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【一流の他薦】Red Bull Kumite 2017で台風の目となるか?新風を呼ぶ学生王者たち
自分以外のプレイヤーについて語ってもらうインタビュー企画【一流の他薦】。第1回は『ストリートファイターV』大学対抗戦で2連覇を果たした、駒澤大学の格闘ゲームサークル“駒格”の3人にスポットを当てる。
2017年4月22日、第4回 TOPANGA『ストリートファイターV』大学対抗戦 決勝が開催された。激戦を制して全国19大学の頂点に立ったのは、前回大会に引き続き2連覇となる駒澤大学。優勝メンバーの3人は、5月にフランスで開催されるRed Bull Kumite 2017予選への招待も決定している。プレイヤーとして、そして1人の人間としての姿をより深く知るために、対談形式でお互いの人物像を語り合ってもらった。
後輩はプロゲーマー
――3人の中でもっとも若い立川さんは、DetonatioN Gamingに所属するプロゲーマーでもありますね。サークルの先輩である、ふみやさんとヤスさんから見ると、どのようなプレイヤーでしょうか。
ふみや 立川はプロゲーマーなんで、めっちゃ努力しています。苦しみながらもゲームやっていて、俺には追いつけない。
立川 ありがとうございます。
ふみや 練習量は日本一じゃないですか、立川は。俺の知る中では日本一ですよ。狭いですけど(笑)。
ヤス 本当に立川は努力家ですね。普通のプレイヤーって、コンボ練習なんかをやりたがるじゃないですか。でも立川はガードを練習するんです。ガードって地味ですけど、腕に差がつくポイントなんですよ。そんな普通の人がやらないような練習を、しっかり地道にくり返している。そんなところを尊敬していますね。
ふみや ストイックですよね。ただ、日本一アケコンの音がうるさい(笑)。
立川 いろんな人から言われるんですよね。「アケコンの音がうるさいから立川の配信は見たくない」みたいに(笑)。
ヤス でもそういう部分も含めて、プレイしているところを見ると、やっぱりかっこいいなと思います。
ふみや まあ実際、立川はヘンですよ(笑)。初対面からガンガン距離詰めて来るタイプで、最初はどう関わればいいのかわからなかった。でも尖ってると思いきや、実はいいヤツなんです。配信しか見てない人にはそれが伝わりにくくて、立川は損しているな、と。もっとコイツの良さをみんなに知ってほしいですね。もったいない。プロゲーマーたちにも好かれているし、可愛がり甲斐のある後輩なんです。
――立川さんの、ここがすごい、見習いたいな、と思うところを教えてください。
ふみや 立川はとにかくやる気がすごいんですよ。練習に誘われたときでも「今日はいいかな、家で寝たいな」って思っちゃうような、やる気が乗らないときってあるじゃないですか。これじゃ強くならないぞとわかっていても、俺は別にプロじゃないし、やりたいときにやればいいかな、って思っちゃうんです。でも立川は毎日格ゲーのことばかり考えている。
立川 それ以外に考えることがないんですよ(笑)。
ヤス キャラクターの対策をしっかり進めてくるな、ってイメージです。トレーニングモ-ドや対戦モードで地道にキャラ対策を練習するというのは、僕は性に合わないんですよ。めんどくさくて、できればやりたくない(笑)。でも立川はそこをしっかりやってくる。そういうストイックなところを見習いたいですね。
――今日の大会では試合直前にスマートフォンを見ていましたが、あれはキャラ対策ですか?
立川 そうですね。今日の試合に臨むにあたって、対戦相手のリプレイを20本くらい見てメモをまとめていたんです。ただ、実際はうまく噛み合いませんでした。
――差し支えなければ、メモの内容を教えてください。
立川 このプレイヤーはこの状況ではこの行動を取ることが多いから、こうすると勝率高いよ、って感じです。「こうすると手癖でここをガードしてくるからそこを狙おう」、みたいな。
――3人の中で、メモを取るのは立川さんだけでしょうか。
ヤス 自分も今日は見ようと思ったんですけど、いざ対戦相手のラシード対策のメモを見ようとしたら、何も書いてなくて(笑)。考えてきてメモしたはずなんですけどね。
――それはもう、メモとは言わないのでは(笑)。
地道な研鑽で追いかける、感覚重視の努力型
――立川さんとヤスさんから見た、ふみやさんのプレイヤーとしての印象を教えてください。
立川 ふみやさんはシーズン2からバイソンにキャラを変えたんですが、対空が本当によく出るんです。それこそ日本一対空の出るバイソン(笑)。今日の大会でも、アッパーから勝ちを拾ったという内容がすごく多かった。僕自身もけっこう対空が上手いほうだと思っているんですが、ふみやさんには敵わないです。
ヤス ふみや君はコツコツやっているイメージ。『ストV』はちょっとやってみて、上にいくのがキツくて辞めちゃう人がよくいるんです。でもふみやくんは、なんだかんだ言って続けている。気づいたらランクマッチをやっていたりして、それが今後の上達につながるのは間違いないと思います。日本一継続力がある男ですね(笑)。
立川 あと、プレイスタイルが丁寧ですね。
――どんなところが丁寧だと感じますか?
