スキー連盟に属するスノーボードとは

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.13
後に世界を席巻することになる若かりし頃のテリエ。この頃はスノーボードがオリンピック種目になること、ましてやそれをボイコットする立場になることなど、考えもしなかっただろう
© Rob Grace
By 野上大介

【写真】
後に世界を席巻することになる若かりし頃のテリエ。この頃はスノーボードがオリンピック種目になること、ましてやそれをボイコットする立場になることなど、考えもしなかっただろう

────────────────────

今週末から、FISスノーボード世界選手権が開催される。FISとはフランス語のFédération Internationale de Skiの略で、スキーの国際統括団体である。スノーボードとスキーはまったくの別物であるのだが、1998年の長野五輪でスノーボードが正式種目に採用される際、IOC(国際オリンピック委員会)はISF(国際スノーボード連盟。2002年解散)ではなくFISにそのハンドリングを託した。すべては、ここから始まってしまった。

当時、現在のショーン・ホワイトと同じくハーフパイプでは“絶対王者”と謳われていたテリエ・ハーカンセン。ISF主催の世界選手権で3回、全米オープンで3回、ヨーロッパ選手権で5回のタイトルを獲得するなど、当時のハーフパイプシーンでは圧倒的な強さを誇っていた。しかし、スノーボードのフリースタイル種目として唯一採用されたハーフパイプだったにも関わらず、テリエはオリンピックをボイコットしたのだ。

その背景にはあらゆる問題があった。それは、スキーヤーに支配されたことに対するスノーボーダーの憤りといった単純な問題ではない。以前のコラムでもお伝えしたように、スキーヤーやスキー場の経営サイド(もちろんスキーヤー)は、自由な遊びであるスノーボードを当時受け入れなかった。しかし、若者のカルチャーとして一気に浸透し、その参加人口が急激に膨れ上がると、ビジネスとして受け入れざるを得なくなったことは言うまでもないだろう。同じように、FISはスノーボードが五輪種目に採用されることに反対の立場だったはずなのだが、IOCからその主導権を受け渡されると手のひらを返したかのように、代表選考の大会をFISに限るなど、ライダーたちを囲い込んだ。そういった手法にテリエは中指を立てたわけである。

また、オリンピック自体が国を代表して行われる祭典である以上、スノーボードに関して言えば世界最高峰のコンテストになり得ない、という持論を彼は展開してきた。小誌2014年3月号においても「どうして世界トップクラスのライダーが揃っていない大会が、世界最高峰のスノーボードコンテストと言えるんだ?」というコメントを残してくれたわけだが、山と雪という自然の恵みを必要とするスポーツであるスノーボードにおいては、否応なしに地域差がつきまとってしまうもの。山があっても降雪がなければ練習できないし、その反対も然り。しかし、参加国には最大で4つの出場枠しか与えられないため、ハーフパイプではアメリカ、スロープスタイルではノルウェーといった強豪国に多くの世界トップライダーがいても、彼らすべての出場は許されない。

そうしたバックグラウンドから、長野五輪やソルトレイク五輪についてはテリエに賛同してボイコットした有力ライダーがいたことも含め、世界最高峰からはほど遠いコンテストと化したのだった。
2006年のトリノ五輪あたりからは前述したストーリーが風化し始めたこともあってか、世代が入れ替わったこともあり、多くのトップライダーが積極的にオリンピックの舞台を目指しだした。

しかし、FISの横暴はこれだけでは終わらなかった。バンクーバー五輪で行われたハーフパイプ種目のテレビ視聴率がよかったことに目を付け、スノーボード界で発展を遂げてきたスロープスタイルを種目化することに躍起となったのだ。

そして半ば強引に、2011年より大会をスタート。出場経験のある海外ライダーたちの声に耳を傾けてみると、興味深いコメントが多く残されていた。「高いレベルのコース設定を求めているのだろうが、根本的な部分が欠落しているため危険な設計」「オリンピックを目指す大会のコースがアベレージ以下の状態は、タイガー・ウッズがパターゴルフでマスターズの予選をやっているようなもの」……など、かなり手厳しい意見が多い。

これらを踏まえて考えてほしい。昨年行われたソチ五輪のスノーボード種目で話題となった、コース設計やジャッジ基準についての問題を覚えているだろうか。転倒者が続出し、スノーボードに精通していない人から見れば、これが世界最高峰なのか?という疑念が残ったに違いない。結果、スロープスタイルとハーフパイプの2冠を目論んだショーン・ホワイトは、コースの危険性を訴えてスロープスタイルを棄権。ハーフパイプでの3連覇に懸けたわけだが、こちらでも番狂わせが起こってしまった。

そんな悪条件をものともせずに当時15歳だった平野歩夢、同じく18歳の平岡卓が、それぞれ銀・銅メダルを獲得。その波及効果として、先に述べた世界選手権をテレビ東京が放映することになったわけだ。オリンピック以外で民放が放送するということは、日本においてスノーボードがメジャースポーツの仲間入りをしたという証とも言えるだろう。

だが、その世界選手権はFISが運営するものである。世界選手権の開催期間中は週をまたいで、この議題について論じていきたいと思う。
http://www.tv-tokyo.co.jp/snow2015/

 

国内No.1スノーボード情報サイト「TRANSWORLD WEB」をチェック!

────────────────────

野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

Next Story