MotoGP 2017シーズン:複雑なライバル関係を読み解く

2017シーズンのMotoGPもライダーたちのプライドが激しくぶつかり合いながらドラマティックな混戦が続いていく。
© GEPA Pictures/Red Bull Content Pool
By Chris Martin

現代のMotoGPは、常にタイトルを狙える実力を持った数人の強豪ライダーたちが各メーカーに散らばる群雄割拠の状態にある。

2016シーズン、MotoGPでは史上最多となる年間9名のウィナーを生み出す大混戦となったが、プレシーズンテストを見る限り2017シーズンもその戦力分布は例年になく予想が立てづらい状況になっているようだ。この前例にないほど熱く燃える戦いに油を注いでいるのが、ライダーに存在する激しいライバル心だ。

トップレベルのライダーたちに揉まれてマルケスは成長した © Gold & Goose/Red Bull Content Pool

近年のMotoGPは、過去長きに渡って続いてきた「ディフェンディングチャンピオンとその他のタイトルコンテンダー」という単純な構造ではなくなっている。むしろ、2017年現在のMotoGPはライダー間のライバル関係が複雑に絡み合う様相を呈しており、その結果として、ファンは彼らが織りなすドラマティックで予測不可能なストーリー展開を享受できている。

今年もカタールでその苛烈な戦いの火蓋が切って落とされたが、今回は現代MotoGPを彩るスターたちが織りなす複雑かつ爆発寸前のライバル関係を改めて見ていこう。

往年のライバル関係

バレンティーノ・ロッシ vs. マルク・マルケス

2015シーズンのアッセンで接戦を展開するマルケスとロッシ © Gold & Goose / Red Bull Content Pool

この2人のライバル関係についてはもはや多くを説明する必要はないだろう。2015シーズン第17戦マレーシアGPでの「ロッシ蹴り事件」以降、彼らのライバル関係はひとまず沈静化しているようだが、そう見えているだけだ。ほんの小さな火花が大爆発に繋がるだろう。

このライバル関係は2人が基本的に “似た者同士” であることに起因している。彼らは、パドックでは茶目っ気たっぷりの人気者だが、ひとたびヘルメットを被ればアンフェアぎりぎりの無慈悲なコンペティターとしての本質が表面化するという点が共通している。

2015シーズンのアルゼンチンでロッシの追走を受けるマルケス © Gold & Goose / Red Bull Content Pool

ロッシは「史上最強」という賛辞を欲しいがままにする不世出の名ライダーだ。しかし、マルケスは2013シーズンにMotoGPデビューイヤーでチャンピオンを獲得して以来、猛烈な勢いでタイトルを積み重ねてきており、神話的に語られるロッシの偉大な戦績を塗り替えてしまう可能性がある。

この2人の衝突は必然だったのだ。

バレンティーノ・ロッシ vs. ホルヘ・ロレンソ

2016シーズンのオーストリアでロッシをリードするロレンソ © GEPA Pictures / Red Bull Content Pool

昔から「ライダーの第一目標は打倒チームメイト」と言われている。しかし、レーシングにおける自明の理と言えるこの言葉は、この2人のレジェンドライダーの間に険悪な確執状態を生んでいる。Yamaha在籍時代、ロッシとロレンソはピットガレージ内に壁を設けてデータ共有を拒否し、マシン開発の方向性においてもことごとく対立して互いの存在を無視した。

ロッシはかつてYamahaに「俺を取るのか、それとも奴を取るのか」という究極の選択を迫り、Yamahaはロレンソを選択。その結果、ロッシはDucatiへ移籍したが、2011~2012シーズンのDucati在籍時代は目立った成績に恵まれず、ロッシとDucatiの関係は双方の名声を傷つけて終わった。

 そして、2013シーズンから古巣Yamahaに復帰したロッシはチーム内を完全掌握し、2017シーズンはロレンソがDucatiへと移籍することになった。ロレンソは「ロッシが成し遂げられなかったDucatiでの勝利を自身が実現する」という目標に大きなモチベーションを見出している。ロレンソにとっては、サーキットでロッシを打ち負かすだけでは十分ではないのだ。現在の彼は、ロッシが築き上げたレガシーを粉砕しなければならないと感じている。

マルク・マルケス vs. ホルヘ・ロレンソ

2015シーズン:ロレンソをオーバーテイクするマルケス © Gold & Goose | Red Bull Content Pool

ロッシという存在がなければ、現在のMotoGPはマルケスとロレンソの2強時代を迎えていたはずだ。過去5年間のMotoGPワールドチャンピオンのタイトルは全てマルケスとロレンソのどちらかが獲得している(尚、2011シーズンのケーシー・ストーナーを除けば、2010シーズン以降の7シーズンのうち6シーズンをこの2人のどちらかが制している)。

