スキー連盟に相容れないフリースタイル気質

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.14
By 野上大介

レッドブル・アスリートたちの活躍が目覚ましい。1月17日にオーストリア・インスブルックで開催されたビッグエアの伝統の一戦・AIR & STYLEにおいて角野友基が3位、21日には同じくオーストリア・クライッシュベルクで行われたFISスノーボード世界選手権の女子スロープスタイルで鬼塚雅が女子としては日本人初、さらに最年少金メダリストに輝いたのだ。

そして22日から、アメリカ・コロラド州アスペンにてWINTER X GAMESが開幕した。ビッグエア、ハーフパイプ、スロープスタイルと種目の違いはもちろんだが、それぞれオーガナイザーが異なるためか、すべてが世界最高峰のコンテストという位置づけであるにも関わらず、スケジュールが過密していることに違和感を覚える。ビッグエア種目であるAIR & STYLEは、ショーン・ホワイトが主催権を買い取っている。これには、スノーボーダーによるスノーボーダーのための大会を守ろうという姿勢を垣間見ることができるのではないか。

前回のコラムでもお伝えしたようにFISとは国際スキー連盟を指すのだが、彼らが主催する頂上決戦が世界選手権やワールドカップだ。そしてX GAMESは、アメリカのケーブルテレビネットワークであるESPNにより開催されている。ソチ五輪の前哨戦と称されていたことからも、この大会がオリンピック同様に世界最高峰であることは一般的にも認知されていることだろう。

SAJ(全日本スキー連盟)のナショナルチームに所属している角野は世界選手権に出場せず、スノーボード界が築き上げてきた由緒ある大会に招待選手として参戦。X GAMESにも出場予定だ。また、ソチ五輪ハーフパイプ・銅メダリストの平岡卓はFIS世界選手権、X GAMESともに出場。転戦のため、オーストリアからコロラドへの移動には大変な労力を費やしたことだろうが、アメリカ時間22日に行われたX GAMESスーパーパイプにてシルバーメダルを獲得するという快挙を成し遂げた。同じくソチ五輪ハーフパイプ・銀メダリストの平野歩夢は今季ナショナルチームから脱退しているため、FISが主催する大会に出ることはない。X GAMESではCABダブルコーク1440(YOLOフリップ)をルーティンに組み込むなど素晴らしい滑りを披露するも結果がついてこなかったため、3月のUS OPENに向けて調整してくるはずだ。鬼塚雅は相応の実績がないため、X GAMESには招待されていない。

SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.14 © Red Bull Content Pool

【写真】
昨年のWINTER X GAMESビッグエアにおいて、角野友基はシルバーメダルを獲得。今年はスロープスタイル・ビッグエアの2種目で頂を目指す

そう、X GAMESやUS OPENには世界トップクラスのライダーが招集され、その舞台で頂点を目指す構図が成立しているのだが、オリンピックでのスノーボード競技を統轄しているFISの世界選手権やワールドカップにはそれがない。国ごとによる体制や文化の違いはあれど、ソチ五輪で名を馳せたトップ選手たちが世界選手権に名を連ねていないことを疑問視した視聴者も多かったのではないだろうか。

それは、それぞれの大会の出場選手リストを見れば一目瞭然。ケガや突然のアクシデントがないかぎり、フィギュアスケートの世界選手権に羽生結弦が出ないということはないはず。これらのことからもわかるように、スノーボード競技は一元化されていないため、大衆にわかりづらいフォーマットと化してしまっているのが大問題なのだ。体育文化が染みついた日本においては、カウンターカルチャーの延長線としてエンターテインメント化されたこれら世界最高峰の大会よりも、オリンピックへの道を示したわかりやすい冠が付いている大会に重きを置く国民気質なのかもしれない。

スノーボードとスキー。オリンピックを巡ってそれぞれの団体による摩擦によって生じた“捻れ”をテーマに綴ってきたわけだが、同じスキーという括りの中でも、アルペンスキーとフリースタイルスキーとの間には近しい問題を抱えているようだ。2年前のFIS世界選手権の覇者であり、X GAMESのゴールドメダリストであるフリースタイルスキー・ハーフパイプ種目の絶対王者、デビッド・ワイズが発した言葉。それは、レーサーとフリースタイラーによる確執だった。アルペンレースが主であるFISとこれまでも少なからず対立があったということを、赤裸々に明かしている。
http://david-wise.com/?p=1068(海外サイト)

そのデビッドはこれまで、FISの世界選手権にスキー・ハーフパイプが種目化されるよう尽力してきたそうだが、彼はその世界選手権には出場せず、X GAMESでのゴールドメダルを目指すのだ。

それが、すべての答えなのかもしれない。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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