Ryuichi Sakamoto :the_voice

Redbull.comが贈るスペシャルインタビュー。坂本龍一、そのパワーの源を訊く。
© Maruo Kono
By Red Bull Japan

2015年夏。一ヶ月もの間、レッドブル・スタジオ東京に篭った坂本龍一。病気療養後の復帰第一弾の現場とは思えないほどの緊張感が周囲に漂っていた。一台のピアノに向き合い、一枚の譜面を凝視し、ひとつの音に全身全霊を注ぎ込む姿がそこにはあった。

そして12月某日。映画『母と暮せば』の公開を直前に控えたこのとき。リラックスした表情で温かいコーヒーを手に取り、撮影スタッフの世間話に気軽に応じている。創作活動中とは異なる自然体の坂本龍一が目の前にいた。

果たして坂本龍一が創作活動に用いる膨大なエナジーはどこから湧き出てくるのか? そのパワーの源を探るべく話を訊いた。

 


今回は、復帰作である『母と暮せば』のサウンドトラックの創作活動をレッドブル・スタジオ東京で行いました。実際にはじめてスタジオを使ってみての印象はいかがでしたか?

まるで自宅のスタジオで作業をしているかのように落ち着く場所でしたね。なぜだかわからないけど自分が自然と空間に溶け込めるようでした。世界中あらゆるスタジオを使ってきましたが、レッドブル・スタジオ東京のようにあらゆるジャンルの音楽家をサポートしているスタジオって他にありません。スタジオビジネスは退潮傾向にあって、ニューヨークの音楽スタジオもどんどん数が少なくなってきています。例えばマイケル・ジャクソンがあのアルバムを録音した、などという貴重なスタジオも消えて久しい。そうやって音楽シーンが歴史を失っていく中で、“ただ場所を貸し出すのではなくてスタジオ側から積極的にアーティストをサポートする”という新しいスタイルが印象的でした。それでいてプロフェッショナルユース用の音楽スタジオのクオリティを持っている。こんな場所は世界中をさがしても他にありません。

© Maruo Kono

レッドブルは、あらゆるエクストリームスポーツに挑戦するアスリートをサポートしています。坂本さんも過去にはコメディ番組に出演していたり、音楽家の中の“エクストリーマー”だと言えます。そんな坂本さんが挑戦してみたい、エクストリームスポーツってどんなものでしょうか?

無理を承知ですけど、個人的に好きなのは自転車で山から駆け下りていくスポーツです。若かったらぜひとも挑戦してみたい。まず、大自然の中を疾走するのが気持ちよさそう。ボク自身、中学生くらいの頃に似たようなことに挑戦していたんです。あえて道のないような場所を選んで自転車に乗って走っていました。要するに男の子なのでしょうね。スピードだったり、道なき道を進む大冒険だったり、そういうものに憧れているのだと思います。

つい先週も『RING OF FIRE』という火山をマウンテンバイクで駆け下りる映像を公開したばかりです。もしレッドブルが次に何かマウンテンバイクのイベントを開催する際は“教授枠”を空けておきますので是非。

ボクですか!? 5mくらいなら……。間違いなくすぐ転んで終了だろうけれど、練習してできるようになったら楽しいでしょうね。

© Maruo Kono

エナジーについてお伺いします。坂本さんが創作活動で使う膨大なエネルギーはどこから湧き出てくるものなのでしょうか?

食べ物、ですね。実をいうとボクはベジタリアンです。本来はかなり肉食な人間だったのですが、20年位前に初めてヴィーガン・ダイエットにしたことがあります。そのときは半年くらいして“このままだとパワフルに生きていくためのバイタリティがなくなってしまう”と感じてやめてしまいました。今回は大病もしたので、きっぱりと肉類を断ちましたが調子はいいです。やはり食べ物は、生きるためにも音楽を作るためにも、すべてのパワーの源だと思います。

以前、「創作活動がうまくいかなくてハードなときもある」、「オーケストラの指揮をとるときは怖いしとても緊張する」と仰っているのを耳にしたことがあります。坂本さんでもそうした心境になることがあるかと意外に感じました。そうした困難はどうやって乗り切るのでしょうか?

やはり何十人ものオーケストラを前にして指揮をとるときはかなり緊張します。自分の楽曲を皆さんに演奏してもらうのはボクだってもちろん怖いです。どこかで譜面を間違っているんじゃないか? いい演奏を引き出せないんじゃないか? などと最初はナーバスになってしまいます。でも、指揮をしているうちにそんな気持ちはいつのまにか無くなってしまう。乗り切ろうとか、頑張ろうとか、そういう訳じゃなく。カッコ良く言葉にするのなら、やはり音楽が助けてくれるのだと思います。指揮をとる自分と、楽器を奏でてくれる演奏者とで、一緒に生み出す音楽がエネルギーとなってボクを支えてくれます。

© Maruo Kono

音楽を創る上でも、音楽とは関係の無い場面であっても、大きな決断を迫られる瞬間がたくさんあるかと思います。坂本さんがひとりとの人間として人生の岐路に立ったとき、どのように判断をくだすのでしょうか?

人には頼らないですね。自分の直感を信じます。すこし話は変わりますが、何年か前にとある美大のイベントに招待されて、皆さんの前で話をしたことがあります。ひと通りの話をし終えると、学生の一人が「坂本さん、私たちの背中を押してください」なんて言うんです。その瞬間にカンカンに怒ってしまってね。「自分の父親以上の世代の人間に背中を押してください、って頼む時点でもう駄目だ。自分よりも上の世代なんて敵だと思うくらいでないと新しいものなんて作れない」と怒鳴りました。音楽でも芸術でも、もちろん前の世代が築いてきたものを引き継いでいくという仕事はあります。しかし、なにか新しいものを創っていこうと仕事に挑む場合は、自分より上の世代のことは敵だと思って蹴散らしていく、くらいの気持ちがなくてはなりません。

坂本さんらしいパワフルなお言葉だと思います。では、最後に現実離れした質問です。映画『母と暮せば』では、“もういないはずの息子がある日ふと家に帰ってくる”というファンタジーが起こります。坂本さんの人生に突然訪れてほしいファンタジーはどんなものでしょうか?

ふとタイムマシーンに乗せてもらって、1000年後の地球に降り立ちたいです。1000年後の地球があるかどうかもわからないような状況ですが、とある学説によると、遠い未来では“イカ”が進化を遂げて陸に上がってきているかもしれないとどこかで読みました。イカというのは人類の次に大きな可能性をもっている知的生命体だそうで、人間が滅んだとしたらそのころは進化を遂げたイカが大地を闊歩しているかもしれない。そんな未知の世界をこの目で見てみたい。そしてイカと握手をできたら素敵ですね。

© Maruo Kono

【Infomation】
レッドブル・スタジオ東京で行われた坂本龍一氏の創作活動。その舞台裏の様子をおさめたドキュメンタリー写真の数々をデジタルフォトエキシビジョンとして特設サイトで公開中。また、レッドブル独占で撮影が行われたスペシャルインタビュー動画も後日追加公開されます。

 

ryuichisakamoto.redbull.com

 

 

【More Information】
Ryuichi Sakamoto Official Site 
Ryuichi Sakamoto Official Facebook 
commmons 
Tohoku Youth Orchestra 
 

 

read more about
Next Story