現代スノーボーディングの礎を築いた映像作品『ROADKILL』

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.9
By 野上大介

スノーボードを始めて2年目を迎えた1993年、衝撃的な映像作品と出会うことになる。この時代に雪上を駆けていた若者たちの多くが、このビデオから多大なる影響を受けたといっても過言ではないはずだ。Vol.1のコラムに引き続き、映像とともに改めて紹介させてほしい。FALL LINE FILMSが手掛けた不朽の名作『ROADKILL』だ。

1976年式のキャデラックリムジンで、ユタ州スノーバード、コロラド州ブリッケンリッジ、ワシントン州マウントベイカー、カリフォルニア州ベアマウンテンなどをロードトリップしながらライディングする様を映像に収めた作品だ。旅人はブライアン・イグチ、テリエ・ハーカンセン、マイク・ランケット、ジョン・カーディエルといった現在のレジェンドたちを中心に、彼らの先輩格にあたるショーン・パーマーや、後に一世を風靡することになるジェイミー・リンらとセッションを繰り広げていくストーリー。トリップの要所要所には、プロスケートボーダーでもあったジョンによるスケートでのライディングや、ほかにもストリートダンスやウェイクボードのシーンも収録されているなど、スノーボードだけに固執せず、今以上にライフスタイルの匂いが漂う映像構成が斬新だった。

冒頭でも述べたように、この作品がスノーボーダーのバイブルと化した理由。それは、現在のスノーボードムービーのようにバックカントリーやストリートがメインではなく、大半のフッテージがゲレンデでのライディングだったこと。ライディングレベルが低かったから……そう言ってしまえばそれまでだが、雪上でストリートファッションを身にまとい、さながらスケートボードのように滑走する姿に、筆者を含めた当時の若者たち=団塊ジュニア世代のボリュームゾーンが刺激された。現実的なフィールドでトリックを繰り広げるライダーたちに感情移入できたのだろう。

さらに、本作品を最高潮にまで演出するサウンド。NOFXやPENNY WISE、BAD RELIGIONといったパンクロック・バンドが奏でる音は、スケートライクなライディングスタイルをより美化するとともに、スノーボードのイメージアップにも貢献した。
この時代の日本ではスケートボードがファッションも含めて流行していたこともあり、スノーボードを始めるまでの流れがとてもスムースだったことも拍車をかける。スノーボードの滑走に対して規制するゲレンデが多かった時代ではあったが、瞬く間にスノーボーダーがゲレンデに溢れかえった。

 

SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.9 © Bud Fawcett

1993年にコロラド州ブリッケンリッジで撮影された、『ROADKILL』収録中のヒトコマ。ジョン・カーディエルによる、これぞスケートライクなライディングスタイル

 

これは日本に限った話ではなく、世界中で同時多発的に起こり、スキーヤーが運営するゲレンデサイドはスノーボーダーを受け入れざるを得なくなった。日本においては、東京・原宿の明治通りにあったスノーボードショップで、真夏に行われていた展示即売会にも関わらず、何百メートルにも渡る大行列ができたほど。全国各地で10万円弱するボードが飛ぶように売れた。そう、スノーボードが産業となった瞬間だ。

シャーマン・ポッペンやトム・シムス、ジェイク・バートン、田沼進三といった各氏たちがスノーボードの原型を生み出し、トムとジェイクが北米でしのぎを削りながら成長させ、クレイグ・ケリーがライダーとしての道を示した。その流れの中で、デイブ・シオーネ監督がメガホンを取ったこの作品を契機に、スノーボードが世界中で市民権を得たわけだ。

そして、世界中のスノーボーダーたちが視線を向けたその先には、本作に出演しているテリエやジェイミーの姿があった。彼らがスノーボードに与えた影響は計り知れない。それらについては、次回以降の当コラムで詳しく触れていきたいと思う。
つづく

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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