マルセル・ヒルシャーのオフシーズン

アルペンスキー界の絶対王者、マルセル・ヒルシャーは夏のオフシーズンをどう過ごしているのだろうか?
スキー以外にヒルシャーが情熱を注ぐ対象のひとつ、ダートバイク © Philip Platzer/Red Bull Content Pool
By Henner Thies

オーストリア出身のアルペンスキー王者、マルセル・ヒルシャーは夏休みを迎える直前に「休暇が終われば、再びトレーニングに集中するさ!」と語っていた。その言葉に偽りはないのだが、その実情は我々が予想するようなトレーニング三昧の日々とはまったく異なるようだ。ヒルシャーがRedBull.comへの独占インタビューで語ってくれたところによると、彼にとってのオフシーズン活動は、少なくとも2015/16シーズンで前人未到の5連覇を目指したトレーニングだけがすべてではないようだ。

オフシーズンにはモータースポーツを楽しむヒルシャー © Sandro Zangrando/Red Bull Content Pool

マルセル、つい先日はご家族と共にオランダで休暇を過ごしていたそうですね。オランダではどのように過ごされましたか?

アムステルダムやデン・ハーグなどの街の観光も楽しかったけれど、この旅の一番のハイライトは海岸沿いにある叔母の家での滞在だった。叔母の家には少年時代に何度も訪れたことがあって、その頃の思い出が久々に蘇ったね。また、この家からは北海を一望することができるんだけど、今回の滞在中には夏の嵐を体験した。嵐で荒れた海の表情はとても印象的だったよ。

すでにトレーニングに戻られていると聞きましたが、現在はどのようなトレーニング・プログラムをこなしているのでしょう? また、シーズン開幕が近づくにつれてトレーニングの内容はどのように変化していくのでしょうか?

昨シーズンが閉幕して以降しばらくは単純に身体を動かすことだけが目的だったけど、今はフォーカスが移行していて、筋力を最大限に増加させることがトレーニングの目的になっているよ。僕は今のこの時期を「泥だらけの豚になる期間」と呼んでいるんだけど ― つまり、自分自身を限界まで追い込む時期ってことさ。シーズン前の準備では今が一番タフな時期だけど、やはり一番重要なトレーニングのひとつではあるからね。

僕は今のこの時期を「泥だらけの豚になる期間」と呼んでいる

正式なレーシングライセンスを取得して、サーキットで過ごす時間もますます増えているようですね。モータースポーツでは具体的に何を学んでいるのでしょう?

レーシングライセンスを取得して一番良かったのは、以前にも増してレースカーをドライブできる機会が増えたことだね。正しい走行ラインのトレースや、ブレーキを踏むタイミングなど、ラップタイムを削るためには様々なテクニックを積み重ねなければならない。そういう意味で、モータースポーツから学ぶところは大きいよ。

8月にアクセル・ルンド・スヴィンダルやフェリックス・ノイロイター(共にアルペンスキー選手)らと共にAudi TT Cupレースに参戦した際には、ファンに向けてあなたのレーシングスキルを披露しました。実際レースに参戦してみて、どんな感想を持ちましたか?

最初は、自分がどこまでやれるかということに対してあまり過度な期待はしないようにしてたんだ。実際にサーキットで練習走行できたのはたった1日だけだったし、気楽にレースを楽しもうって感じでね。とはいえ、フェリックスやアクセルとは良い勝負ができるはずだという期待はあったよ。24台のマシンがグリッドに勢揃いするスタートシーンは強烈だった。単独で走る練習走行とは大違いさ。いざレースが始まってゴールを迎えるまでは一瞬のように感じられたよ。とにかく、素晴らしい週末だったし、ユニークな体験ができたと思う。僕もフェリックスもアクセルも、目一杯楽しんだしね。だから、自撮りコンテストに負けたからといって全然がっかりしていないよ。

レーシングカーの運転から学んだ経験でスキーに活かせる部分はありますか?

もしあるとすれば、スラロームを滑る際にスピード感覚を取り戻しやすいってことかな。サーキットのコーナーリングを攻める感覚は、スキーでスピードの限界を見極める感覚と似ていると思う。どちらも、スピードが高まるごとにカーブ半径が大きくなっていくからね。

スピードの限界を見極める感覚、という話が出ましたが、これは昨シーズンからあなた自身が取り組んでいる課題でもあります。これから開幕するワールドカップ・シーズンに向けて、自身に課したテーマはありますか?

いや、まったく。昨シーズンと同様のやり方で立ち向かっていくよ。気持ちが乗っていて、参加する意義を見出せたらスピード系の種目にも参戦するだろうし、逆に気持ちが乗らなければこれまで通り技術系の種目に集中していくだけさ。

2015年キッツビュール・ハーネンカム大会でのヒルシャー © Samo Vidic/Red Bull Content Pool

シーズンが開幕してしまえば、あなたの愛するダートバイクのツアーやカヤックの旅が出来なくなってしまいますね。ダートバイクやカヤックは単純に楽しみのためにやっているのでしょうか? それとも、シーズンに向けた準備と何らかの関連性があるのでしょうか?

ダートバイクやカヤックはあくまでも趣味に過ぎないけれど、これらをトレーニング内容に追加することはたまにあるよ。午前中に筋力トレーニングをこなして、午後にモトクロスのセッションを楽しむという組み合わせは好きだね。濃密で、尚且つ楽しい。

最初から全開で行きたいから、スキーの再開はもう少し先延ばしにしている

スキーファンが気になっている質問ですが、いつあなたはスキーを再開するのでしょう?

今はまだ何も考えていないよ。少なくとも、今はまだそんな気分にはなっていないね。他の選手が実際に滑りはじめていることも知っているけど、僕自身はもう少し待ちたい。スキーで滑りたくてたまらない気分になるまでもう少し待ってみて、滑りはじめる時はいきなり全開って感じで行きたいね。

read more about
Next Story