ジェイミー・リンとブライアン・イグチに学ぶ

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.29
By 野上大介

現在のフリースタイル・スノーボーディングの礎を築き上げた、90年代初頭に巻き起こったニュースクール・ムーブメントを牽引したふたりであり、筆者と同い年にあたるレジェンドスノーボーダーたち。ジェイミー・リンとブライアン・イグチだ。今年4月にアラスカで撮影された彼らの最新映像が公開されているので、まずはこちらをチェックしていただきたい。

 

 

日進月歩だった当時のスノーボードに、異なるバックグラウンドを持った両名は多大なる影響を与えた。ワシントン州シアトル出身のジェイミーは、かのクレイグ・ケリーも滑り込んだマウントベイカーがホームマウンテン。オウンリスクながらバックカントリーへのアクセスが許されているベイカーはフリーライディングの聖地として、数々の名ライダーを輩出してきたわけだが、若き頃からその地で滑り込んでいたためベーススキルが高かったのだろう。

さらに、彼独自の感性がスノーボードを刺激した。ニルヴァーナやパール・ジャムに代表されるグランジロック発祥の地としても知られるシアトルは、アートやカフェなどあらゆる一流文化を育んできたのだが、そこで生まれ育ったジェイミーは芸術や音楽にも造詣が深かった。ポテンシャルが高かった彼のライディングスキルに豊かな才能が掛け合わさったことで、技術を追求するスポーツとしての側面が強かったスノーボードに“スタイル”というスパイスを融合させたのだ。メソッドエアにトゥイークを加え、ノーグラブのままガニ股でスピンするそのスタイルは瞬く間に世界中から支持され、多くのスノーボーダーが彼の虜になった。紛れもなく、筆者もそのひとりである。

Jamie Lynn, 1994 © Trevor Graves

 

一方のイグチは、ニュースクールムーブメントが巻き起こった大きな要因であるスケートボードに精通していた。ジェイミーと時を同じくして、スティーブ・キャバレロやクリスチャン・ホソイ、トニー・ホークといったスケートボーダーから多大なる影響を受けていた彼は、スケートのトリックをどのように雪上にトランスレートするかを試行錯誤する日々を過ごす。結果、自身のバックグラウンドであるサーフィンを含めた3Sが上手く融合し、当時はゲレンデ内だったがトリックを取り入れながら流れるように山を滑り下りるフリーライディングが確立。するとイグチは、カリフォルニア州ビッグベアを拠点としてフリースタイルライディングに没頭していたのだが、ワイオミング州ジャクソンホールへ移住することに。スケートボードの延長線上として活動していた彼だったが、フリーライディングを追究する中で多くのことを山から学んだ。先輩にあたるクレイグにも影響され、よりよい雪を求め、あらゆるヒットポイントを開拓していくうちに、ジャクソンホールに辿り着いたそうだ。

 

Bryan Iguchi, 1993 © Trevor Graves

 

現在、世界中のトップライダーたちは、手つかずの雪山でスタイル溢れるトリックを織り交ぜながら滑降するマウンテンフリースタイルを追究している。イグチは以前のインタビューで、このように語ってくれていた。

「まずテレインパークでトリックを習得して、やがてそこから山の知識を得ていき、それをナチュラルテレインに合わせていくことが、マウンテンフリースタイルのゴールだと思っている。ただ、僕はまだその入り口に立っているにすぎないんだ」(2014年3月に取材)

今なお雪上を駆け抜けながら己と向き合い続けている、レジェンドと称されるアラフォーライダーたち。パークに固執してトリックを磨き続けている若きフリースタイラー、はたまた、パウダーボードに跨がってターンに執着しているベテランスノーボーダー。冒頭で紹介した映像で観ることができるジェイミーやイグチの滑りは、あらゆる世代に向けてのアンチテーゼのように感じてならない。

 

 

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 野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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