ミュージック

【スペシャル・インタビュー】日米韓のフューチャー・ビートが奇跡の遭遇

今最もホットなクルーのメンバーであり、第59回グラミーにもノミネートされた日本人:starRoと、韓国の新鋭シンガーDEANがタッグを組んだ。彼らにとってR&Bの現在と未来とは?
Written by Sakiko Torii
読み終わるまで:18分Published on
by Kunihisa Kobayashi

by Kunihisa Kobayashi

© [unknown]

アメリカはロサンゼルス(LA)を拠点に活動する日本人アーティストのstarRo。その言葉のひとつ一つからは、音楽に真摯に向き合う誠実さが伝わってきた。
LA発信のSoulectionは、最先端の音楽を提供する約20名のミュージシャンが集まったレーベルであり、ラジオホストでもある。彼らの人気の原動力となっているのが、 毎回SoundCloudで10~20万回の再生回数を誇るラジオ番組『Soulection Radio』だ。クラブ・ミュージックやヒップホップをベースにR&B、ジャズ、ソウル・ミュージックなど往年のテイストがミックスされたサウンドが特徴のSoulectionは、音源配信やラジオ、ショーなどの活動を通して多方面に活躍している、今最もホットなクルーだ。
そんなSoulectionに初の日本人アーティストとして加入したのが、starRo。2013年の加入以降、クルーの中心人物のひとりとして活躍の場を広げながら、この度2016年10月に日本デビュー作となるアルバム『Monday』をリリースした。そして11月22日、そのリリースパーティーを渋谷Sound Museum Visionで開催。パーティーにはstarRoたっての希望で韓国の新鋭R&BシンガーDEANをゲストに招き、ふたりはその前日にRed Bull Studios Tokyoで念願のコラボ・セッションを果たした。
starRO ph02

starRO ph02

© [unknown]

一方のDEAN(正式表記はDΞΔN)。24歳の彼は、まだデビューしてから1年ほどの新人シンガーだ。しかしソングライターとしてはすでに3年ほどの経験をメインストリームで積んでいる。日本でもドーム公演のチケットが即完売する人気K-POPグループ、EXOにも楽曲提供しているというのだから驚きだ。今年3月に自身の名義で発表した1st EP『130 Mood : TRBL』では、DEANの持ち味であるシルキーなヴォーカルと最新のモダンR&Bサウンドでデビュー作とは思えない貫録を見せ、ビルボードのワールドアルバム部門で3位にランクインする快挙を遂げた。
DEANはシンガーとしての最初のデビューをアメリカで飾った。2015年7月に発表されたデビューシングル 『I’m Not Sorry』には、Chris Brownのプロデューサーとしても知られるEric Bellingerを客演に迎え、各国の音楽ファンの間で大きく注目された。しかしDEANの躍進はそれだけにとどまらなかった。同年9月に発表されたセカンドシングル 『Put My Hands On You』では、現在のブラックミュージック・シーンで最もホットなAnderson .Paakと共演したのだ。このような華々しいキャリアゆえ、その翌月に韓国でデビューした時にはすでに大物感が漂っていた。
starRoは以前からDEANとのコラボレーションのきっかけを模索していたそうだが、今回『Monday』のリリースパーティーにDEANを招くことに成功し、このスタジオ・セッションが実現したという運びだ。
starRO ph03

starRO ph03

© [unknown]

starRo ずっと前からDEANと一緒にやりたかったんですよ。今回日本で同じイベントに出れることになって、せっかくスケジュールも合ったから一緒にレコーディングしようって話になりました。
実はDEANがAndeson .Paakとコラボした『Put My Hands On You』は、Soulection所属のMr. Carmackとesta.がプロデュースした作品だ。それがきっかけでDEANの存在を知ったのかとstarRoに尋ねてみた。
starRo いや、もっと前からです。何かの記事でDEANが“新進気鋭のR&Bアーティスト”って紹介されてるのを読んだのが最初だったかな。そのあと、僕がLAで仲良くしてるKero Oneって韓国系のアーティストがいるんだけど、彼のイベントにDEANが出たんですよ。それを見て本格的に知るようになりました。
DEANもまた、以前からSoulectionのファンで、starRoも好きなミュージシャンのひとりだったという。
DEAN starRoさんはずっと前から好きなミュージシャンなので、こうして一緒に仕事をすることができて光栄です。今日一緒に作業した曲もファンキーでレトロな感じですが、まさに僕が最近よく聴いてるジャンルなんです。だから今後の方向性も考えることができました。
starRo ph04

starRo ph04

© [unknown]

