だからスノーボードは面白い

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.31
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.31 © Dean Blotto Gray
By 野上大介

【画像】Nicolas Müller

大学1年の冬からスノーボードを始めた筆者なのだが、卒業後、就職ではなく「上達」を目指した。プロを目指すというよりも、こう表現したほうが適切な心境だったように記憶している。スノーボードを4年間経験したことで急速に膨らんだ可能性を、その時点で止めることができなかったからだ。

ショップに所属したり先輩スノーボーダーがいたわけではなかったので、友人たちと雑誌などの情報を足がかりに動きまくった4年間。2年目の冬に、当時メッカだった長野・北志賀エリアにコモり、初めてプロスノーボーダーの滑りを目の当たりにした。そのシーズンを終えた夏にはニュージーランドを訪れ、外国人スノーボーダーたちとのセッションを初体験。3年目には某ゲレンデからアクセスできるバックカントリーを経験し、初めて大自然と戯れた。4年目は、日本で初めてハーフパイプ造成用の重機(パイプドラゴン)が導入されたことで話題を集めていた豪雪地帯に位置するゲレンデをベースとし、パウダーを楽しみながら、毎日のようにハーフパイプでハイクアップを繰り返す日々。当時のプロやトップアマなどが多く集まっていたレベルの高い環境に身を置いたことで、初めて本気で「上手くなる」と心に誓った。冒頭で述べた可能性を広げたくて、いてもたってもいられなくなったのだ。

どんなスポーツでもそうだろう。上達することで広がっていく可能性を体感し、さらなる高みを求めていくもの。スノーボードの場合は、その目指すべき高みが多く存在し、かつ、他スポーツよりも大きな可能性を秘めているように感じてならない。

パークシーンではアイテムが豊富に存在し、遊び方となるトリックの種類も数えきれない。スキーのように大きくも飛べるし、スケートボードのようなトリッキーな動きもできる。とは言え、スピンの回転数やR系アイテムでの高さなど、スキルや経験に応じた限界点は必ずあるだろう。陸上のタイムだってゴルフのスコアだって、同様に伸びなくなることがあるはずだ。

ただ一点だけ違うこと。それが、前回のコラム「スノーボーダーとしての生き方を考える」でもテーマとして挙げた“スタイル”。ここではトリックの“カタチ”という前提で話を進めさせてもらうが、多く回すこと、高く飛ぶこと、複雑に擦ること……これらに勝るほどの価値がスタイルには秘められている。陸上やゴルフで記録を伸ばすための正しいフォームはあるだろうが、ここでいうスタイルとは異なる。いくらカッコいいフォームでも、タイムやスコアを超越するものにはなり得ないからだ。

さらに、フリーライディングへと話題を転じたい。トリックを地形に合わせて応用しながら、ラインの取り方次第で可能性がどんどん広がっていき、バックカントリーにまで話を発展させれば、それは無限大となる。だからこそ、トップライダーたちは究極を求めて、その地を目指すのだ。

スケートボードやサーフィンを含めた横乗りスポーツ特有の価値観かもしれないが、スノーボードの場合は足が固定されていて、さらにフィールドに限りがなく、自由度が群を抜いて高いため、よりスタイルが強調されやすいのかもしれない。それゆえに、コンペティションが確立されづらいとも言い換えられる。スノーボードを競技スポーツとして捉えるなら、このことは決してポジティブではないが、一般スノーボーダーに置き換えて考えたら、このうえない楽しいスポーツだと思わないか。これが、“フリースタイル”と称される原点。

型にはまる必要がないから……いや、型を破ったほうが賞賛されるのだ。だからスノーボードは面白い。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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