“古いけど新しい”ライディングスタイルの提案

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.15
By 野上大介

近年のスノーボーダーたちを見て思うこと。

オリンピックなどの影響からか、それを目指すキッズスノーボーダーは目を見張るほどのテクニックを身につけ、競技スノーボードという観点から考えると日本の将来は明るいのかもしれない。その背景には、オフシーズンでも練習できるストレートジャンプの練習施設が全国津々浦々に点在していることが挙げられる。雪よりもボードコントロールがシビアなブラシをアプローチに敷き、ランディングにはマットを設置していることから、高難度トリックを体得するための格好な環境と化しているからだ。もちろん、ジャンプ初心者に体験という機会を提供する意味でも貢献していることだろう。

SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.15 © yoshitoyanagida.com

【写真】
スノーボードが世界中で爆発的に広まった90年代初頭、北米のパークはこのような雰囲気だった。当時を知るレジェンドライダー・本間“アニ”勝則に、ビートルを埋め込んだ「90’s NEO-CLASSIC PARK」で遊んでもらったときの一枚。昔のスノーボーダーにとっては懐かしく、今のスノーボーダーにとっては新しい。
 

レッドブル・アスリートの角野友基鬼塚雅らは、ここで練習して世界という舞台で戦えるだけのスキルを若くして身につけたことからも、前述した事項を裏づけてくれる。以前に角野と話す機会があったのだが、グローバルのトップコンペティターたちにこの練習施設での動画を見せると、かなりの驚きだったようだ。一年中練習できる、世界に誇るべきスノーボード場。そういっても過言ではないはずだ。

はたまた一般スノーボーダーに目を向けてみると、緩斜面のフラットバーンで仲間たちと連なりながら、グラウンドトリックに興ずるシーンを多く見かける。ひとつ一つのトリックを仕掛けては止まり、それを繰り返しながら麓まで下りていく。

それを否定するつもりはないが、現在の一般スノーボーダーたちは行き場を失いかけてしまっているように感じてならない。それは、Vol.12のコラムでも触れたように、いわゆるパークをフリースタイラーたちの受け皿として依存し続けてきた結果。そう言い換えられるのではないだろうか。日本フリースタイルシーンの“格差”とでも言うべきか。

全国にパークが充実したことで、トリックを決めたいという願望からスノーボードを始める人たちにとっては、とても恵まれた環境が与えられてきた。カービングターンを習得する前からトリックに走り、ジャンプで言えば360くらいまではステップアップできるものの、基礎が欠落していることもあり次のステップに進めない。トリックを中心としてスノーボードに取り組んできたこともあり、ケガなどのリスクと天秤にかけるとライディングが面白くなくなってしまう。このような負の連鎖が少なからずあるのでは……?

再三綴っているのでオヤジの戯言のように聞こえるかもしれないが、以前はそうではなかった。パークのように飛びやすいアイテムがなかったからこそ、ゲレンデ内の地形を見極め、フリーライディングをしながら点在しているヒットポイントに当て込んできた。そうするうちに、自然とカービングターンの技術が備わり、ライディングスキルの基礎を培うことができた。そう分析している。

進化したボードに跨がり、整備されたパークでの滑走を許された結果、トリックの難易度ばかりを追い求めてしまっている現代。だからこそ声を大にして言いたい。パークアイテムではなくナチュラルヒットでは、難易度だけでなく人それぞれの個性を活かしたクリエイティブなライディングが楽しめるんだ、と。ジャンプでの高回転スピンや、ジブでの複雑なコンボトリックができなくたっていい。でもその代わりに、想像力を活かしたライディングを楽しんでほしい。そこに秘められているのが、いわゆる“スタイル”だから。

このように失いつつあった大切な価値観を守るべく、今シーズン、新しい遊び場を提案している。福島・星野リゾート アルツ磐梯の9コースにプロデュースさせていただいた「90’s NEO-CLASSIC PARK」がそれだ。パークのキャッチコピーは、“古きを知り、新しく遊ぶ。”

2月6日(金)に発売する小誌3月号で本パークを特集しているので、そちらもぜひチェックしてほしい。実際にライダーたちと滑ったのだが、レベルを問わず楽しめ、あらゆるスタイルで遊ぶことができる。これまでのパークという概念を覆す仕上がりだ。これは手前味噌ではなく、あらゆるスノーボーダーに体験してほしいという自信と、スノーボードをもっと楽しんでほしいという願望である。
http://www.transworldweb.jp/snow/open-page02/90s-neo-classic-park/

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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