日本人でありながらアメリカで活躍するstarRo。韓国人でありながらアメリカでデビューを飾ったDEAN。日本・韓国・アメリカという3か国の土壌で培われた音楽性が、この日、Red Bull Studios Tokyoで出会った。そのコラボの内容に迫る前に、まずはこの国際的に活躍するふたりのバックグラウンドから見ていこう。
まずはstarRoに、自身のバックグラウンドとSoulectionについて聞いてみた。約10年前、それまで勤めていた日本の企業を辞めてLAに移住したstarRo。LAを移住先として選んだ理由は、「単純に旅行して気に入ったから」だという。そして現地で会社勤めをしながら、仕事の合間を縫って音楽制作を続けてきた。
そして2013年、Soulectionに加入したのが大きな転機となったと言えよう。同年12月、starRoのイントロダクションを兼ねて4曲入りの 『White Label EP』がSoulectionのSoundCloudで公開された。同EPは1ヵ月で24万回再生を記録し、日本の各音楽メディアもこぞってstarRoに注目し始めた。
そもそもstarRoは、どのような音楽から影響を受けたのだろうか。父親がジャズ・ピアニストだったということが、やはり彼の音楽的なバックグラウンドに影響を与えているのだろうか。
starRo ジャズもブルースから派生したものだけど、R&B、ソウル、ヒップホップ、そういったブルースから派生してできたいわゆる“ブラックミュージック”っていうものが好きなったきっかけとして、やっぱり最初に聴いてたジャズのグルーヴとかコード感の影響は大きかったです。あと、ロックとかも聴きますが……っていうか、聴かない音楽はカントリー、EDM、演歌ぐらいであとは何でも聴きますね。
実際に彼の音楽を聴くと、様々なジャンルからの影響を感じることができる。テンションコードを巧みに取り入れた美しいコードワークからはジャズの影響を、重厚なドラム演奏や音の鳴り方からはロックの影響を、そしてレイドバックするグルーヴ感やエモーショナルなサウンドからはR&Bやソウルの影響を感じる。
starRoが学生時代にR&Bシンガーの椎名純平とバンドをやっていたというのは、知る人ぞ知るエピソードだ。今回のリリースパーティーもバンドセットで登場すると聞き、やはり生演奏に対するこだわりがあるのかと聞いてみると、「ひとりでステージに出ることに違和感がある」という答えだった。
starRo バンドでやって当然でしょ、ぐらいの気持ちです。ロックの生演奏はもっと骨太だしその場だけで生まれるものだけど、僕のやる音楽は音数が多いから、その場だけで演奏して表現しきれるものじゃないんですよね。だから用意したトラックの上に生演奏を乗せることになるんだけど、やっぱり生演奏から生まれるエネルギーってすごく大事だと思うんです。音楽っていうのはその場で聴いてなんぼ。僕のライヴでは、普段クラブではあまりできない体験をしてもらいたいですね。
starRo ph05

starRo ph05

© [unknown]