ヤス 目先の勝利にとらわれないところ。この先安定して勝つための勝ちかたを意識している部分ですね。
ふみや バイソンはキャラ自体が強いので、メチャメチャにプレイしてもいいんですけど、それだけじゃ成長がないんですよね。どんな試合でも変わらないプレイを心がけています。
――ゲームを離れたときのふみやさんは、どんな人柄ですか。
ヤス ふみやくんは常に笑顔で、いい人だなと。年齢も学年も同じですし、最近は結構練習する機会も多くて、一緒にいる時間が長い。ほかの学部の友達がいなかったので、こうやって友達として普通に話せることが楽しいです。
立川 僕は駒格(3人が所属している格闘ゲームサークル)に入ろうと思って駒澤大を選んだので、ふみやさんのことも前から配信で見て知っていたんです。それで、入ってみると同じ学部だったんですよね。これはもう、仲良くしたいなと(笑)。で、積極的に絡もうと思って単位の話をいろいろ聞きました。「この単位は比較的簡単に取れるよ」、「この授業は出席重視だよ」と、いろいろ教えてもらいました。
――大学生らしいエピソードですね。
立川 でも、ふみやさんの言う通りにしていたら、全然単位が取れていなかった(笑)。
ふみや 申し訳ない(笑)。
――なんと(笑)。失礼ですが、卒業は大丈夫ですか。
ふみや 1年生のときは危なかったです。親も顔が真っ青になるくらいに。そのぶん去年頑張りました。残り1ドットからなんとか盛り返した感じ(笑)。
――そんなふみやさんの変わっているところ、ここだけは直してほしいところはあったりしますか。
ヤス 特にないんですけど(笑)。強いて言えば、今日みたいにネガティブ思考に陥るところですかね。今日も3連勝したんだからもっと「よっしゃー!」と盛り上がっていいと思うんですけど、「いや俺は弱いから……」なんて。
立川 俺のほうが叫んでましたよね。1勝しかしてないのに(笑)。
ヤス 全然気にしなくていいんですけど、もうちょっとポジティブに行ってほしいとも思います。
立川 あと直してほしいのは、大学の単位のことぐらいですかね(笑)。いい人エピソードならまだありますよ。
――気になります! ぜひ教えてください。
立川 僕は進学を機に東京に出てきて一人暮らししているんですが、引っ越して1週間で家の鍵を無くしたんですよ。まだ大学の友だちもいない時期で、知り合いがサークルの先輩しかいない状況。それでふみやさんに「部屋の鍵をなくしました」とLINEしたら「大丈夫? 泊めてあげるよ」と、快く泊めてくれて。
ふみや まあ、一人暮らしは大変ですから。俺以外に頼る人いなかったでしょ(笑)。
立川 ヤスさんともまだ知り合ってない時期で、本当にいなかったです。
ふみや それで立川がウチに来てランクマッチやってたんですけど、叫びながらボタン叩いてて(笑)、こいつ怖いなー、って思ってましたね当時は。
――それがあったから、これだけ可愛がられているのかもしれませんね。立川さんから見て、ふみやさんのここがすごい、見習いたいというポイントはありますか。
立川 ふみやさんは対空の上手さと、あとは判断力ですね。中段を打つときってリスクもあるんですが、ふみやさんは感覚的に行って高確率で成功する。本能というか、ワンチャン仕掛けるのがうまい。そういう「イケる」と思ったときに、即座に行ける感覚と判断力が欲しいですね。僕は今日、リスクを背負った行動を外しまくってたんで。メンタル的な問題だと思うんです。
――「ここで行ける!」という確度の高いポイントを、直感的に判断して仕掛けられる、といったイメージでしょうか。
立川 そうですね。自分が苦しいときほど、必要になる行動じゃないですか。僕はそれが、大会だと下手くそになっちゃいます。
――大会だと、というのは何か原因が?
