよ。ただ16歳、17歳の3人のプレイヤーと一緒に組むと伝えられただけだったら、彼らが精神的に子供なんじゃないかと心配していたと思うけれど、実際に知り合うチャンスも与えられたし、彼らはとても大人だということが分かったから、今は全く問題ないよ」

共同生活

Immortalsの全メンバーがHypedの上の発言に同意しているが、Immortalsが新しいトレーニング施設への移転を予定していることを踏まえると、この事実は非常に重要な意味を持ってくる。3人の高校卒業に合わせてカリフォルニア州内にチームメンバーが寝食を共にする施設を用意しようとしているImmortalsは、自分たちが抱える複数タイトルのトップチームをそこに集めて共同生活をさせる予定なのだ。全員が新拠点に移るまではまだ数ヶ月あるが、ここ数ヶ月で『オーバーウォッチ』チームが感じ取ってきたシナジーは、そこでの新生活で非常に重要な意味を持つはずだ。

 
夏からはティーンエイジャーの共同生活がスタートする © Blizzard Entertainment

Verboが説明する。「Overwatch Winter Premiereに出場するためにサンアントニオに全員が集まった時、チームは最高の雰囲気だった。だから、間違いなくゲーミングハウスでの共同生活はシナジー効果を高めてくれるだろうし、サンアントニオで感じたあのフィーリングを再現してくれるだろうね。Chanceも共同生活を通じて色々なことをしたいと思っているはずさ。電話だけじゃ彼の意図を理解するのが難しい時があるからね」

そのChanceこと、Zac “Chance” Palmerは、新拠点でチームを直接指導することで『オーバーウォッチ』チームを北米の強豪チームから世界一のチームに育て上げたいと考えている。これまでセカンドサポートとしてチームを支えてきたChanceは、Verboがチームに加入したタイミングでコーチに回った。カリフォルニア州の新施設での共同生活は、カナダ出身のChanceに「新しい国での指導」という新たな試練を与えることになる。

ティーンエイジャーの心配

Chance、Verboと共にカナダから米国へ移住することになるAgilitiesは新生活に関する心配を次のように説明している。「僕が心配しているのはホームシックだね。Aythen、GrimReality、Hypedの3人はカリフォルニア出身で、新拠点から車で2時間の距離に地元があるんだ。でも、僕は全く知らない土地で生活を始めることになるから、慣れるまでがちょっと大変だろうね。まだティーンエイジャーだし尚更ね。でも、最初は苦労すると思うけど、最終的には問題ないはずさ」

一方、Verboは「心配しているのは共同生活そのものなんだ。だって、家族や親戚と一緒に生活するようなものでしょ? 毎日同じ顔を見て暮らすわけだし、距離が近い人たちと暮らしていると、どうしても衝突が起きるよね。そうならないことを願っているよ」とコメントしている。

予定されている「オーバーウォッチリーグ」で、Immortalsはトップの座を狙おうとしている。しかし、今のところは3人のティーンエイジャーは学業とプロプレイヤーとしての生活を両立させなければならない。そして卒業と同時に、彼らにとっての最大の挑戦、「カリフォルニアでの共同生活」が始まる。

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