バンドの生演奏から生まれるエネルギーを感じてほしい

starRo
ここでちょっとニューアルバムについて詳しく聞いてみた。まずはMondayというタイトルの意味を尋ねたところ、会社を一年前に辞めたという話が出てきた。starRoはこれまで「会社勤めをしながら限られた時間の中で音楽活動をしている」と語っていたが、一年前に晴れてフルタイムのミュージシャンになったそうだ。
starRo フルタイムで音楽をやるようになってから初めて手掛けたプロジェクトがこのアルバムなんです。だからスタートっていう意味で、週の始まりに掛けてMondayというタイトルにしました。あと、会社を辞めたら月曜日が一番好きな曜日になったんですよ。月~金で働いてる人はみんなそうだと思うけど、僕も前は月曜日が嫌いで。だからそういう人たちにとって、月曜日にモチベーションが上がるアルバムになれたらいいなっていう思いも込めてます。
自身のことを「ビートメイカーというよりも歌を作る人」と話すstarRo。『Monday』もまたほとんど歌モノでできているため、アルバムの聴きどころとしては「歌のおもしろみや醍醐味を感じてもらいたい」ということだ。歌のおもしろみといえば、同アルバムには日本人シンガーのCharaも 『カクレンボ』という曲で参加しているのだが、この曲では“R&Bに日本語はマッチしづらい”という従来のイメージを覆していると言えるだろう。それは歌い上げるタイプのR&Bではなくフューチャー・ビートだからなのか、それともCharaのヴォーカルゆえなのか。
starRo Charaさんは響きを気にする人なので、最初はサウンド的な部分から入って、そこから歌詞を当てていくっていうアプローチなんですね。今日一緒に作業してるDEANも同じだけど。Charaさんも最初のデモでは英語っぽく歌って、そこに日本語をはめ込むようにやっていって。だから日本語でもうまくはまったんじゃないですかね。
今回はソロ作を引っ提げての来日となったが、Soulectionとしての公演活動はどのような状況なのだろうか。Soulectionのショーは、アメリカで2千人のキャパシティを埋め尽くすほどの人気を見せている。アメリカだけでなく、ヨーロッパ各地でも公演を行ってきた。しかしここ半年ほどはSoulectionとしてのショーは休んでおり、各メンバーが単独ライヴを行う機会が増えているのだという。やはり日本に比べるとアメリカのほうが公演機会も多く、音楽で生計を立てやすいのだろうか。今やフルタイムのミュージシャンとしてLAで活動するstarRoは、どう感じているのだろう。
starRo 僕のやってる音楽に関して言えば、やっぱり日本での活動はまだ難しいんじゃないかな。今の時点では食べていくのは結構大変だと思います。アメリカではR&Bが大衆音楽として浸透してるので、日本に比べたらビジネスとして成り立ちますが。韓国もR&Bが浸透してるので、DEANもそうですけど、日本よりも食べていけるみたいですね。
starRo ph06

starRo ph06

© [unknown]

starRoの言うように、R&Bが大衆に浸透しているという点で、日本と韓国は大きく異なる。アメリカの最新トレンドを取り入れたDEANの音楽性が韓国の大衆にすんなりと受け入れられたのは、やはりそれまでに本格的なR&Bやヒップホップが十分に根付いていたからこそだろう。日本ではブラックミュージックが大衆音楽として受け入れられる土台ができていないのが現状だ。
それでは、日本よりもブラックミュージックが浸透している韓国に暮らすDEANは、どのような音楽から影響を受けたのだろうか。
DEAN かなり多くの音楽から影響受けたのでひとりに絞るのは難しいけど……。最近はバンドをよく聴いてますね。アメリカの The Internetとか、韓国の Phony Pplっていうバンドを聴いてます。
最初はソングライターとしてキャリアをスタートさせたDEANだが、実は元からシンガー志望だったという。シンガーになることを目標に音楽を始め、曲を作っているうちに機会が訪れてまずはプロデューサーとしての道が開けたのだそうだ。その作曲手法を尋ねてみると、感覚的というよりも論理的に組み立てていくやり方のようだ。
DEAN 最初にコンセプトやテーマを決めます。作品に対する大きな絵を最初に描いて、その絵に沿って作っていくというやり方です。7年間一緒に作業をしている作曲チームがいて、彼らとコードやサウンドをひとつずつ作りながら仕上げていくんです。
長年に渡って同じチームと作業を続けてきたDEANは、去年アメリカでEric BellingerやAnderson .Paakなどと作業をしながら、「自分とはまったく違うやり方を目の当たりにして、様々なことを感じた」と話す。世界のトップアーティストに数えられる両者とのコラボレーション。そんな得難い経験を重ねながら音楽に向き合ってきたDEANは、韓国の音楽についてどのように感じているのだろう。アメリカやイギリスの音楽との違いについても合わせて尋ねてみた。
DEAN 韓国の音楽は、オーディオ面よりも、ミュージックビデオとかビジュアル面での見せ方がうまいと思います。様々な芸術が集まった複合体というか。イギリスの音楽は、メロディー的な完成度が韓国に近いような気がしますね。僕の思うアメリカは、とても大きな国で、多才な人が集まっていて、いろんな人種の人が住んでいて、多様なチャンネルが用意されてて……。そして多様な音楽がある。SoundCloudも有効的に活用されてるし、そういうものに対する受け入れも早い気がします。
だからこそ、韓国の音楽もアメリカの市場に受け入れられているという側面もあるのだろうか。数年前までいわゆる「K-POPブーム」というものが世界的に起こっていたが、最初はアイドル音楽のみが流行していたところから少しずつジャンルの幅が広がっていき、今や韓国産の良質なR&Bやヒップホップがアメリカ市場に広がりつつある。代表的なところで言うとJay ParkやKeith Apeなどのアーティストたちだろう。彼らやDEANなどの場合、YouTubeのコメント欄は英語のコメントがほとんどを占める。
DEAN 僕の音楽はいわゆるK-POPとは違うけど、K-POPブームがアジア全体に広がって、韓国の音楽がいろんな国で広く知られるようになりました。そのおかげで僕の音楽も聴いてもらえるようになったと感じてます。
starRo ph07

