スノーボーダーの夏

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.37
John Jackson © Scott Serfas/Red Bull Content Pool
By 野上大介

スノーボード業界外の人と接していると「夏は何をやられているんですか?」という質問をよく受ける。答えとしては、先日発刊されたギアカタログ誌を制作していることに触れたり、南半球には雪があること、北米では残雪を活かしたサマーキャンプが開催されていること、国内にはオフシーズンでも滑走できる施設があること、などに言及する。

一般的な見解としては、スノーボードができる時期は年末から3月下旬くらいまでという認識だろうから、一年のうち多くても3ヶ月程度楽しめるレジャースポーツとして捉えられているのだと思う。このことは一般論として受け止めているが、僕たちスノーボーダーの感覚としては、富士山の麓に位置するスノータウンイエティがオープンする10月中旬くらいからGWまでの6ヶ月余りが国内におけるシーズンとなるだろう。

もちろん、前述したように海を渡れば雪があり、数は減ってしまったものの室内ゲレンデがあるので、一年中オンスノーで滑ることが可能だ。また、雪を必要としない屋外のジャンプ練習施設は増え続けている。だが、現在営業している室内ゲレンデのすべては、2002年まで営業していたコース長が500m近くを誇った巨大施設・ザウスと比べてしまえば全長・幅ともに狭く、ターンをメインとして楽しんでいる層からすると現存する室内ゲレンデでは物足りなく感じるのだろう。また、屋外のジャンプ練習施設は雪ではなくサマースノーと呼ばれる人工芝を滑走するのだが、少しの滑走スペースは用意されているものの、その感覚はもちろん雪とは異なり、はたまたジャンプ専用のスペースがほとんどなので、室内ゲレンデ以上にターゲットは狭い。さらに、オフシーズンに海を渡る貪欲なスノーボーダーは以前に比べると激減している。これは若年層の人口減少も理由だろうが、その世代における海外離れも一因として挙げられるだろう。

だが、オフシーズンでも滑走意欲が高いスノーボーダーをセグメントすると、トリックの習得を願う中級以上の層がメインターゲットになる。そのため、現在のような形で存続しているわけだが、オリンピアンを輩出したことで人気を博した室内ゲレンデ・アクロス重信が閉館を余儀なくされた事実も踏まえ、各地に点在していた多くのインドア施設が廃業していく過程を見てきた。それに取って代わるようにして屋外のジャンプ練習施設は増加の一途を辿っているわけだが、爆発的に需要が増えているとは決して感じない。日本スノーボード界にメダリストが誕生したことで、キッズやユース世代が増えていることは事実だし、経営の観点から見たときにランニングコストも抑えられているのかもしれないが、ニーズをマーケティングしたうえで供給過多にならないことを願っている。

話が脱線してしまったが、前述したようにオフシーズンでも滑走意欲の高い層はトリック習得を望んでいることから、比較的若いスノーボーダーが多いと言えるだろう。筆者も20代の頃は今はなきカムイ竜ヶ崎に足繁く通い、ハーフパイプを滑走していた。晩年の同施設はキッカーのイメージが強かっただろうが、当時は人工ブラシで形作られたパイプが人気だった。物理的な問題もあり、バーチカル(パイプの垂直に切り立った飛び出し口付近)は雪がそぎ落とされてしまいブラシがむき出しになっていることが多く、現在のジャンプ練習施設のように雪上ではごまかせてもブラシ上ではできないシビアなテイクオフを身につけることができた。

このように、フリースタイルに必要な技術向上が期待できる施設であることに間違いはないが、先に述べたターンを中心に取り組んでいる初級レベルのスノーボーダーではなく、技術的に成熟しているベテランを含めたフリーライディングを中心に活動している層は、オフシーズンならではのライフスタイルを有しているケースが多い。スケートボードやサーフィンに興ずるスノーボーダーは多いのだが、以外にも登山や自転車などもそうだろう。プロスノーボーダーたちを見ていても、コンテストを転戦していた若かりし頃はオフシーズンでも雪を求めてトリックの反復練習に勤しんでいたが、年齢を重ねてフリーライディング志向に切り替わると、残雪よりもいい波やボウルを求めるようになる。一般スノーボーダーに置き換えたとしても近しいことが言えるはずだ。

一般的にはトリックに磨きをかけることが技術力を高めることに通じるように聞こえるが、そうは断言できない。スノーボーディングにおけるすべての動きはターンの延長線上にあるのだから、本来スキルアップを求めるのであれば広大な雪山で滑り込む必要があるからだ。また、スケートボードやサーフィンから得られるボディコントロール術やスタイルに繋がるフィーリングだってある。

このように、スノーボーダーたちの夏の過ごし方は千差万別で構わない。各々の価値観や目的意識を持ってオフシーズンを楽しんでほしい。なぜなら、他スポーツと比べたときに決定的な違いがあるから。それは、オフトレ施設を滑ろうが波に乗ろうが、来たる冬に向けてモチベーションを上げられること。当然、スノーボーダーにとって天然雪は恋しいものだ。シーズンインのときにブランクを感じる人は多いだろうが、それに勝るだけの「滑りたい」という欲求が高まっているに違いない。通年楽しむことが難しい遊びでありスポーツだが、これをポジティブに捉えるかネガティブに考えるか───それはあなた次第だ。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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