立川 試合中は頭を使うようにしてるんですが、あまり慣れていないので、焦るとどっちつかずの行動を取ってしまう。やっぱり、行くときは行くと割り切りたいですね。以前は僕も感性100%のプレイスタイルだったのですが、格ゲーがわかってくるにつれ、それではダメだと思って動きを変えたんです。ただ感性に任せて動くことが正解の場面も多くて……。難しいんですよ、格ゲー。
ふみや まあ、お前はまだこれからだな(笑)。
立川 ありがとうございます(笑)。
――ヤスさんから見て、ふみやさんのここがうらやましいというポイントを教えて下さい。
ヤス 立川も言っていたんですが、対空ですね。対戦していると、すごく落とされるんですよ。やだなぁ、と思いながらプレイしています。自分は対空がヘタなので、本当に見習いたいですね。
――対空がうまいというのは、反射と読み、どちらによるものでしょうか。
ヤス 読みですかね。ふみやくんは対空を出すとき、ちゃんと様子見をしているんですよ。しっかり様子を見たうえで、相手が飛んできそうなところで置いてくる。それがうまいなと。
立川 しゃがみ大P対空もしっかり出るので、そこもすごいですね。
チームメイトを優しく見守る実力派エンジョイ勢
――ふみやさんと立川さんから見て、ヤスさんはどのようなプレイヤーですか。
ふみや ヤスさんは普通の人ですね(笑)。めっちゃ優しい。一緒にいても、いつも変わらないペースです。ヤスさんといて「やだな」と思ったことは一度もなくて。
立川 僕はプロゲーマーという立場上、負けられないなと思いながら練習しているんですが、ヤスさんにはよく負けちゃうんです。一点集中してやり込んでいても、いろんなことをやっているヤスさんに負け越しちゃうのが悔しい(笑)。そのぶん、ヤスさんのことは尊敬していますね。
ふみや 『ストV』に限らず、ゲームが好きなんですよ。「なんで好きなだけでそんなに強くなってんの」って感じです(笑)。日本一ゲームを楽しむ男ですよ。
――ヤスさんのここがすごい、見習いたいと思うポイントを教えてください。
ふみや ヤスさんは基本、どの行動を見てもうまい。状況を見て自然に解答が出るんですよ。強くなろうとして強くなっているわけじゃなく、自然と強くなっている。強い人って考えかたが違うと思うんですよね。ここをこうすれば相手のこの技に勝つ、みたいなことを瞬時に、自然に考えているんですよ。俺にはない強さです。俺は逆で、あまり考えたくないんです(笑)。
立川 勝負強いですよね。今日もガードされたら負けが確定するような行動を表情変えずにくり出して、それで勝ってました。メンタルが強いんだと思います。
ふみや ちょっと恥ずかしがりやですけど、メンタルがとても安定してますね。それが試合にも出ています。
立川 ヤスさんと対戦していて、2ラウンドずつ取ったあとの最終ラウンドは、まったく勝てる気がしない(笑)。僕は焦りやすいので、見習いたいですね。
――ヤスさんの変わっているところや、ここだけは直してほしいというところはありますか。
立川 ヘンではないんですが、試合が終わったあとなど、ことあるごとに合掌するんですよ(笑)。勝っても負けても。
――合掌!?
ふみや 立川もそうですが、ヤスさんも実家がお寺なんです。そのせいですかね(笑)。寺じゃないのが俺だけ。
――それなら納得するしか……。合掌のとき、心の中では何を思っているんです?
ヤス 感謝の気持ちです。今日の大会みたいに、対戦相手とちょっと距離が離れていたりするじゃないですか。「ありがとうございました」と言葉で言うよりも、見た目的にわかりやすいかと。煽る意図はないです(笑)。
立川 直して欲しいところなんて、本当にないですよ。いい人すぎる。後輩の俺が「先輩、今からウチ来て対戦しませんか」と、無茶振りしても応えてくれる。真夜中の2時なのに(笑)。
――まさに仏のような……。ヤスさんは呼びつけられるのが嫌だと思ったことはありますか。
ヤス いや、ないです。むしろ行っていいの? みたいな。自分は寮暮らしなので、向こうのほうが対戦環境が整っているというのもありますね。
――ヤスさんは普段、物事に対して怒ることはあるのでしょうか。
ヤス 怒ることはまあ、ありますね。格闘ゲームで嫌いなキャラに散々倒されまくってるときなんかは。
ふみや それが表情や態度には出ないんですよね。その点、立川はわかりやすい(笑)。
立川 僕は思ったらすぐ、バーンと台を叩いて。ゲーセンでもやっちゃうときが。
――それでトラブルに巻き込まれたことは?
立川 今のところないですね。ヤバいぞ、と思った相手にはやってないですから(笑)。
そんな3人が憧れるプロゲーマーとは?
