世界のトップ選手がいる日本から国際大会が減り続ける矛盾

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.17
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.17 © Chris Wellhausen
By 野上大介

この原稿を執筆している2月11日。昨年の今頃は、ロシア・ソチに位置するローザフートル・エクストリームパークのハーフパイプ下部にいた。手に汗を握り体格の大きい外国人に囲まれながら、ひとり最前列で固唾を呑んで見守っていたことを思い出す。そう、日本スノーボード界の歴史が動いた日だ。平野歩夢が冬季オリンピック史上最年少として銀メダルを、平岡卓が下馬評を覆して銅メダルを、それぞれ獲得。ソチ五輪において日本人初となる待望のメダルだったこともあり、深夜にも関わらず全国各地のお茶の間が興奮のるつぼと化したことだろう。


あれから1年が経過。現在の彼らはハーフパイプ競技において、平岡がWINTER X GAMESで2位平野がBURTON EUROPEAN OPENで2位に輝くなど、前年の結果に甘んじることなく世界トップに君臨し続けている。また、同じくソチ五輪で世間を賑わせた角野友基もX GAMESのビッグエアで3位、同じくビッグエア種目のAIR & STYLEでも3位になるなど、こちらもグローバルライダーたちと台頭に渡り合っているわけだ。強豪選手が挙って参加しているわけではない、国際スキー連盟(FIS)が主催するワールドカップでの上位入賞とはワケが違う。前述したリザルトは、事実上の世界トップクラスと言える成績なのだ

このような日本人ライダーたちの成長や活躍とは裏腹に、我が国のコンテストシーンにおいて国際レベルの大会を失い続けている矛盾。1997年から昨年まで18回に渡って開催されてきたTOYOTA BIG AIRが終了となり、2009年に事実上の消滅となったX-TRAIL JAMに続く形となってしまった。同じく都市型ビッグエアコンテストとして世界最古を誇るAIR & STYLEのインスブルック(オーストリア)大会は1994年からスタートしており、今季も開催された。その舞台には角野だけでなく稲村奎汰もインビテーションされるほど、日本人ライダーは国際大会でも注目を集めているわけだから、彼らの活躍を自国で観られないことは残念で仕方ない

そのAIR & STYLEは、X-TRAIL JAMがなくなった翌年の2010年から、中国・北京に進出。シーズン開幕の風物詩として日本全国のスノーボードファンから愛され、世界中からも注目を集めていた12月に開催される都市型ビッグエアコンテストの開催地は、その時代の経済を反映するかのように東京から北京へと移行したわけだ。

また、日本で行われていたハーフパイプやスロープスタイルの国際大会は、3月にアメリカ・コロラド州ベイルで開催される伝統の一戦・BURTON US OPENと肩を並べていたBURTON ASIAN OPEN(旧NIPPON OPEN)なのだが、2009年を最後に終了している。X-TRAIL JAM同様に日産自動車の冠スポンサーで行われていたため、その離脱が最大の要因だろう。TOYOTA BIG AIRの終了もまた然りである。

それらを踏まえて他スポーツに目を向けてみると、テニスのJAPAN OPENは1972年から開催されていて、第1回大会を除き海外勢が頂点に輝いてきたのだが、2012年、2014年に錦織圭が優勝を飾っている。近年、ようやく日本人選手が表彰台に上がる活躍を国内で観られるようになったわけだ。その錦織の世界レベルでの活躍により注目が集まり、昨年大会は史上最多となる85,286人の入場者を記録この大会は日本テニス協会(JTA)が主催している。また、フィギュアスケートのJAPAN OPENは日本スケート連盟(JSF)が主催しており、2006年以降は団体戦が採用されているようだが、日本人トップスケーターたちの滑りを目の当たりにできる舞台が用意されている。

このように、それらのスポーツを発展させるために存在している協会や連盟が、JAPAN OPENという国内最大級の国際大会を主催しているわけだが、前述したX-TRAIL JAMやTOYOTA BIG AIRは、それぞれ日本テレビ、北海道テレビが主催していた。また、冒頭で述べたAIR & STYLEだが、2014年にショーン・ホワイトが大会の主催権を買い取っている。

小誌2月号「OUR ERA ~日本スノーボードの現在地を探る~」と題したコラムでも触れているのだが、現在、世界中で開催されている国際大会を組織化したツアー・WORLD SNOWBOARD TOURを運営しているTTRの代表であるレト・ラム氏が、ツアーを組織するうえでの資金難に直面していることを明かしている。その理由のひとつとして、長野五輪から正式種目となったスノーボード競技の運営権はFISにあるため、国際オリンピック委員会(IOC)からFISへスノーボードに関する分配金が流れていると予測できるが、TTRにはそれがないということだ。詳細は割愛するが、詳しくは小誌2月号を読んでいただきたい

前述したJTAは国際テニス連盟(ITF)に、JSFは国際スケート連盟(ISU)にそれぞれ加盟している。そして、IOCの傘下にはITFとISUがある。だが、スノーボード界の中心である大会はTTRが運営しているにも関わらず、IOCの傘下にはFISがある。オリンピック出場とプロスノーボーダーとしての活動の両立が困難である選手の問題以外に、大会の運営にも影響を及ぼしているということなのだろうか。

オリンピック出場を夢見るライダーたちがFISの大会に流れ、スポンサーを失ったことにより資金源が底をついてしまい、2002年に解散となった国際スノーボード連盟(ISF)。設立当初から解散に至るまで、彼らが団体として掲げていたスローガンは「Snowboarding by Snowboarders for Snowboard(スノーボーダーによるスノーボードのためのスノーボーディング)

一般企業やショーンのような個の財力に頼ってしまっている現状ではあるが、やはりスノーボーダーの手によってスノーボードを守っていくしかないのかもしれない

しかし、それに向けての問題は山積みだ。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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