チャンピオン&ヒーローのリワーク

『オーバーウォッチ』や『League of Legends』のチャンピオン&ヒーローは定期的にアップグレードやリワークが施されている。その判断基準やメリットは?
© Riot Games
By Cass Marshall

『Heroes of the Storm』、『League of Legends』、『オーバーウォッチ』などのゲームは “生きている” 。これらのゲームが完成を迎えることはない。最終的には「メンテナンスモード」に突入して終わりを迎えることになるが、プレイヤーたちが財産をつぎ込み続ける限り、変更と調整が定期的に続けられていく。そのような変更や調整のいくつかは、ゲームをフレッシュに保つことを目的として行われ、グラフィックやクオリティ・オブ・ライフ関係のアップグレードが行われることもある。そして、時としてデザイナーたちがシステムの奥深くまで潜り込み、チャンピオンやヒーローを完全に作り直すこともある。

『オーバーウォッチ』は上に挙げたタイトル群の中で最も新しいが、既にヒーローのシンメトラとバスティオンがリワークされている。『Heroes of the Storm』のSylvanas Wildrunnerは、プッシュが得意なソロモンスターから、2種類のアルティメットを備えたチームプレイヤーにリワークされた。そして、『League of Legends』は上の2作品とは比較にならないほど、チャンピオンのリワークが頻繁に行われている作品だ。最近のガリオのような完全なリワークや、タンクのようなクラス全体に影響を及ぼす調整まで様々な変更と調整が行われている。『テセウスの船』のように、上記のチャンピオンやヒーローは構成要素が入れ替えられており、中にはもはや原型を留めていないと思えるものもある。しかし、このような大掛かりなオーバーホールは求められていた結果を出せているのだろうか? それともやりすぎなのだろうか?

『Heroes of the Storm』のSylvanas © Blizzard Entertainment

リワーク

チャンピオンやヒーローはいつリワークされるのか? どのゲームも定期的にバランス調整が行われている。もちろん、その中にはドラスティックなものも含まれているが、このようなバランス調整は今回のテーマ「リワーク」とは異なる。『オーバーウォッチ』のマクリーは何度もバランス調整を受けており、対タンクを得意とする近距離アサシンから、誰が相手でも困らなかった長距離スナイパーまで、様々な形に姿を変えてきた。『League of Legends』のエコーも、元々はアサシンとしてデザインされていたが、持続力のある高火力タンクとして使用されるようになってから、弱体化が数回行われた。これらのキャラクターは何回もあちこちをいじられてきたが、ナットやボルトはそのままだ。別の言い方をすれば、 “修正” はされたが、 “リワーク” されたわけではないということだ。

英語圏ではキャラクターについての会話で「壊れている(broken)」という単語が多く出てくる(通常は嫌いなキャラクターについての会話。『League of Legends』で言えばヤスオ)が、これは「強すぎる(OP / overpowered)」と同義だ。しかし実際は、「壊れている = 強い」ではない。「壊れていて弱い」キャラクターも存在する。また、壊れているアビリティはゲーム内で機能しないばかりか、バランス調整も行えない。『League of Legends』のガリオは、数ヶ月間に渡り、対戦の行方を左右するアルティメットとトンデモないポークでOP状態だったが、のちに完全に弱体化され、奇妙で特殊な存在に変えられてしまった。開発チームが上手く調整できなかったのだ。その結果、ガリオは完全にリワークされることになった。

そして、『オーバーウォッチ』のシンメトラも同じだ。彼女はとにかく弱いことが問題だった。かつてのシンメトラは特定のマップの目標エリアAでテレポーターを設置するためだけに使用されており、テレポーターが破壊されるか、目標エリアAが敵に占領されてしまえば、シンメトラを使う意味は失われ、他のキャラクターに切り替えられていた。彼女のシールドが2倍、3倍に強化されていたとしても、目標エリアA専用テレポーターボットとしてしか利用価値がなかっただろう。テレポーターを設置するだけに存在していたシンメトラは「壊れていた」のだ。その結果、彼女もリワークされることになった。

リワークを経て人気ピックになったシンメトラ © Blizzard Entertainment

『Heroes of the Storm』では、SylvanasやTassadarのようなヒーローのリワークが静かに行われてきたが、このゲームのヒーローには非常に興味深いオプションが備わっている。このゲームにはタレントシステムが用意されており、ヒーローがレベルアップすると、複数のアビリティから自由に選んで強化できるようになっているため、ゲームシステムはかなり奥が深くなっている。『League of Legends』と『オーバーウォッチ』はチャンピオンとヒーローの固有アビリティに制限されるが、『Heroes of the Storm』では、ヒーローの基本アビリティを残しながら、そこから先のアビリティをある程度自由にカスタマイズできるようになっている。TassadarとRexxarのパッチノートをチェックしてみると、細かく色々と書かれているが、『League of Legends』と比較すると、良くも悪くも基本アビリティに影響を与える項目が少ないことが分かる。既存のアビリティからはスタッツが追加・削除されているだけで、タレントの選択肢が大きく変更されているのだ。

