若くしてデビューしたモータースポーツ界の神童 6人

ティーンエイジャーでデビューし、大きな成功を収めたトップドライバーたちを紹介する。
By Anthony Peacock

その早熟ぶりから「ラリー界のモーツァルト」との異名を取るカッレ・ロバンペラは弱冠16歳ながらすでにラトビア国内選手権のタイトルを獲得しており、イタリア選手権ではPeugeotのワークスドライバーとして参戦しているが、彼はモータースポーツの長い歴史の中でたびたび出現してきた「神童」のひとりと言えるだろう。

レースで成功を収めるためには、幼少期からドライブに親しむことが重要と言われる。ロバンペラの場合、わずか8歳で母国フィンランドの凍結湖で車を初ドライブした。もちろん、これは彼の父親が元WRCワークスドライバーのハリ・ロバンペラに助けられた部分も大きい。また、ロバンペラファミリーは4度のWRC王者で現在ToyotaのWRC活動を率いるトミ・マキネンと家族ぐるみの付き合いがあり、マキネンはカッレにYaris WRCをテストドライブさせるチャンスも与えている。

「ラリー界のモーツァルト」と呼ばれるロバンペラ © Uusi Suomi

しかし、昨年10月に16歳の誕生日を迎えたばかりのカッレはまだ正式な運転免許を取得できる年齢に満たないため、WRCデビューを飾るまではじれったい2年間を過ごすことになる。

それでも、彼はただ時間が過ぎるのを待っているわけではない。かつて父ハリのコ・ドライバーを務めたリスト・ピエティライネンが一般公道セクションのドライブを担当し、その他のステージではカッレがドライブするという特例許可を得て複数の選手権に参戦しているのだ。

すでに十分な力量が備わっているのなら、プロデビューに若すぎるということはない。今回は、この事実を証明してきた6名の天才ドライバーを振り返っていこう。

トム・ケイブ

8歳の時に初めてドライブを体験したトム・ケイブ © PROTON Motorsports

ウェールズ出身のトム・ケイブはWRCと英国ラリー選手権へ参戦した経験を持っており、まだ25歳という若さにしてSubaru Impreza WRCからショウルームクラス(つまりグループN仕様)のFord Fiestaまでのあらゆるタイプのラリーカーをドライブしてきた。

ケイブは、のちにロバンペラも使用することになるヤングドライバーの海外選手権参戦の “抜け穴” を最初に見つけた存在だった。ケイブは14歳の時にラトビアでステージラリーに初参戦したのだが、ラトビアは早くから若いラリードライバーの競技参加を許可してきた。たとえ法定年齢に満たない者であっても、コ・ドライバーが一般公道セクションでのドライブを担当することで特例を許可してきたのだ。現在ではラトビア以外の国々もこの形式を踏襲しており、ロバンペラはフィンランドでもステージラリー参戦を許可されている(ただし、一般公道ではモペッドに乗ることを定められる)。

かつてのWRCスター、エフゲニー・ノビコフは運転免許取得以前から母国ロシアでステージと一般公道セクションの両方でドライブしていたが、これは特例措置というよりは非公式に黙認されていたと言うべきだろう。

アレッサンドロ・ナニーニ

ヘリコプター事故によりナニーニのF1キャリアは短命に終わった © W. Schlegelmilch/Getty Images

どうしてもラリーに出たいのに年齢制限に引っかかてしまう若き天才に用意されているもうひとつの解決策は経歴詐称だ。これは実際にアレッサンドロ・ナニーニが使用したアプローチだ。ナニーニは1989年のF1日本GPウィナーだが、翌1990年のヘリコプター事故でF1ドライバーとしてのキャリアを断たれたことでも知られる。

「実は、最初はラリードライバーになりたいと思っていたんだ」とナニーニは語る。「でも、当時の僕はまだ16歳。というわけで、偽名を使って年齢も偽ったニセの運転免許証をでっち上げたのさ」

その “ミスター・マッジョネッリ” はいくつかのラリーイベントで勝利したというから恐れ入るが、どれもローカルラリーの域を超えた本格的なイベントであったため、ナニーニは確実に誰も彼のことを知らないイベントに参戦するように注意する必要があった。しかし、このような形で参戦を続けるには彼の才能はあまりにも優れていた。「あるラリーのスタート地点に着いた時、こう言われたんだ。『さあ “ナニーニ君”、車から降りてもらおうか』ってね。それで、これはもう潮時だと思ってサーキットでのレーシングに集中することにしたのさ」

ケビン・ハンセン

ケビン・ハンセンはSubaru WRXで史上最年少デビューを飾った © @World / Red Bull Content

ケビン・ハンセンはこれまでラリークロス界でその名を馳せてきたハンセン・ファミリーの末っ子で、セバスチャン・ローブのチームメイトを務めている。若干18歳の彼は今年初めて600馬力のPeugeot 208 RXをドライブしているが、2016年には史上最年少でヨーロッパラリークロス選手権のチャンピオンに輝いている。

マックス・フェルスタッペン

マックスは弱冠17歳で初のF1ドライブを体験した © Getty Images/Red Bull Content Pool

マックス・フェルスタッペンが弱冠17歳でF1デビューを果たした事実はもはや誰もが知るところだが、これはかつて1961年に19歳でF1デビューを飾ったリカルド・ロドリゲスを上回る記録となった。また、マックスは2016シーズンのスペインGPでF1史上最年少優勝記録も更新している。

マックスとロドリゲス以外で10代にF1デビューを飾ったドライバーは他に3名存在する。1980年のマイク・サックウェル、2005年のハイメ・アルグエルスアリ、そして2007年のルイス・ハミルトンだ。マックスが17歳でToro RossoからF1デビューを飾った2年前、彼は飲酒はおろか、公道での運転免許証や選挙権も持っていなかったが、ハミルトンたちが年寄りに見えてしまうほどの鮮烈なデビューだった。

ランド・ノリス

僅か14歳でカート世界チャンピオンに輝いたノリス © landonorris.com

ランド・ノリスは14歳の時点でカートの史上最年少ワールドチャンピオンに輝いており、ルイス・ハミルトンが持っていた記録を破っている。そのハミルトンの背中を追ってMcLarenと契約を交わしたばかりのこの若き英国人ドライバーは、F1への道を歩み始めたばかりだ。

尚、ランドは僅か7歳でデビューした英国カート選手権で史上最年少ポールシッターとなったことでも知られている。ハミルトンやロバンペラでさえ8歳になるまでカートデビューを待たねばならなかったことを考えると、恐るべき早さのデビューだと言えるだろう。

ランス・ストロール

ボッタスの後釜としてWilliamsに加入したストロール © Octane/Action Plus via Getty

世界屈指の大富豪の息子であるこのカナダ人ドライバーは弱冠11歳でFerrari Driver Academyと契約した。皮肉屋の中には、彼が大富豪の息子だからFerrariと契約できたのだと勘ぐる者も少なくなかった。

しかし、彼はWilliamsとの繋がりを深めると共にFerrariとの関係を断ち、Williamsは彼がチャンピオンを獲得した2016シーズンのF3ユーロシリーズでエンジニアリング面のサポートを行ったばかりか、2017シーズンからは18歳のストロールをフルタイムF1デビューさせることを決めた。プレシーズンテスト開始以降、クラッシュ癖ばかりが目立っているストロールだが「卵を割らなければオムレツは作れない」の諺通り、多少の失敗がなければ成功は得られない。

 

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