あなたの可能性を広げる、来たる冬に向けた“気づき”

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.40
Nik Baden © Adam Moran
By 野上大介

東京では8日連続の猛暑日となり、これまでの記録を塗り替えるほど暑かったわけだが、それも明日以降はひと段落するようで、ここからは冬に向けて四季の折り返しということになる。そこで、真夏にも関わらず本コラムを読んでいただいているリアルスノーボーダーのみなさんとともに、スノーボードシーンの現況を踏まえながら、一般スノーボーダーの実態について考察していきたいと思う。

本コラムのVol.1でも自己紹介を兼ねて綴らせていただいたのだが、92-93シーズンにスノーボードと出会った筆者は、FALL LINE FILMS作『ROADKILL』(93年)や『R.P.M.』(94年)をビデオテープが擦り切れるほど観て、完全に虜となった。これらの映像に興味のある方はVol.1「スノーボーディングの文化価値とは?」の記事内に埋め込んであるので、そちらで観ていただきたい。ゲレンデ内のギャップやパークでのスケートライクなライディング、ネルシャツやサングラスを身に纏ったストリート色全開の雪上ファッション、パンクロックの調子に合わせたロードトリップを題材とした演出など、理屈抜きにすべてがカッコよかった。当時を知る読者であれば共感してもらえるに違いない。若い世代のスノーボーダーにはオヤジの戯言に聞こえるかもしれないが、一度は必ず観てほしい。この原稿を執筆しながら改めて2作品を観たのだが、現在のライディングレベルとは雲泥の差があれど、いまだ色あせることなく映った。当時輸入されたニュースクールムーブメントに多くの若者が魅せられ、日本国内にスノーボードカルチャーが広まったキッカケのひとつだった。

あれから20年あまりが経過した現在、ライディング・プロダクト・フィールドなど、すべてが劇的な進化を遂げるとともに多様化。トップライダーは前人未踏のバックカントリーを求め続け、ジャンプのスケールが巨大化したことでトリックは激化し、オリンピック種目であるがゆえにそれをさらに助長している。対して、レジャー産業のいちカテゴリーを築き上げたことにより、カルチャーとして広まったスノーボードの価値観は薄まっていき、進化しすぎたライディングに感情移入できなくなったスノーボーダーがシーンに溢れた。

このような現状を踏まえ、何が大切なのかを俯瞰で見ながらシンプルに考えてみると、自らがスノーボードを始めた頃に得た感覚───単純に「カッコいい」ということなんだと気づかされた。ファッションやフィーリングもそうなのだが、そのカッコよさの本質を体現するためには、遊びではあるがスポーツとしての側面が強い以上、やはり滑走技術が求められる。フリースタイルという言葉が意味する「自由」がスノーボードの魅力だからこそ、それを表現するためには基礎が絶対に必要だ。雪山に“コモる”という文化が浸透していた時代、その自由は滑走日数と引き替えに手に入れることができた。しかし現在は、当時と比べたらシーンの進化に比例して、ギアの品質も格段に向上している。段階さえしっかりと踏んでいけば、当時よりもスピーディに上達できる環境が整っているのだ。社会人スノーボーダーであれば、限られた滑走日数の中でこれらを得るためにも、決して飛び級はしないでほしい。カービングができていないのにキッカーでスピンするのは自由だが、朝イチのグルーミングバーンでフリーライディングする気持ちよさを決して忘れないでほしい。その感覚がわからないという人は、今一度自身を見つめ直す必要があるかもしれない。

先述のビデオを観てもらえればわかると思うが、パークで滑るだけがフリースタイルじゃない。パークが少なかったこともあるが、当時はゲレンデ内の起伏を求め、縦横無尽に駆け巡っていたものだ。地形は昔と変わらずに存在しているが、飛べる環境を人工的に提供してきたことでフリーライディングが軽視され、スノーボーダーとしての基礎力が下がってしまった現況を作り出したとも言い換えられるのではないだろうか。トリックのみに執着してしまうと限界があり、基礎力がなければ発展も望めない。カービングの延長線上にトリックがあり、パウダーターンがある。いわゆる“板に乗れている”滑りを身につけることで自由は広がっていくのだ。それを手に入れることができれば、トリック、地形遊び、パウダー、バックカントリー……など、無限大の楽しみが待っているのだから。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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