スタイルの原点はターンにあり

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.12
By 野上大介

新年おめでとうございます。本年も当コラム「SNOWBOARDING IS MY LIFE」を、どうぞよろしくお願いいたします。

年末年始はもちろん滑りに行ったわけだが、そこで感じたこと。それは、“カッコいい滑り”をしているスノーボーダーの少なさ。これは上手い下手の話ではない。なにか物足りなさを感じてしまったのだ。歴史の話からは少しそれてしまうが、結果的に通じる部分はあるのでお付き合いいただきたい。

この理由を紐解いていくと、現代のスノーボーダーたちは恵まれた環境を有していているからではないか。そう考えてしまう。地形を活かしたフリーライディングを求めれば、俗に言うダブルキャンバーなどのロッカーボードでルーズな動きが容易に可能だ。パウダーライディングを求めれば、深雪でも浮力を得ることができるテーパードシェイプやスワローテールのボードが用意されている。

また、フリースタイルな滑りを求めれば、ゲレンデには飛びやすく整備されたパークが設置されているだろう。しかし、昨年のソチ五輪で全国のお茶の間を席巻したハーフパイプがない。カービングターンができないフリースタイル初級者でも遊べるパークとは異なり、ある程度高度な滑走技術が求められるためニーズが減少し続けているからだ。それは、パイプでボトムランやエアターンをするよりも、パークの小さなキッカーやボックスで遊ぶほうが簡単だから。加えて、パイプを維持するためにはリゾートサイドに多額な管理費が強いられるため、全国各地で激減の一途をたどり現在に至る。

ハードギアの進化はとても素晴らしいことだ。昔よりも快適にスノーボードを楽しめるようになった。しかし、マニュアル車で運転免許を取ったからこそ、オートマ車の特性を理解して快適に運転できることは理解できるはず(若い子はわからないか?)。それと同じことなんだと思う。ライディングスタイルやフィールドに合わせたプロダクトに跨がり、基礎を体得する前に快楽を求めてしまう。これは決して悪いことではないのだが、その分、物足りなさに繋がってしまうのかもしれない。

フィールドも然り。90年代、全国各地に数多く設置されていたパイプは現在のスーパーパイプと比べれば半分程度の代物だったが、そこで基礎的なライディングスキルに磨きをかけることができた。カービングターンや繊細なボードコントロールがままならないと、リップから抜け出して飛ぶことができないからだ。それは、ゲレンデ内の起伏を活用したフリーライディングにも通じる部分がある。ヒットポイントを見つけながら、ターンを繋いだライン上にその地形を活かした遊びを取り入れようと滑ることで、自然とボードコントロール術が身についていった。しかし現在は、飛べる地形を探すまでもなく、飛びやすいキッカーが用意されている時代。

SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.12 © Bud Fawcett

【画像】1991年、アメリカ・オレゴン州マウントフッドで撮影された一枚。写真のジョン・カーディエルはプロスケートボーダーでもあったため、当時のスケートテイストを多分に含んだニュースクール・ムーブメントにひと役買っていたわけだが、スノーボード特有のカービングスキルももちろん長けていた

ここ最近、カービング技術を駆使したフリースタイルなライディングが世界的に注目されている。これをカッコよく感じるかどうかは賛否両論があるかもしれないが、トリックの回転数や難易度、バックカントリーという命懸けのフィールドばかりを追い求めてきた現シーンに対してのアンチテーゼなのかもしれない。

まだシーズンは始まったばかり。小誌ではこのようなテーマを掲げたうえでカービングターンやボードコントロール全般について掘り下げ、ゲレンデ内の地形を活かして雪上を駆けていた90年代当時のフリーライディング(再三綴っているが、『ROADKILL』や『R.P.M.』のような滑り)の重要性について、2月6日発売の3月号で特集する予定だ。これを契機に、みなさんも自身のライディングを見つめ直してみてはいかがだろうか。

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兄弟誌である米「TRANSWORLD SNOWboarding」誌が選出した「もっともスタイリッシュなトリック」5選の第3位は、ディラン・ガマシュによるBACKSIDE 180 SWITCH TOESIDE CARVE TO REVERT

Josh Dirksen at Mt. Bachelor
基礎に裏打ちされた熟練の技術があれば、カービングターンだけでもここまで魅せることができるのだ

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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