人間は、知覚不可能な事を成し遂げることが出来るのか?

”音楽”としてのギター演奏ではなく、純粋に競技化された”速弾き”で人間の限界に挑む。速弾き世界記録を成し遂げたギターアスリートの演奏を紹介しよう。
By 藤川 経雄

人間は、知覚不可能な事を成し遂げることが出来るのか?

なんて、名言めいた大仰なことを言ってみたけれど、もう少し分かり易く言うとこうなる。

人は、聴き取れる以上のスピードの音を実際に弾くことができるのか?

例えば、エレキギターの世界ではスピードの限界へとチャレンジする試みは歴史上常に行われてきた。’70〜80 年代にはオールドロックではスローハンドと呼ばれたエリック・クラプトン、トラディショナルなジャズフュージョンではアラン・ホールズワース。

そして’80年代には”皇帝”、サー・イングウェイ・マルムスティーンがメタル界にスピード革命を起こしたことで一気に速弾きブームが華開くこととなる。

その後も”速弾きギター芸人”マイケル・アンジェロや新世代スピードプレイヤー、ショーン・レーン(合掌)などの登場を経て現在に至るわけだが、プロフェッショナルとしての立場を崩せない彼等は”音楽的表現”という枠組みから飛び出すことはしなかった。そういった”音楽”という柵を捨て、アスリートのように純粋に速弾きの限界に挑むとしたら人間は一体どこまでハイスピードになれるのか? それは永遠のテーマであり永らく禁断の果実であったように思う。

そんな疑問に対して明快な答えを出してくれたのがギター速弾き世界記録保持者のNirvana Bista君。こちらはRECORD SETTERという動画公募型世界記録認定サイトが設定している”Fastest Guitar Player”という競技(?)でNirvana君が世界記録を樹立した際の動画。

課題曲となるリムスキー・コルサコフ作曲の「熊蜂の飛行」はクロマチック音階を使った非常にテクニカルな旋律が特徴で、しばしば演奏家のテクニックを示すための課題曲としてよく引用されるこの曲をどれだけ速いBPMで奏でることが出来るか、を競うというもの。

ちなみにBPMとは一分間あたりの四分音符の数で、例えばBPM120なら一分間に四分音符が120個奏でられるスピードというわけなのです。この「この熊蜂の飛行」という曲の場合、全体がほぼ16分音符で構成されているので、単純な音数をざっくりと計算するとBPM120なら×4して一分間で480音。なんとなくイメージしてもらえたかな? では心の準備が出来た方から次の動画を見て頂こう。 これが2016年現在、人類史上で最も速いギタープレイだ。どうぞ!

これぞ人外。高橋名人なんぞ門前払いしてしまう迫力のフルピッキング!きっと彼が子供に大人気なのは容易に想像がつく。最終的にはなんとBPM1600というもはや知覚不可能なスピードまで到達。少なくとも僕には聴き取り不可能だった。

動画内では段々とBPMを上げていくので(少しづつスピードを上げるのはルールで設定されている)最初はどんな曲かが分かり易いのだけれど、BPM500辺りから楽曲として成立しているのか、正確に弾けているのかが(聴感上は)怪しくなってくる。

BPM1000を越えるともはや轟く雷鳴。BPM1600 に至っては走馬灯のごとき一瞬の出来事としてしか認識できなくなるほどの常軌を逸したスピードなのだ。ちなみに「これ弾けてい…ないよね!?」というご批判は当方では受け付けておりません。うん、いや、確かに手を挙げて「チャレンジ!」と叫んでスロー解析を要求したい衝動に駆られるところではあるのだが…。

ちなみにNirvana Bista君はインドの方だそうで、実はベースの速弾き部門のワールドレコードを保持しているのもまたインド人とのこと。

こちらはインド在住のJayen Varmaさんが打ち立てたベース速弾き記録、オーソドックスな指弾きで四分音符を1分間奏で続けるというチャレンジで、現在の記録はBPM660。なのだが、こちらのチャレンジは彼以外にチャレンジしている人が見当たらないようで(RECORD SETTERには結構こういう手作り感満載の記録がある)参考記録といったところじゃないだろうか。

とはいえ、いまや世界一の企業、GoogleのCEOもインド人だし、彼等のDNAには世界一を目指し、限界の壁をも踏み越えていく能力が刻まれているのかもしれない。インド人恐るべし!

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