starRo ph07

© [unknown]

アメリカには多才な人が集まり、多様なチャンネルが用意され、多様な音楽がある

DEAN
もちろん韓国の音楽がアメリカのメインストリームの中心に立つところまで行っているわけではないが、現地の音楽ファンの間にじわじわと浸透していっているのは間違いない。DEANが並外れた才能を持っているとはいえ、アジアの新人アーティストがアメリカのトップアーティストたちとコラボする機会を得るというのは、やはりそれだけ韓国の音楽がアメリカ市場に注目されているという証だろう。そして、だからこそLAで暮らすstarRoがDEANを見つけるに至ったというわけだ。
そもそも今回のセッションは、冒頭で伝えたようにstarRoがアルバム『Monday』のリリースパーティーにDEANを招いたことから実現した。この日、Red Bull Studios Tokyoで初めて呼吸を合わせたふたり。starRoはDEANの音楽性のどういう部分に惹かれ、どのような曲を一緒にやりたいと思ったのだろうか。
starRo DEANはトラックの方向性がドンピシャ。いろんなもの聴いてるんだなって感じます。あと、歌がうまいだけじゃなくて、作曲家としてメロディセンスがすごくいいですね。今回の曲も“DEANとやるんだったらこうやりたいな”っていうイメージは最初から何となくあって。せっかくバンドも連れてきてるし、ベースとドラムを入れて生音っぽい方向性にしてます。
DEANもまた、先述のように以前からSoulectionやstarRoの音楽のファンだった。DEANを筆頭に韓国の若手アーティストたちが昨年結成したclub eskimoというクルーは、「Soulectionのような活動がしたくて結成した」ということだ。
DEAN Soulectionみたいに、ラジオとかSoundCloudを使って多様なチャンネルを提供するようなチームがやりたくて。club eskimoでは、自分たちが今一番やりたい生の音楽を見せていきたいです。エスキモーは生モノを食べる人たちなので、生の音楽を見せるという意味でclub eskimoって名付けたんですよ。
「アメリカは新しいものを受け入れるのが早い」と語っていたDEANだが、今まで韓国にはなかったタイプのクルーを結成した彼もまた、新しいものに貪欲である。音楽的にもアメリカの最新トレンドに自分だけのエッセンスを加えながら、積極的に新しい動きを見せていく。
韓国は日本と比べると、R&Bやフューチャー・ビートのような音楽に対する受け入れ態勢が整っているが、ふたりはそのことについてどのように考えているのだろうか。本記事では、アメリカに活動拠点を置く日本人のstarRo、そしてシンガーとしてのキャリアをアメリカでスタートさせた韓国人のDEAN、このふたりのバックグラウンドと彼らの音楽に対する考えなどに迫ってきた。では、彼らは今後、このジャンルが自国で、そしてアメリカで、世界で、どのように動いていくと考えているのだろう。
starRo 日本でももう少し大きくなっていくと思います。でもそれが大衆音楽になるかどうかっていうと、ちょっと分からない。やっぱり日本のマーケットって独特だし……。僕はLAで音楽をやりながらこうやって日本によく来てるので、単純にLAとかいろんな国で自分が経験してることを日本に持ってきたいなって思いはあります。でもそれをどうするかは聴いた人の解釈次第なので、日本でも大きくなっていけばいいけど、大きくならなかったとしても“まあ、そうなのかな”って感じですね。
DEAN フューチャー・ビートというよりも、より広義に“オルタナティヴ・ジャンル”として見ています。世界的に見ても、R&Bとかこういった音楽ってオルタナティヴとして一括りにされていて、ひとつのジャンルとして認識されにくいんですよね。ひとつのジャンルとすることが難しいので何とも言えないけど、今後もオルタナティヴ・ミュージックは世界的に流行していくだろうなって思います。

