日本人ライダーを世界レベルへと押し上げた環境

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.28
現在、東京近郊に居を構える角野友基は、オフシーズンでも千葉KINGSでトレーニングを積む © IR Collection
By 野上大介

【写真】
Yuki Kadono

スロープスタイルとビッグエア種目で世界の頂点を極めた角野友基が、地元である兵庫・三木市からほど近い神戸KINGSで、幼少期よりストレートジャンプの実力を培ってきた話は有名だろう。小学生時代、定休日以外はほぼ毎日通っていたそうだ。

KINGSについて詳しく知らない人のために説明しておくと、雪がなくてもジャンプの練習ができる施設のこと。アプローチには特殊なナイロン素材を用いたブラシが敷き詰められており、そこに散水することで摩擦抵抗を減少させ、滑りやすい状態を作っている。また、ランディングにはエアマットが敷き詰められているので、雪山での着地と比較しても当然ながら安全だ。

さらに言えば、そのマットの設置方法にスキルアップの秘密が隠されている。雪山のキッカーと同様に斜度がつけられているので、着地時のボードの合わせ方を体得できるというわけ。また、アプローチやテイクオフ時は雪面のようにエッジを食い込ませることができないため、その動きはよりシビアとなり、細かなボードコントロール術を体得できるのだ。リアルのジャンプと近しい形状で思いきりトリックにトライでき、かつシビアな状況で反復練習が通年可能な環境は、今や全国各地に点在している。スロープスタイルがオリンピック種目に採用されたことも後押しし、日本のジャンプシーンのレベルを一気に引き上げた。大人の練習にも適していることはもちろん、第二の角野を目指すキッズスノーボーダーたちが多く練習に訪れているのだ。

そのジャンプ施設のひとつである千葉KINGSで切磋琢磨している少年がいる。荻原大翔(おぎわら・ひろと)、9歳。同施設の代表であり、1998年に日本人として初めてAIR & STYLEに招待され、X-TRAIL JAMやTOYOTA BIG AIRでの活躍など、日本のビッグエアシーンを牽引してきた平岡暁史が手塩にかけており、父親と二人三脚で練習に明け暮れているそうだ。

と、ご託を並べる前に映像をご覧いただきたい。この時期、グローバルレベルで注目されているキッズライダーたちの映像が世界中の専門ウェブサイトで配信されているのだが、年齢差を加味したうえでこれらを観るかぎり、見劣りしていないどころか、ジャンプのスキルに関しては勝っていると言える。

その証拠に、世界最大手のスノーボード専門メディアである兄弟誌・米トランスワールドの編集長にこの動画を推薦したところ、喜んで掲出してくれたからだ。


荻原大翔(9歳/日本)

 

ベニー・フリドビョルンソン(10歳/アイスランド)

 

 

ジャック・コイン(13歳/アメリカ)

父親の崇之さんは、アメリカ・オレゴン州マウントフッドで毎夏開催されているサマーキャンプに参加するほどのスノーボーダーだったそうで、平岡にコーチングを受けた経験を持つ。平岡も含め筆者と同世代にあたる崇之さんもまた、スノーボードが爆発的に広まった90年代初頭から雪上を駆けていたスノーボーダーなのだろう。親子ともども平岡にお世話になっている現状についての喜びを語っていただいた。

このスポーツの本質を理解しているリアルスノーボーダーのジュニアが続々と誕生し、世界への扉をこじ開けたベテランライダーが育成の立場へとまわり、グローバル水準よりも高い練習環境が整ってきた現在の日本スノーボード界。競技においては、これまで以上に世界で活躍する日本人スノーボーダーが多く輩出されていくことだろう。

前出の角野を含め、平野歩夢や平岡卓らが世界のトップに君臨しているわけだが、その予備軍が日本には多く控えている。こういった層の厚さも含め、もっとも日本人が強い競技がスノーボードであることを裏づけているのだ。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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