テクノロジーの進化

リワークは「下衆の後知恵」とも言えるわけだが、そこには明確なメリットがある。デベロッパーはチャンピオンやヒーローをフレッシュな視点から見ることができるのだ。シンメトラを例に挙げてみよう。彼女のリワークは批判を多少生み出すことになったが(ビームの有効距離が2m伸びたことで、ジャンクラットで逃げにくくなったと感じているプレイヤーがいる)、誰もが、彼女の新しいシールドとセントリータレットは素晴らしいと感じている。数ヶ月間に渡り、旧シールドとセントリータレットを見てきたBlizzardは、彼女のリワークに成功したのだ。

一方、『League of Legends』はリワークを斬新でラディカルな方向に進めていった。Riotがまだ小さなインディースタジオだった頃のチャンピオンのアビリティはシンプルなものばかりだった。たとえば、その中のひとり、シンジドは今でも非常に洗練されたシンプルな能力の持ち主として知られている(いくつかの変更は加えられたが)。彼のQ「毒の軌跡」は通り道に毒を撒き、W「強力粘着剤」は敵にスロウの効果を与える。そして、E「すくい投げ」は毒や粘着剤の中に相手を放り込み、R「狂人のポーション」はステータスが強化される。細かい特徴は省略しているが、シンジドが非常にシンプルなアビリティにまとめられているのは分かるはずだ。

 

最もシンプルなチャンピオンのひとり、シングド © Riot Games

では次に、キンドレッドを見てみよう。Riotのテクノロジーは、シンジドのようなシンプルなチャンピオンから出発し、より洗練され、より精巧な能力を持つチャンピオンまで進化してきた。キンドレッドはツーマンセルのチャンピオンで、フィールド展開、範囲内のヒーローやキャラクターを死から守るアルティメット、範囲内回復、そしてジャングル性能の高さ、そして敵に印を付けるなど、様々な能力を備えている。

『LoL』のリリース以降、Riotは長い時間をかけて多種多様なツールを開発し、チャンピオンのリワークに適用してきた。たとえば、ポッピーはシングド系のシンプルなチャンピオンから、敵をベースまでノックバックさせるアルティメットなど、面白い能力を備えているユニークなチャンピオンに変更されており、タロンは壁を越えられるようになった。そしてADCには弾数システムが備わっている。ひと昔前の『LoL』のチャンピオンは、シールド、ダッシュ、クラウドコントロール、そしてある程度の火力の組み合わせのアレンジだった。当時のデベロッパーはそれしかツールを持っていなかったのだ。しかし、2017年現在、Riotはワイルドで新しいメカニクスを手に入れており、ガリオのような完全なリワークも行えるようになっている。

オリジナルに忠実に

ここから先は話が複雑になっていく。上に紹介した『Heroes of the Storm』と『オーバーウォッチ』のリワークは共に控えめだったため、各ヒーローの基本的な部分はそのまま残されている。Sylvanasは今もユーティリティなプッシュ型ヒーローであり、彼女の新しいアルティメット(敵ヒーローの操作をコントロールできるようになる)は、『World of Warcraft 3』のルーツに立ち返っているだけだ。また、シンメトラもシンメトラであり、単純に優秀になっただけだ。

しかし、『LoL』のガリオはこれまでのガリオとは違う。共通しているのは不明瞭なコンセプトだけだ。リワークされたガリオにはアルティメットが基本アビリティとしてまだ残っており、Qにも相変わらず “風” の要素が備わっているが、これまでのガリオとは完全に異なる、新しく組み上げられたチャンピオンだ。旧ガリオファンはこの変更に不満を募らせていたが、その状況はRiotの狙い通りだった。彼らは新しいガリオファンを得たいと考えていたのだ。新ガリオは、名前といくつかの部分だけが残された新チャンピオンだからだ。

では、このリワークは成功なのだろうか? その答えはリワークをどう定義するかで変わってくる。新しくて優秀なチャンピオンが楽しめるなら、その他の部分は特に気にしないというプレイヤーがいる中で、愛していたチャンピオンが消えてしまったことを悲しむプレイヤーもいる。彼らはオリジナルに忠実でないリワークは失敗だと考えているのだ。

以前の面影が感じられないガリオ © Riot Games

しかし、我々がどう考えていようとも、今後もリワークは行われていく。シンメトラとバスティオンのリワークに取り組んだ『オーバーウォッチ』は、今後もヒーローを積極的にアップグレードしていくだろう。そして『LoL』も、アカリ、チョ=ガス、ケイル、モルガナ、シャコ、スウェインを次に大幅なアップデートを行う対象としてリストアップしている。

『テセウスの船』とは、「船の部品交換を続けていけば、どこかの段階で全部品がオリジナルと入れ替わることになるが、それは元の船と同じなのだろうか? それとも新しい船なのだろうか?」という問答だが、風をベースにしたアビリティと名前だけが引き継がれているガリオは、ガリオなのだろうか? 『テセウスの船』はギリシャ神話から伝えられる古い問答だが、新しいチャンピオン&ヒーローを世に送り出している現代のリワークデザイナーにとって非常に大きな意味を持つようになっている。しかし、新ガリオがどう受け止められようとも、このようなドラマティックなリワークが『LoL』や『オーバーウォッチ』のシーンに素晴らしいハイライトをもたらすだろうという意見には、全員が賛成するはずだ。

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