アマチュア再燃プロジェクト

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.23
Yuri Okubo © Tsutomu Endo
By 野上大介

【写真】
Yuri Okubo
location: TransAM JAPAN 2015 Vonzipper Stage, Tsugaike Kogen, Nagano

 

1990年代から2000年初頭あたりまで、アマチュアスノーボーダーたちはこぞってJSBA(日本スノーボード協会)が主催する大会に出場していた。今では考えられないかもしれないが、2000年に群馬・尾瀬戸倉で開催された関東地区大会では、一般男子のハーフパイプ種目だけでおよそ800人ものエントリーがあり、予予選で2日、予選・決勝で2日の計4日間を要したほど。世界中を見渡しても最大規模の大会だった。これほどまでに至った理由としては、第二次ベビーブーム世代が中心だったことや、プロへの憧れが今以上に強かったこと、そして、そのプロという土俵に上がるための構図がわかりやすかったこと、などが挙げられるだろう。

そして、全日本選手権などで優秀な成績を収めた選手にはJSBA公認のプロ資格が与えられ、更新する際も金銭以外は必要なかったため、プロスノーボーダーは年々増加。それと反比例するように、シーンは競技よりも、映像や写真で表現することを重視する流れへとパラダイムシフトしていった。個性を重視する人種が多いスノーボーダーたちは、周囲との差別化という意味でも、コンテストシーンから遠のいていったのかもしれない。とは言え、今はなき「TOYOTA BIG AIR」や「X-TRAIL JAM」などはエンターテインメントとして確立していたし、現在でもWINTER X GAMESなどの世界最高峰コンテストは若きコンペティターたちの憧れの舞台だ。しかし、完全招待制なので出場するまでのハードルが非常に高いため、オリンピックも含め、敷居高く存在している。

そんなシーンを見ながら上を目指すアマチュアの世界は、当然、同じ方向へと進んでいく。技術的な違いが大きいのかもしれないが、ライディングの主流はハーフパイプからストレートジャンプへと完全に移行し、JSBAの大会や草大会に出場するよりも、映像を撮るなど仲間たちと楽しむ傾向が強くなっていった。また、ライダーの口からも「スノーボードは勝敗を争うものじゃない」「競技じゃなくて“遊び”」という類の発言をよく耳にしていたようにも記憶している。雪がないと滑ることができないスノーボードは、スキルアップに時間がかかるもの。スノーボード中心の生活を送っているライダーたちは年々進化し続け、気がつけば、よほどセンスや環境に恵まれていないかぎり、一般スノーボーダーでは到底手が届かないレベルになってしまった。さらに、実力を高めるための近道でもあった大会が減少の一途をたどっている。言い換えれば“目標”を失ってしまったアマチュアたちは、ある程度のスキルを身につけた後、どのようにステップアップしていけばいいかわからなくなる……。そんな悩みを抱えているスノーボーダーも少なくないのでは?

どんなスポーツにも言えることだが、上手くなることが喜びであり、それはスノーボードも同じこと。上達を志すスノーボーダーにとって、培った実力を試す場は必要だろう。それらを踏まえ弊誌TRANSWORLD SNOWboarding JAPANでは、一般スノーボーダー対象のコンテスト「TransAM JAPAN(トランザムジャパン)」を昨シーズンより開催している。この、大会というよりも“お祭り”要素の強いトランザムは、ビッグキッカーでの高回転スピンや複雑なジブアイテムでのコンボトリックで争うのではなく、スノーボーダーたちの“クリエイティビティ”を重視した大会。難易度よりも創造力を活かすことができる大きすぎないアイテムを用意し、幅広いレベルのスノーボーダーを受け入れられるようにすることで、近年にはなかったアマチュアたちの目標であり楽しめる大会を目指している。ゲレンデに常設されている既存のパークを使用するのではなく、ゼロの状態からコンセプトに合ったコースを使用し、このイベントのためだけにオリジナルパークを造成するのだ。

今季も3戦開催することができたので、興味のある人はハイライト映像をご覧いただきたい。

TransAM JAPAN 2015

腕試しをしたい、仲間と楽しみたい、スポンサーを獲得したい、プロになりたい……。その目標は千差万別だろう。動機はどうであれ、一般スノーボーダーが主役の大会を来シーズンも盛り上げていきたい。アマチュアが盛り上がらなければ、スノーボード界の未来に光はささないのだから。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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