スノーボードと重なって映るスケートボードの五輪への道のり

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.34
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.34 © yoshitoyanagida.com
By 野上大介

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昨年のソチ五輪では、スロープスタイルのコース設計やジャッジングなど、あらゆる問題点が浮き彫りになった

さる6月22日、2020年に開催される東京五輪で開催都市が提案できる追加種目の一次選考が行われた。今月8日までに26の競技団体から応募があり、もともと五輪種目だった野球・ソフトボールなどの競技と肩を並べて、スケートボードとサーフィンが通過したのだ。スケートボードがオリンピック種目になる可能性が高いという噂は以前から耳にしていたので動向が気になっていたのだが、通過した8つの競技団体の名前を見ても載っていない。「ローラースポーツ」という団体が気になり調べたところ、そこにスケートボードが含まれているという事実を初めて知った。

 

【ローラースポーツとは】

スノーボーダーであれば周知のとおり、FIS(国際スキー連盟)がオリンピックにおけるスノーボード種目をハンドリングしている。詳細は割愛させていただくが(詳しく知りたい方は当コラムVol.13「スキー連盟に属するスノーボード」Vol.14「スキー連盟に相容れないフリースタイル気質」を参照してください)、1998年の長野五輪でスノーボードが正式種目として採用されるにあたり、それまでグローバルの大会を運営していたISF(国際スノーボード連盟。現在は解散)を出し抜き、IOC(国際オリンピック委員会)がFISに運営権を委任したことから始まっている。これによりあらゆる捻れが生じ、オリンピック種目に名を連ねてから5大会を終えた今もなお、あらゆる問題点を抱えている状況だ。

これらを鑑みると、ローラースポーツの一種目としてオリンピック競技の道を歩み出そうとしているスケートボードが気になってきた。専門外なので知識が乏しいため、自分なりにいろいろと調べてみることに。すると、スノーボードが歩んできた道のりと重なる部分が垣間見えてきたのだ。

スケートボードには、80ヶ国以上が加盟しているISF(国際スケートボード連盟)という運営団体が存在する。この団体はスケートボーディングをスポーツとして組織・管理するために2004年に設立され、文化的な価値を踏襲したうえで業界を発展させていくことを目的としている。そのISFは、ストリート・スケートボードのプロリーグであるSLS(Street League Skateboarding)と戦略的な提携を結び、大会を運営していくにあたり最適なガイドラインを作成するなど、IOCからスケートボードの正式団体として認められるよう活動しているようだ。SLSは競技としてのスケートボードに対するノウハウを持ち、ISFは世界各国に代表者を抱えるグローバル組織として機能していることから、双方の力を結集すればスケートボードが持つ文化的価値やクリエイティビティを損なうことなく、オリンピックというフォーマットに則ることができると考えたからだろう。

前述したスノーボードのケースを考えてみれば、オリンピックにおける運営権をFISが手にした理由のひとつとして、IOCが承認する国際競技団体だったからと言える。スケートボードを自分たちのスポーツと主張しているFIRS(国際ローラースポーツ連盟)はIOCが承認する国際競技団体であり、ISF(スケートボード)は承認されていない。スノーボードのケースと異なる点としては、FISはスノーボードのオリンピック種目化に反対していたにも関わらず、若者からの絶大なる支持を得ていたスノーボードを種目として欲していたIOCがその運営権をFISに委ねると、彼らは手のひらを返したかのようにISF(スノーボード)の大会を転戦していたスノーボーダーたちを囲い込みにかかった。FISの大会に出場しないかぎり、オリンピック出場権を与えないとしたわけだ。これに反発したスノーボード界の大御所、テリエ・ハーカンセンが長野五輪をボイコットした話は有名だろう。

世界最高峰のスポーツ大会を目指すのであれば、その業界を牽引している団体に運営権を委ねるべきことは言うまでもないはず。だが、IOCはISF(スノーボード)ではなくFISを選んだわけだ。その裏に何があるのかは知らないが、もし、スケートボードがオリンピック種目として採用された場合、果たしてどのような未来が待ち受けているのだろうか。

大会組織委員会は、8月にそれぞれの競技団体からヒアリングを行い、9月末までにIOCに提案する追加種目を最終決定する。それを受けてIOCは、来年8月のリオデジャネイロ五輪の直前に行われる総会で追加の可否を決するという流れだ。

JRSF(日本ローラースポーツ連盟)のFacebookをのぞいてみると、今年2月にFIRSが作成した東京五輪に向けての提案書がリンクされていた。そこには第1案としてアーバンスピード、ローラーマラソン、ローラークロスという種目が挙げられている。公道を使ったスピード競技のようだ。スノーボードに置き換えてみれば、アルペンレースやスノーボードクロスに当たるのだろう。第2案としてスケートボードとインラインスケートといった、いわゆるフリースタイル種目が名を連ねる。ローラースケーターを中心に運営されているFIRSのことやローラースケート(スポーツ)の文化を知らないため中途半端なことは言えないが、スケートボードのフリースタイル競技を理解・審査することは難しいのではないかと推測できる。

テクニックばかりがフォーカスされ、クリエイティビティがおざなりにされるジャッジングをフリースタイラーは望んでいない。さらには、ボードスポーツの魅力や価値を根底から覆すことになりかねない。オリンピックの種目化に反対しているわけではないが、スノーボードが歩んできた道のりを参考にして、ライダーたちが望むフォーマットに近づけてほしい。どんな競技にも言えることでありオリンピックに限った話ではないが、スポーツの主役は選手たちなのだから。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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