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独断と偏見で選ぶメタリカベスト20

メタルシーンを牽引するモンスターバンドのベスト20をピックアップしてみた。
Written by Elliott Sharp
読み終わるまで:9分公開日:
メタリカ

メタリカ

© Stefan M. Prager/Redferns via Getty Images

ベテランのメタルファンならば、1989年1月にのちにグラミー賞を獲得することになる「One」がMTVで初めて放映された時のあの衝撃を憶えている人は多いだろう。強烈なツーバスとマシンガンのようなギターリフが立ち上がり、ジェームズ・ヘットフィールド、カーク・ハメット、ジェイソン・ニューステッド、ラーズ・ウルリッヒの4人がヘッドバンギングを始めた瞬間、筆者を含めた世界中のメタルファンの心は永遠に彼らのものとなった。
メタリカが世界を代表するメタルバンドになるまでの道のりは長く、初期の3枚のアルバム『Kill ‘em All』、『Ride The Lightning』、『Master Of Puppets』からヘッドライナーを務めた2014年のグラストンベリーまでの間には、方向転換して大成功を収めた1991年の『Metallica』やドキュメンタリー『Some Kind Of Monster』のリリースなど、数々の素晴らしい瞬間があった。また、彼らは2016年にはRecord Store Dayのアンバサダーも務めた。
今回はその彼らの曲の中からベスト20を独断と偏見でピックアップした。静と動をエクストリームに表現してきた彼らの珠玉の名作を改めて振り返っていこう。
20位:「Hero Of The Day」
アルバム『Metallica』以降も彼らがアルバムをリリースしていることに触れないわけにはいかない。また、今回のリストにはその中から最低1曲は選ぶ必要があるだろう。『Hero Of The Day』はアルバム『Load』に収録された、彼らのキャリアの中で最もポップな楽曲だ。
19位:「Eye Of The Beholder」
「Eye Of The Beholder」は大事な何かのための戦いがどうあるべきかを示している1曲で、メタリカがキャリアを通じて訴えている「表現の自由と人間の正義」がテーマになっている。偏見と権力、そのふたつの密接な関係に目を向けながら、そこを立ち向かう何かが必要だと訴えている。ザクザク刻むギターも実にメタリカらしい。
18位:「Disposable Heroes」
もう一度言うが、表現の自由はメタリカがキャリアを通じて訴えてきたテーマだ。そして、アルバム『Master Of Puppets』の隠れた名曲「Disposable Heroes」もそのテーマを扱っている1曲だ。戦争で命令に盲従する兵士たちについて歌われているこの曲は、Creedence Clearwater Revivalの「Fortunate Son」のメタル版と言えるだろう。
17位:「Sad But True」
グルーヴ力に優れたメタルバンドと言えば、メタリカがその筆頭と言えるだろう。その彼らの楽曲の中で特にグルーヴィーな1曲が「Sad But True」だ。ヘヴィーだが揺れるようなグルーヴが刻み込まれており、そのミッドテンポのリフとリズムは思わずラップを乗せたくなるもので、Kid Rockが「American Badass」で拝借している。
16位:「Fight Fire With Fire」
「目には目を・歯には歯を」を歌うベストメタルソングのひとつと言えるだろう。報復律をテーマにしたメタルソングは星の数ほどあるため、これがベストのひとつだと断言してしまう筆者を不遜だと思う人もいるはずだが、ご容赦願いたい。落ち着いて考えてみると、「火には火を」よりも、「火には水を」が正解な気もするが、メタリカが相手にしているのは「火事」ではなく「敵」であり、敵を全力で燃やし尽くせという意味なので適切な表現だ。
15位:「Motorbreath」
メタル人生について語ったメタルソングの中ではベストのひとつだろう。全力で駆け抜けろというメッセージだが、当然ながら、駆け抜けるスピードはThe Eaglesよりも速い。「限界の先へ」という若さと熱さに溢れるメッセージが込められている。
14:「Blackend」
4枚目のアルバム『… And Justice For All』はメタリカにとって非常に大きな意味を持つ作品だ。事故死したクリフ・バートンに代わりジェーソン・ニューステッドが加入してから初めてのスタジオアルバムとなったこの作品は、この強烈な楽曲で幕を開ける。ダークなイントロから一気に加速するこの楽曲はメタリカの再始動を見事に表現している。
13位:「Enter Sandman」
悪夢の恐怖がここまで魅力的に思える楽曲もないだろう。この楽曲とアルバム『Metallica』で、メタリカはメタルバンドからハードロックバンドへと進化を遂げた。「Enter Sandman」は強烈なパワーを秘めた楽曲であり、このヒットと共にメタリカの音楽の新章がスタートした。
12位:「To Live Is To Die」
