海外から見たBABYMETALを考える

「日本ってすごい」「本当にメタルだ」「こんなのメタルじゃない」- 世界各地から注目を集め議論を呼ぶ彼女達がみせる日本の音楽とは
BABYMETAL
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By 青木竜太郎

現在人気急上昇の日本のヘビーメタルアイドルユニット、BABYMETAL。先日レディー・ガガの全米ツアーのオープニングアクトを務めると発表された彼女達は、今では世界各地からも注目を集めている。

そんな彼女達が海外メディアやインターネット上でどう取り上げられているかをまず紹介したい。3月にデビューアルバム「BABYMETAL」を発表したSU-METAL、MOA-METAL、YUI-METALの三人はBuzzfeedConsequence of SoundHuffington PostUSA TodayGuardian など、世界各地のメディアで紹介され、インターネットで混乱と議論を呼び寄せた。GuardianやHuffington Postで紹介された「ギミチョコ!」のYouTube動画の英語のコメントを翻訳してみる。

「日本って本当に凄い!」
「酷いな。これってマジなの?」
「GorgorothとかDethklok、Amon AmarthtやSlayerを普段聴いてるんだけど、これは本当にメタルだよね。すごく好き。」
「観てて混乱したけど好きかもしれない」
「こんなのメタルじゃない!」

このような海外からのコメントが続く。困惑、驚き、そして「メタルの定義」の議論。日本人にとっては一つの「アイドルグループ」の彼女達だが、そんなアイドルがなぜここまで反響を呼び寄せてしまったのだろうか。

まずは、「アイドル」という日本独自の文化。ティーンポップアイドルはもちろんアメリカでも存在するが、ジャスティン・ビーバー、マイリー・サイラス、ブリトニー・スピアーズなど、日本の「可愛い少女」像とは全く違うイメージのスターが一般的だ。ミニスカートを履いた、恋愛禁止されている少女達が歌って踊るイメージには海外の方は当然違和感を感じるだろう。

もう一つは、日本と欧米の音楽シーンの違い。メインストリームとアンダーグラウンドシーンがかけ離れている日本のシーンの中、メインのグループを持ちつつ、ポップスアーティストへ楽曲提供をしているミュージシャンが多い。BABYMETALのアルバムのクレジットを見て行くと、そこにはCOALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKIや、MAD CAPSULE MARKETSの上田剛士の名前が並んでいた。

それぞれ自身のプロジェクトで活躍している彼らがBABYMETALのバックにいることで、いわゆる「スタジオプロデューサー」が作る楽曲よりも遥かに面白みがある、より変則的な曲がアイドルソングとして発表される。他には近年だとNATSUMENのAxSxEが木村カエラに楽曲提供をしたり、筋肉少女帯の大槻ケンジがももいろクローバーZに歌詞を提供したことが記憶に新しい。Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのプロデューサーとして知られているcapsuleの中田ヤスタカも一つの良い例だ。結果ポップスでも幅広いサウンドが存在する、日本ならではのポップシーンが出来上がっている。

しかしこのようなポップスとアンダーグランド/ロック/インディーズの連携は欧米では究めて珍しい。感覚としては、NINE INCH NAILSのトレント・レズナーがジャスティン・ビーバーに楽曲提供をするのに近いのかもしれない。アーティストのイメージやauthenticity(信憑性)が問われる海外シーンでは、メジャーとマイナーの音楽が交差することはあまりないことだ。信憑性に重点を置くメタルシーンは特にそうで、メタルファンの中には「自分たちの大好きな音楽がポップスで使われてしまっている・・・」と思う方がいても仕方がないことであろう。

先日、当サイトで公開された元メガデスのギタリスト、マーティ・フリードマンのインタビューで、「特にアメリカとヨーロッパのメタルファンは、いくらオープンマインドって言ってもちょっとだけ恥ずかしい音楽だったらそんなに人には言わないと思いますね。日本ではその意識が向こうほど強くない」と彼は語っている。境界線のない、恥ずかしさがない感覚は日本特有なのかもしれない。

そしてもう一つ海外メディアやネット上のコメントで話題になっているのが、「BABYMETALの音楽は果たしてメタルなのか?」という議論。彼女達が「本物のメタル」かどうかはさておき、彼女達の楽曲には他国にはない、メタルから影響を受けている「ヴィジュアル系」という日本独自の音楽が存在している

もちろんデス・メタル、スラッシュ・メタルの要素をしっかりと取り入れているBABYMETALの楽曲だが、そこには実は「ヴィジュアル系」の要素も強い。シングル「ヘドバンギャー」の作曲をしたCOALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKI自身も「ヴィジュアル系の音楽と一緒にメタルを見せるみたいな、ちょっと勘違いしてる日本人みたいなテイストでいいのかなと思って作ったというか」とCDJournalとのインタビューで語っている。

BABYMETAL
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海外と同じ質量のある日本のロック史には当然日本特有のサウンドやスタイルもあり、海外の方にとっては新鮮に聴こえるものがたくさんあるはずだ。そんな中で「これはメタルじゃない」と言い張る海外リスナーがいても不思議ではない。BABYMETALのメタル、EDM、歌謡曲、ヴィジュアル系の融合は普段からJ-POPに馴染んでいないリスナーにとっては驚きの組み合わせなのだろう。

日本人アーティストが海外で注目を浴びるのはとても喜ばしいことで、海外のリアクションを通して音楽やカルチャー、慣習の違いを改めて認識できるのは面白い。ヨーロッパやカナダのメタルフェスでも出演が決定しているBABYMETALはますます話題になるだろう。「境界線のない」日本のポップスシーンをどんどん世界へと広めていただきたい。今後の彼女達の活動には要注目だ。

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