この2人は実力伯仲で、彼らが争えばそこには必ずドラマが生まれる。しかもこの2人は同国人としてスペイン史上最強ライダーの名をかけて争っている。彼らは同国人だが、性格やライディングスタイルはこの上なく対照的で、共同記者会見などの場で決して目を合わせようとはしない事実も頷ける。ロッシという共通の敵が存在する以上、マルケスとロレンソのライバル関係は見過ごされがちだが、そこには常に火種がくすぶっている。

2017シーズンで確認できるライバル関係

マーベリック・ビニャーレス vs. ロッシ / マルケス / ロレンソ

ヴィニャーレスとロッシ&マルケスの衝突は避けられない © Gold & Goose / Red Bull Content Pool

まだまだ成長過程にあるが、若きビニャーレスはすでにMotoGPパドック内で一定のリスペクトと称賛を得ている。しかし、2017シーズンからYamahaへ移籍し、タイトル挑戦が現実味を帯びている現在、彼のライバルたちがビニャーレスを手放しで褒める回数は減っていくだろう。

現在ビニャーレスを称賛しているライバルたちは、以下の理由から瞬く間に掌を返すことになるはずだ。

・新チームメイトのロッシは、同じバイクでビニャーレスに負け続けることを許さない。
・マルケスは、自分の玉座を脅かすライダーが存在することを自覚する。

・ロレンソは、ビニャーレスがYamahaへ移籍したことで、Yamaha時代の実績がバイクの優位性ではなく自分のスキルによって勝ち取ったものだということを証明する必要に迫られる。

 

マーベリック・ビニャーレス © Gold & Goose/Red Bull Content Pool

2017シーズンのファイナルラップでビニャーレスがロッシ / マルケス / ロレンソの誰かに押し出されたり、逆にビニャーレスが誰かを押しのけたりする場面が早晩訪れるだろう。その瞬間、彼らの間に新たなライバル関係が生まれるのだ。

ホルヘ・ロレンソ vs. アンドレア・ドヴィツィオーゾ

Ducatiが巨額の契約金を投じて3度のワールドチャンピオンを誇るロレンソ獲得に動いたという事実は、彼らが本気でタイトル奪還を狙っているという姿勢の表れに他ならない。しかし、この事実は2013シーズンから同チームに在籍するドヴィツィオーゾにとっては不愉快だ。Ducatiがタイトル請負人としてロレンソを獲得した事実は、すなわちDucatiが「ドヴィではタイトルは狙えない」と考えていることを意味している。

トップ集団をリードするアンドレア・イアンノーネ © GEPA Pictures/Red Bull Content Pool

これまでの両者の実績だけを鑑みればドヴィがロレンソと渡り合えるチャンスは非常に少ないが、これまでのDucatiのマシン開発で中心的役割を果たしてきたのはドヴィであり、GP17は彼のアグレッシブなライディングスタイルにマッチした仕上がりになっており、ロレンソが身上としてきた高いコーナーリングスピードを維持するスタイルには合っていない。これを踏まえれば、シーズン前半戦でドヴィがロレンソを上回る場面は多くなるだろう。

アンドレア・イアンノーネ vs. ここまでに名前が挙がった全ライダー

2016年にはトップグループ常連になったイアンノーネ © GEPA Pictures/Red Bull Content Pool

控えめに言っても、アンドレア・イアンノーネのライディングはスキルの丹精さよりも度胸ばかりが勝っているように見えがちだ。結果として、トップを独走しながらもクラッシュしてレースを失ったことも1度や2度ではなく、オーバーテイク時の見切りの悪さのせいから、チームメイトやチャンピオンシップ・ライバルたちに表彰台を譲ってしまう機会も多かった。

ビニャーレスの後釜としてSuzukiに加入した今シーズンも、Ducati時代のようにトップに食い込むチャンスは訪れるはずだが、Ducati時代より回数は減るだろう。このような状況に置かれたイアンノーネは、表彰台フィニッシュのチャンスが少しでも見えれば、これまで以上に貪欲にそのチャンスを掴もうとしてくるはずだ。

ダニロ・ペトルッチ vs. 中団グループ

ダニロ・ペトルッチはセカンドグループのイアンノーネ的存在と言えるのではないだろうか。彼は日曜の決勝レース後の各ライダーのTwitterで最も非難を浴びやすいひとりだ。ダニロにはこのまま変わらず、中団の順位争いを刺激的にする存在でいてほしいものだ。

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