ブームと文化の狭間で

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.36
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.36
By 野上大介

【画像】角野友基がスロープスタイル種目で初優勝を飾ったUS OPENは、30年以上の歴史を誇る伝統の一戦。スノーボードが文化として定着しているからこそ、これほどまでのオーディエンスが集まる

今週、日本中の話題をさらったのは、サッカー女子ワールドカップで準優勝を飾ったなでしこジャパン。4年前、これまで一度も勝ったことのなかったアメリカを破って同大会で優勝したことにより、女子サッカーの存在価値が一気に高まったことは、いまだ筆者の脳裏に焼きついている。今大会では悲願の2連覇をかけていたわけだが、決勝戦前日の記者会見でキャプテンの宮間あや選手は次のように語っていた。

「この大会で結果を残すことで、ブームではなく文化になっていくスタートが切れる」

一気に高まった女子サッカーへの関心が少しずつ薄れていく過程を、現場で強く感じてきた想いが垣間見られる発言だ。

このことは、スノーボードにもそのまま置き換えることができるのではないだろうか。昨年のソチ五輪では金メダルこそなかったものの、男子ハーフパイプ種目で平野歩夢が銀、平岡卓が銅メダルを獲得すると、日本の新たなるお家芸とばかりに日本中のメディアが祭り上げ、急激に注目度が高まったことは記憶に新しい。これにより、スキー連盟がスノーボード種目を運営していることで生じた問題点や、一般的には「スノーボード=オリンピック種目」という見方が強いわけだが、平野や平岡のコーチ(実際には職業としてのコーチではない)として國母和宏の活動もフォーカスされ、プロスノーボーダーとはバックカントリーを舞台として映像を残すことが生業、といった核心にまで話は及んだ。

そして今年、オリンピック以外では注目されることがなかったスノーボードだが、バックカントリーという言葉とともに危険性が広まった。これまでにもバックカントリーでの事故は絶えなかったわけだが、インバウンド効果による外国人観光客の増加に伴ってルールを守らないスノーボーダーが目に余ったことや、前年の注目度が関心度を引き上げたことも一因なのだろう。

また、オリンピック種目として注目されていることを前提に考えると、もっとも関心度が低くなるシーズンだったにも関わらず、民放各局でスノーボード競技が多く報じられた。もちろんライダーたちの活躍が大きかった(詳しくは当コラムのバックナンバー「世界の頂に君臨する日本のヤングガンたち」参照)わけだが、TBSはソチ五輪イヤーから2年連続でWINTER X GAMESを放映し、テレビ東京は1月に開催されたFIS世界選手権を放送するといったように、競技としてのスノーボードは少しずつお茶の間に浸透し始めたのだ。

とは言え、スポーツニュースの一部として取り上げられ続けてたとしても、アスリートが招かれるようなバラエティ番組に呼ばれ続けたとしても、なでしこジャパンが感じている以上にブームは風化していくのかもしれない。その理由として、前出の平野や平岡、角野友基、鬼塚雅といったトップライダーたちが活躍する舞台が国内に存在しないことが大きいと考える。これについては以前のコラム「世界のトップ選手がいる日本から国際大会が減り続ける矛盾」でも綴っているように、やはりスノーボード界とIOC(国際オリンピック委員会)やFIS(国際スキー連盟)との間に生じている“ねじれ”が問題だ。なでしこジャパンの選手たちは、海外クラブに籍を置く6名を除き、日本女子サッカーリーグに参加するクラブに所属している。宮間選手や川澄奈穂美選手といったスター選手のプレーを日本国内で観戦できるにも関わらず、冒頭で述べたような関心度の薄れを感じている現状。もちろん、国内でトップライダーが活躍できる場を用意すれば事が足りる話ではないが、4年に一度の祭典で注目を集めるだけでは、ブームから逸脱することは難しいだろう。

テレビ局が主催していたX-TRAIL JAMやTOYOTA BIG AIRといった国際大会はなくなったわけだが、来年2月には北海道・札幌ばんけいでワールドカップのハーフパイプ種目が開催されることが決まっている。日本でのワールドカップ開催は7年ぶりとなるわけだ。各国の方針によって異なるのだが、FIS主催のワールドカップを含めた大会がライダーたちから敬遠されている状況を踏まえると、その舞台にX GAMESやUS OPENのような世界最高峰の大会としてふさわしい役者が揃うのかどうかは……。これには疑問符を付けざるを得ない。

だが、ここで何かを仕掛けないかぎり、今後のビジョンが見えてこないような気がしてならない。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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