3S(Snow/Skate/Surf)と称されるボードスポーツの原点回帰

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.39
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.39
By 野上大介

スノーボードはもちろん、スケートボードやサーフィンの特徴であり魅力として、型にはまらない自由な動きが是とされることが挙げられるだろう。これら3S(スリーエス)と呼ばれるボードスポーツが互いに密接な関係にあることは周知されていると思うが、本コラムでは改めてそれぞれのバックグラウンドに迫り、これらの関係性について掘り下げていきたい。

世界中に海があり、地球には風が吹き、月などの引力により潮の満ち引きが起こって波が発生することから、それに乗ろうとすることは必然だったに違いない。起源は定かではないが、サーフィンが最古のボードスポーツである。そんなサーファーたちが波のないときの遊びとしてスケートボードを取り入れ、サーフライクな動きを求めることでトラックやウィールなどが進化していったのだろう。

スノーボードに関してもルーツはサーフィンにある。詳しくは当コラムVol.2「スノーボードは、いつどこで産まれたのか」をご一読いただきたいが、雪上でサーフィンを再現するために世界同時多発的に開発が進んでいった。その後、サーフィンやスキーよりもスケートボードからの影響を大きく受けることによりフリースタイル・スノーボーディングの礎が確立し、現在に至るわけだ。

このことからもわかっていただけると思うが冒頭で述べているように、それぞれの本質は何も変わらない。楽しむことを目的とした遊びだったからこそ、クールなアクションが求められた。しかし、それぞれのボードスポーツが進化していく過程において、フィールドの違いやボードの性質などが大きく作用し、各々が独立した形で成長を辿っていくことになる。

あくまでアクションの話であることを前提にスノーボードの長所を考えてみると、両足がボードに固定されているため高く大きく飛ぶことが可能であり、スケートボードに通じるストリートを含めたジビングの動きにおいても可能性が大きい。また、ボードスポーツの中でもっとも導入が易しいため、参加人口が多いことも挙げられる。

このことをサーフィンやスケートボードに置き換えてみると、サーフィンは一期一会の波に同調させてマニューバーを描くことがベースとなるため、波の大きさやパワー、崩れ方などが毎回異なる状況でボード上に立つためのテイクオフを習得しなければならない。スケートボードに関しては、ウィールが付いた80cm前後のボード上に不安定な状態で跨がり、フリースタイルを楽しみたいのであれば最初に訪れる難関がオーリー。この難しさに関しては言わずもがなかと思うので割愛させていただくが、サーファーやスケーターになるためのハードルがスノーボードに比べると高いのだ。

スノーボードは参加人口が多いためレジャーとしても成立していることから、サーファーやスケーターから敬遠されている時代があったことは事実である。このことは現在でも否めないかもしれないが、誤解を恐れずに言えば“舐められていた”ような気がする。特に90年代初頭はそのような傾向が強く感じられ、その直後にスノーボードは爆発的な流行を生み出して「やるスポーツ」として広がっていったわけだが、サーフィンやスケートボードはライフスタイルやファッションと近しい関係にあるのだが技術的に難しいこともあり、彼らの服装やたたずまいを含めたルックスだけを「マネする」ことで広がりを見せた時期もあった。丘サーファーやポーザーという言葉がそのような人々を指すのだが、これに該当する人間はブームがされば当然いなくなるため、参加人口はスノーボードに比べると極端に少ない。もちろん、スノーボードがオリンピック種目であることも人口差を生み出した一因だろう。

しかし、先に述べた思考はあくまで一般層の話であり、プロライダーたちは違っていたのかもしれない。その証拠として、スノーボードの長所をそれぞれのスポーツに取り入れる傾向は以前から見られていた。サーフィンのアクションにエアリアルが取り入れられたこと、2004年のX GAMESからスケートボードにビッグエア種目が採用されたことなどは、スノーボードからの影響を受けてのことだろう。もちろん、スノーボードはサーフィンとスケートボードから作り出されたものだが、現在では融合することで進化の一途を辿っているようにも感じる。

近年は日本を中心にボウル文化が普及し始め、スケートライクな動きを体現できることからスケーターやサーファーからも注目されている。さらに、バックカントリーを含めたパウダーライディングがブームの兆しを見せていることから、スノーサーフィンを求めたサーファーたちが雪山に増えていることは間違いない。自ら木を削って作ることができる雪板も話題を集めていて、これはスノーボーダーだけでなくサーファーやスケーターたちも遊べるはずだ。

諸外国と比べると少ないのかもしれないが、シーズンスポーツのため雪がなくなるとサーフィンやスケートボードを楽しむスノーボーダーは多い。その反対に、サーファーやスケーターたちが雪山を楽しむ文化が浸透すれば、新たなる道が開けていくのかもしれない。さらに言えば、今以上にスノーボーダーがサーフィンやスケートボードを積極的に取り組むことで、各々のライディングスタイルが磨かれるだけでなく、人口が多いことからアクションスポーツ界は間違いなく活性化していく。

サーフィンとスケートボードは2020年に開催される東京五輪において、開催都市が追加提案できる種目の第1次選考に通過している。もちろん五輪種目になれば参加人口は増えるだろう。だが、その結果に頼るばかりではなく、これからの時代は3Sと称されるボードスポーツそれぞれの垣根を越えた取り組みが重要になってくるのだ。先にも述べたように、それぞれの本質は何も変わらないのだから。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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