LAでの経験を日本にも持ってきたい。それをどう解釈するかは聴く人次第じゃないかな

starRo

今後もオルタナティヴ・ミュージックは世界的に流行していくと思う

DEAN
最後に、ふたりの今後の活動予定を聞いてみた。
starRo 来年はEPをできれば2枚ぐらい出したいと思ってます。あとは最近アルバムを出したばかりなので、とにかくライヴ、ライヴ、ライヴ。日本でもライヴをできる機会が増えるといいですね。
DEAN 来年フルアルバムを出すつもりです。今年『130mood:TRBL』というEPを出したんですが、“130moodシリーズ”として同じシリーズのセカンドアルバムが出るような感じです。ヨーロッパのサウンドを取り入れたいので、このあとすぐにイギリスに行って現地のミュージシャンたちとプロダクションする予定です。ヨーロッパ的なサウンドが融合した音楽を期待していてください。
本インタビューの翌日、渋谷Sound Museum VisionでstarRoのアルバム『Monday』のリリースパーティーが開催された。starRoが語っていた通り、バンドセットで見せたパフォーマンスは通常のクラブパーティーでは体験できないような臨場感であった。ドラムが激しくパワフルに鳴り響き、starRoが奏でるシンセサイザーの音色が幻想的にとどろく。音楽の世界に入り込んでエモーショナルに演奏するStarRoは、その場で生まれる躍動感あるエネルギーを心から楽しんでいるようだった。『Monday』の収録曲を中心に展開した1時間15分のステージでは、生のヴォーカル、ラップ、バンド演奏で観客をstarRoの世界感に引き込み、さらには盛り上がった仲間たちによるダンス(というよりステージで大暴れ)が見られるというオマケまで。
DEANは若い女性ファンが圧倒的に多く、その登場の瞬間は伴奏を完全に掻き消すほどの黄色い歓声が鳴り響いた。人の波が右から左から絶え間なく押し寄せ、あわや将棋倒しになるかと思うほど会場はパニック状態になった。韓国でも安定したステージングに定評があるDEANは、やはりこの日も初めての国でパフォーマンスをしているとは思えないほどリラックスした様子を見せ、そのシルキー・ヴォイスで観客を魅了した。圧倒的な歌唱力に加え、どこか品の良さを漂わせるモーションは、DEANだけが放つことのできる絶妙な舞台演出効果だろう。
Red Bull Studios Tokyoでレコーディングしたトラックについては、リリース日は今のところ未定だ。だが、そう遠くないうちに何らかの形で発表されるはずである。リリースパーティーでパワフルなステージを見せてくれたバンドによる生音も入っているというのだから、今から期待が高まる。レコーディング中、DEANの伸びの良い歌声を短時間だけ聴くことができた。「ファンキーでレトロなトラック」「ドラムとベースの生演奏」「DEANの伸びの良い歌声」、これらのヒントを胸に、日米韓3ヵ国の魂を受け継いだフューチャー・トラックを楽しみにしてほしい。