山国ニッポンが誇るパウダーエリアとの向き合い方

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.16
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.16
By 野上大介

【写真】
画像中央にいるライダーが流されているのがわかるだろう。映像を観てもらえればわかるように、着地の衝撃により雪崩を誘発してしまったわけだが、世界のトップライダーであるギギ・ラフですら、大自然を相手にはなす術がない。

先日の2月3日にNHK「クローズアップ現代」で放送されたバックカントリーでの事故について。オープニングに少しだけ出演しているのだが、その撮影より前に、NHKが取材を進めるにあたり現状のバックカントリー事情を把握したいということで一度打ち合わせていた。そこでの話は番組に反映されていて、かつ、白馬やニセコでの彼らの取材を通して、ただ単に危険な側面のみを放送するネガティブな内容ではなく、どのようにバックカントリーや日本が誇るパウダースノーと付き合っていけばいいのかを啓蒙する展開だった
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3610.html

その番組内の映像を見ていて目に余ったもの。それは、あまりにも“板に乗れていない”スノーボーダーたちがコース外へ進入していくシーンだった。

その背景には、やはりプロダクトの進化があるのだろう。ツインチップのキャンバーボード全盛期にパウダーを滑り込んでいた経験がある人ならば、現在のテーパードシェイプやスワローテールのボード、またはロッカー形状のボードが、いかにパウダーで滑りやすいかがわかるはずだ。反対に考えれば、以前まではその聖域での滑走を許されなかった者たちが、そこへ踏み入れられる魔法の乗り物を手に入れたが、操縦技術は持ち合わせていない。そう言い換えられるのかもしれない。

もちろん、経験豊富なうえに滑走技術が長けていたとしても、事故に遭う可能性はゼロではない。むしろ、身の丈に合わせてさらなるリスクが潜むエリアを目指すのであれば、それはなおさらだろう。しかし、前述したようにパウダーでの浮力を得やすいプロダクトが増えてきたこと、さらには昨今のアウトドアブームの影響も重なり、さほどライディング経験のないスノーボーダーやスキーヤーたちがそこを目指すという傾向は否めないのではないか。

当コラムでも幾度となくお伝えしてきているように、やはりすべての基礎はターンにある。Vol.12では、ゲレンデを見渡して感じた“カッコいい滑り”をしているスノーボーダーの少なさから、ターンを含めたベーススキルの重要性について説いたわけだが、今回の問題についても同じことが言える。ゲレンデ内の圧雪バーンを思いのままに滑ることさえできない人間が、知識や経験もなくコース外に立ち入るなど、言語道断のはずだ。

サーフィンの場合、たとえビッグウェーブに乗りたくても、その土俵に上がるためには波のブレイクポイントまでパドルアウトする技量が必要だ。ビッグウェーブなのだから当然、そこへたどり着ける人間は限られる。だがスノーボードやスキーの場合、そのビッグウェーブ相当の魅力がありリスクを伴うパウダーエリアまで、リフトアクセスからのトラバース、もしくはハイクアップで到達することができてしまう。ギアの進化も含め、滑走技術がなくても滑走権利を得られる環境が整っているわけだから、これまで以上に注意喚起が必要に違いない

だからと言って、板に乗れていればバックカントリーへ入れるのかと問われれば、決してそうではない。ビーコン・プローブ・ショベルといった、いわゆる三種の神器など、雪崩による埋没から命を守るための装備が必要になってくる。現在のスノーボードシーンを築き上げたといっても過言ではない伝説のスノーボーダー、クレイグ・ケリーでさえも雪崩で亡くなっているという事実。実力や経験、装備があっても、事故を100%防ぐことはできないのだ。

日本のパウダースノーは「ジャパウ(JAPAN POWDERの略)」と世界中から賞賛されるほど魅力あふれる財産だ。これらを楽しむためにも、広げるためにも、スノー業界全体としてこれからが正念場になるだろう。

僕らにできることは、知識や装備を揃えることはもちろんだが、ライディングの基礎力を高めることが先決だ。カッコよく滑るためにも、パウダースノーを楽しむためにも、大自然と戯れるためにも、まずはターンを極めてほしい

宣伝じみていて恐縮だが、そのターンを特集した小誌3月号が2月6日(金)に発売するので、そちらをぜひチェックしていただきたい。スノーボードはジャンプやジブのイメージが強すぎるからか、ターンがカッコ悪いものに映っている一般スノーボーダーも少なくないのかもしれない。だが、ターンを極めれば、遊び方が広がる。ターンを研ぎすませば、パウダーでより気持ちよく滑ることができる。きっと、あなたのスノーボードライフをより素晴らしいものに彩ってくれるはずだから

SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.16

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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