自由すぎる発想から創造されたジビングという遊び方

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.11
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.11 © Chris Carnel
By 野上大介

1993年、カリフォルニア州ボリエールのJIBASSIC PARKでクルマに当て込むタークィン・ロビンス。今シーズン、弊誌がプロデュースするパークでもクラシックカーを埋める予定

これまでは人物や映像作品を軸に、スノーボードの起源から90年代初頭までを振り返ってきたわけだが、ここで改めて、トリックやプロダクトの歴史についても考察しておきたい。

Vol.5のコラムでお伝えしたように、フリースタイル・スノーボーディングのゴッドファーザーはテリー・キッドウェルだ。その背景があったうえで、スケートボードでも名を馳せていたノア・サラスネックが、雪上でスケートの動きを体現したことで現在のトリックの原型が生まれたことは、以前のコラムでも触れたとおり。そして、その映像が世に発信されると、カリフォルニアローカルのスケーターたちがスノーボードに飛びついた。

足が固定されているスノーボードだが、いかにスケートライクに表現できるか───これが最重要テーマだった。ボーンアウト(足を伸ばすこと)しやすくするために足首の可動域を広げることが求められ、ハイバックを切断するのが当たり前だった時代。筆者も当時、購入したばかりのバインディングのハイバックを、ためらうことなく電動ノコギリでカットし、切れ端をダクトテープでガードしていた。動きやすさもそうなのだが、このスタイル自体がカッコよかったからだ。翌シーズンには、カットする必要がないくらい低く設定されたハイバックのLO-BACKバインディングや、丈が短くホールド性よりも柔軟性を重視したトレッキングシューズを彷彿とさせるブーツ・STUMPYが、それぞれBURTONよりリリースされた。

切り株に当て込んだり、クラシックカーをコスったり、リゾート内のハンドレールをスライドするなど、ジビングという新たなるライディングスタイルが確立した。それを象徴する写真が今回紹介しているタークィン・ロビンスのライディングなのだが、彼はハイバックを外し、スタンスを大幅に広げ、スケートスタイル全開のオーリーやノーグラブのフロントサイド360などを、現在と比較すると小さすぎるエアで繰り出していた。でも、その手に届きそうなライディングだったからこそ、リアルなカッコよさがあったわけだ。

また、スケートのマニュアルの動きに、スノーボード独自のプレスやピボットなどをフラットバーンで組み合わせることでグラウンドトリックが誕生。今では考えにくいが、170cm以上ある男性でも144くらいのレングスをチョイスし、ウエスト幅27cm近くのワイドボードに跨がり、超ソフトフレックスを駆使して、雪上にバターを塗るかのような動きを披露するスノーボーダーで溢れた。これがバタートリックの語源。もちろん、身にまとっていたのはネルシャツにバギーパンツだ。

マイク・ランケットやクリス・ローチがブラウン管の向こう側で繰り出していたフロントサイド・ノーズバターは、日本中のスノーリゾートで多くのスノーボーダーがマネをしたものだ。現在の一般スノーボーダーたちから絶大なる人気を誇る通称“グラトリ”だが、フリーライディング中に取り入れていた当時のそれとは異なり、日本では独自のカルチャーとして根づいてしまった。ターンをほとんどせずに、低速でパタパタと回しながらコースを下りてくるスノーボーダーのことを指しているのだが、ドキっとした読者諸兄姉がいるとしたら、Vol.9、Vol.10で紹介した映像作品『ROADKILL』と『R.P.M.』を改めて観てほしい。きっと、価値観が変わるはずだから───。

これで年内の寄稿は最後になると思うが、このコラムがスタートしてから2ヶ月あまり、ご愛読いただきましてありがとうございました。来年はニュースクールをお題にスタートしようかな、と。それでは、よいお年を。そして、年末年始は最高のスノーボードライフを!

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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