――それでは話題を3人以外に広げていきたいな、と。注目しているプロゲーマーを1人ずつ教えてください。
ふみや 皆さんすごいと思うんですけど、個人的に好きなのはボンちゃんです。インタビューを見ると、すごい文句言ってたりするじゃないですか。でも、プレイは本当にしっかりしている。あまり強くないキャラを使用しているぶん、より真面目にやり込むことでキャラ差を埋めているんですよね。そのうえで、試合中は焦ることなく戦っている。実際に話したこともあるんですけども、すごくいい人でした。憧れます。
立川 僕は立場も立場なんで、ほかのプロゲーマーの方々と関わる機会が多くて、尊敬する方もたくさんいます。そのうえで敢えて1人だけ選ぶなら、MOVさんを挙げたいです。彼は対戦会などのコミュニティに積極的に参加してくれるんですよ。プレイでも、細かいところの攻略がすごいんです。「この技はこう食らったほうがおいしくて、その後これが確定だよ」、みたいな感じ。システムに沿ってるんですよね。僕はMOVさんに憧れて同じキャラを使ったときにいろいろなことが学べて、そこから格ゲーに対する考えかたが変わり、成長できたと思ってます。いろいろ教えてくれるし、世話も焼いてくれる。僕は大好きですね。
ヤス 僕はプロの方たちとの関わりがないので、人として尊敬する、みたいのはわからないんですが、プレイを見ていて憧れるのはネモさん。何がすごいかというと、プレイに個性がすごく出ているんです。たとえば対空ひとつ取っても、普通はこういう技を使うだろう、というところで違う技を決めてくる。僕らみたいな凡人では気づかないアメイジングなプレイで、ネモさんが使ってるキャラはもう“ネモさん”っていうキャラになっている。そういう個性がすごく憧れます。
――最後になりましたが、優勝おめでとうございます。皆さん揃ってRed Bull Kumite 2017の最終予選への招待も決定したとのことですが、現在のお気持ちを教えてください。
立川 僕はもともと、Red Bull Kumiteには自腹を切ってでも参加しようと考えていました。あのケージに囲まれたリングが大好きなんです。ただ予選からの参戦で、フランスへの渡航費もかかるとなると、やはり参加は難しい。そうして行くのを諦めていた大会に、招待で参加できるとなれば、言うことないですよね。やる気に火がつきました。
ヤス 前回はアメリカ(CAPCOM CUP 2016 FINALS)に招待してもらっていたんですけども、用事があって行けなかったんですよ。海外旅行って人生でそう何回も行けるものでもないので、こうして海外に行けること自体がうれしいですね。さらに大好きな格ゲーの大会がついてくる。そんな機会をいただけることは、本当にありがたい限りです。
――ふたりは前回大会の優勝メンバーでしたね。ふみやさんはいかがでしょう。
ふみや 「どうしよう」ですね(笑)。前にも大学対抗戦には出場していたんですけど、俺が出た大会はだいたい優勝できなくて、申し訳ないので出たくなかったんです。ふたりが強すぎるんで、俺が出ても……、みたいな。Red Bull Kumiteへの招待も、まだ実感が湧いていません。海外には行ったことないので、パスポートも持っていないくらいです。
――では、Red Bull Kumite 2017がはじめての海外旅行ですね。
ふみや はい。格ゲーやっててよかったです(笑)。
――Red Bull Kumite 2017での活躍、楽しみにしています!
強い個性を持つ彼らを結びつけるきっかけとなったのは、同好の士が集まる学生サークル。ゲームセンターを離れた『ストV』においてもなお、学生たちは強固なオフラインコミュニティを形成していた。
5月27日、3人はパリで開催されるRed Bull Kumite 2017最終予選に出場する。果たして彼らは勝利を重ね、遥かなフランスの地で変革を起こすことができるだろうか。若者が持つ無限のエナジーに要注目だ。
■Red Bull Kumite 2017
日時:2017年5月27日(予選:18時〜)・28日(決勝:21時15分〜)
- 予選Bracket:http://redbullkumite.challonge.com
予選スケジュール
配信予定時刻(JST)
プールA〜H
18時〜20時30分
プールI〜P
20時30分〜23時
TOP32〜TOP16
23時15分〜01時
TOP16〜予選終了
01時〜06時
決勝スケジュール
配信予定時刻(JST)
オープニングセレモニー
21時15分〜21時35分
TOP16〜TOP12
21時35分〜00時30分
コンボコンテスト
00時30分〜00時50分
TOP12〜TOP4
00時50分〜03時
TOP4〜グランドファイナル
03時〜05時
05時〜