プロスノーボーダーとしての真の価値

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.21
By 野上大介

昨夜、スノーボーディング、スケートボーディング、サーフィン、それぞれのシーンで年間を通して活躍したベストライダーを表彰する授賞式「JAPAN ACTION SPORTS AWARDS 2015」が、東京・渋谷「WOMB」にて開催された。

これは、JAPAN ACTION SPORTS ASSOCIATION(JASA: 日本アクションスポーツ連盟)が主催するイベント。MVPライダーは、各ジャンルの競技団体や専門メディアを代表する者たちが選考委員となり、投票によるポイントを集計して選出される。このイベントは2年目を迎え、昨年はソチ五輪イヤーだったこともあり、スノーボードカテゴリーではスノーボーダー・オブ・ザ・イヤーに平野歩夢が輝き、スペシャルアワードには平岡卓、角野友基、竹内智香らオリンピアンが選ばれた。


JAPAN ACTION SPORTS AWARDS 2014
 

2年連続で選考委員、そして僭越ながらスノーボーダー・オブ・ザ・イヤーのプレゼンターという大役を仰せつかり参加。今年より女性部門が新たに設けられ、FIS世界選手権のスロープスタイル種目で優勝するなどの活躍が評価された鬼塚雅が受賞した。ソチ五輪以降の約1年間が選考対象となっていたわけだが、男性部門のスノーボーダー・オブ・ザ・イヤーの選定に、スノーボードはもちろん、アクションスポーツの未来や真価が問われるように感じていた。

体育文化が根強い日本において、エクストリームと称されるアクションスポーツは、“過激”な要素を持ち“危険”をはらんだスポーツという認識があるだけに、まだまだ浸透していない。それでもオリンピック競技であるスノーボードは、前出したライダーたちの活躍も後押しして一般社会に周知されているが、その大半は競技、もしくはレジャーとしての認知だろう。スノーボードに精通していない人がこれを聞いても、「そりゃそーでしょ」という回答でしかないはずだ。

しかし、スノーボードは本来、雪上でサーフィンのように自由なマニューバーを描きたいという想いから生まれ、スキーヤーに限定して規制されていた当時のゲレンデではなく、バックカントリーが発祥の地。雪山を自由に滑ることが醍醐味である。プロスノーボーダーたちは自らを最大限に活かすことができるフィールドを求めて未開の地を切り拓き、より自由に、よりクールなアクションで表現することを生業としている。これこそが、スノーボード界における原点であり本質。アクションスポーツが深く根づいている欧米では、彼らをサポートするブランドもそこに価値を見出しているからこそ多額の契約金を支払い、バックカントリーやストリートでのライディングに感化されたユーザーが商品を購入するという流れが確立している。

では、日本はどうか。その価値は、多数から理解を得ることが難しいのかもしれない。日本のゲレンデは諸外国と比較すると管理が徹底されているため規制が厳しい。もちろん、人命を守るための然るべき対応ではあるのだが。そのうえで、飽くなき探究心を有するフリースタイラーたちは加速度的にライディングを進化させ、ゲレンデではなくバックカントリーやストリートへと舞台を拡大させているため、その変化するスピードに観ている側が取り残されているのが現状だ。フィールドに対する理解が困難だからこそ、また、そこで繰り出されるアクションを観る目が養われていないためか、表現よりも優劣がつけやすい大会に対する執着が強いのだろう。
 

SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.21

そんな中、今年のスノーボーダー・オブ・ザ・イヤーには國母和宏が選出された。今シーズン、彼は国内外を通じて10誌以上の表紙を飾り、CAPITAが制作したムービー『STAY BAD ASS』ではトリを務めるなど、コンテストでのリザルト以上に大きな価値のある偉業を成し遂げた。これらは昨シーズンのライディングが表舞台に出た今季に評価された実績になるが、その前年にケガを負っていた彼は十分な活動ができていなかったため、確実に画を残すことを優先させた結果だった。これは以前に本人から聞いた話だが、國母にとっては“抑えた”滑りだったというのだから驚きだ。

その國母は今季、北海道を中心にフルスロットルで撮影に勤しんでいる。現在は海外でシューティング中のため授賞式には出席できなかったが、会場で流されたビデオレターではこのように語ってくれた。

「オリンピックが終わってから一般の人たちには、引退したとかコーチをやってるって言われてて、すごい面倒くさかったので(笑)、こういう賞をいただけて、少しでも(プロスノーボーダーとしての活動を)わかってもらえれば嬉しいですね。最近はバックカントリーでの遭難などがニュースになることが多いけど、日本のアクションスポーツがやっとそのレベルにまで達してきたんだと自分は思ってます。これからはその経験を活かして、アクションスポーツが日本に定着するよう、みんなケガをせずにこれからも攻め続けて、日本のアクションスポーツを発展させていきましょう」

この言葉にすべてが集約されている。國母の言葉から、スノーボードの真髄を感じてほしい。

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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