今回のリストには最低1曲はインストゥルメンタルも選んでおく必要があるだろう。メタリカは『Kill ‘em All』の「(Anesthesia) Pulling Teeth」や、『Master of Puppets』の「Orion」など、優秀なインストゥルメンタルの小曲をいくつか残しているが、「To Live Is To Die」はアコースティックギターのフレーズから強烈なリフまでが楽しめる壮大な楽曲だ。後半にはヘッドフィールドの語りも入るが、今回はインストゥルメンタルとして扱った。
11位:「Whiplash」
若い世代の音楽ファンには、かつて世の中には、ライブで頭(ヘッド)をひたすら振っていた(バンギング)、ヘッドバンガーと呼ばれるメタルコミュニティが存在したことを知っておくべきだろう。そして、ヘッドバンガーたちはむち打ち(Whiplash)になるまで首を振ることもあった。これはそんな熱狂的なヘッドバンガーたちに対するメタリカからのメッセージだ。
10位:「Nothing Else Matters」
メタリカはスローテンポな楽曲を幾度となく披露してきたが、どの楽曲もクオリティが非常に高い。アルバム「Metallica」からのサードシングルとなったパワーバラード「Nothing Else Matters」は、その中のベストのひとつと言えるだろう。社会通念から外れ、我が道を行き、誰にもその道を邪魔させるなというメッセージを悲しさと勇壮さを組み合わせた形で表現している。メインのリフはギター初心者でも弾けるはずだ。
9位:「Creeping Death」
アルバム「Ride The Lightning」の最後から2番目に収録されているこの楽曲は、死神の視点から書かれた楽曲だ。その視点がこの楽曲の魅力のすべてを物語っている。
8位:「Jump In The Fire」
「Jump In The Fire」は16位の「Fight Fire With Fire」と共通点が多いが、この曲は火を武器として使うことではなく、火の中に飛び込むことについて歌っている。メタリカにとって、火の中に飛び込むという行為は結構面白いらしい。
7位:「Welcome Home (Sanitarium)」
メタリカの楽曲の中に「お涙頂戴」があるとすれば、この楽曲だろう。アルバム『Master of Puppets』に収録されているこの楽曲は美しいギターからスタートし、壮大な展開を見せる。「Welcome Home (Sanitarium)」は狂人として隔離されてしまった人物を歌っており、当然ながら、メタリカお得意の「自由と解放」がテーマになっている。
6位:「Battery」
この楽曲のアコースティックギターのイントロは非常にクールだが、すぐにリスナーを欺いてくれる。美しいイントロは長くは続かず、突如として強烈な轟音ギターに切り替わる。5分間の怒りの塊と呼べるメタリカ屈指のスピードチューンだ。
5位:「For Whom the Bell Tolls」
アーネスト・ヘミングウェイの本から曲名を拝借するのはいつの時代もグッドアイディアだ。そのヘミングウェイの名作『誰がために鐘は鳴る』をタイトルに冠したアルバム『Ride The Lightning』を代表するこの曲は、戦争について深く考察している。「黒い叫びと激しい叫びが切り裂かれた空を埋めていく」などの非常に詩的な表現からは作詞家としてのハットフィールドの非凡な才能が窺える。
4位:「Master Of Puppets」
スラッシュメタルの代表曲とも言えるこの9分間の楽曲のサビとギターリフは至高だ。メタリカは既に何度も説明している通り「壮大な楽曲」を得意としているが、この「Master Of Puppets」の中盤のインストゥルメンタルの展開とカーク・ハメットの美しいソロは魂に突き刺さる圧倒的な壮大さを誇っている。
3位:「Fade To Black」
「Fade To Black」は孤独と死をテーマにした数々の楽曲の中で最も美しい作品と言えるだろう。自分の心の苦しみを祖母に伝えたい時にプレイするような楽曲だ。「死はあたたかく俺を迎え入れる。俺はただサヨナラを告げるだけだ」というラストの歌詞で涙を流せないという人は、感情が欠落しているとしか言いようがない。
2位:The Four Horsemen
アルバム『Kill ‘em All』には、メタリカをクビになり、のちにメガデスを結成して成功を収めたデイヴ・ムステインが作曲に参加している楽曲が数曲収録されているが、この楽曲もそのひとつだ。スピードと攻撃的なリフが特徴のこの楽曲の歌詞は「世界の終わり」、「死」、「戦争」、「栄光」と、メタリカの世界観を要約する単語がテーマとなっている。
1位:「One」
当然ながら、今回のリストのナンバー “ワン” は「One」だ。この楽曲でメタリカのキャリアは変わった。メタルシーンのトップに躍り出た彼らは、この曲以降は、ポップシーンに殴り込みをかけることになった。「生きることも死ぬこともできない」と歌われるこの楽曲は当時物議を醸し出したが、戦争の悲劇を見事にえぐり出しており、中盤のインストゥルメンタルパートは、メタル史における最も重要な演奏のひとつとしてこれからも長く語り続けられるだろう。
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