現在のパーク事情を考える

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.43
Gabe Ferguson © Jeff Brockmeyer/Red Bull Content Pool
By 野上大介

近年、パークで滑走しているスノーボーダーが少ない。上級者が楽しんでいる姿はもちろん見かけるが、その絶対数が少ないからか、このように感じてしまう。

その理由を考えてみた。スノーボード人口で最たるボリュームを占める第二次ベビーブーム世代がアラフォーを迎え、パークでのトリックよりもパウダーライドを求める傾向が強くなっていること、また、若者の人口減少や将来を不安視していることから財布のひもが堅いなど、若手スノーボーダーが少なくなっていること。総じて、スノーボーダーの平均年齢が上がっていることがひとつの要因として挙げられる。

さらに言えば、特にストレートジャンプの回転数は現実味を帯びていない。一般スノーボーダーにとっては360でもハードルが高いわけだが、オリンピックを観ていればトリプルコーク1440という言葉を耳にし、専門メディアから得られる情報はクワッドコーク1800というテレビゲームの中だったはずの世界観が現実と化している。加えて、それらが披露されるジャンプ台はとてつもなく大きいため、そこに自分自身を重ね合わせることはできない。さらに、他国に比べるとスケートボードが文化として定着していないことや、高級消費財であるボードを自ら傷つける行為が日本人気質にフィットしづらいことから、ジビングが一般層にまで深く浸透することは難しい。そういったことを踏まえると……昨今のターンブームにも納得がいく。

パークは日本語で“公園”や“遊園地”となるのだが、あらゆるライディングスタイルが表現できるよう、人工的に造られた“遊び場”のことを指す。ただジャンプできるようにキックとランディングを設定し、単に擦れるようにアイテムを設置すればいいわけではない。もちろん、その遊び方や気持ちよさを知らなければ造れるはずもなく、スノーボーダーたちが求めるニーズを熟知し、想像力を掻き立てて滑ることができるように設計・造成しなければならないのだ。パークアイテムは対象者の滑走能力によって種類も大きさも異なるわけだから、あらゆるレベルのスノーボーダーにフィットするフィールドでなければならない。初・中・上級でセパレートするのがわかりやすいだろうが、限られたスペースを有効活用するために同じアイテムでもいくつかのラインを選択できるように設計し、多様なレベルのスノーボーダーが遊べるように造成されているパークも存在する。

現在の日本では、ほとんどのゲレンデにパークが設置されている。しかし、一部のパークを除き、しっかりとスノーボーダーたちのニーズに応えられているかと問われれば、首を縦に振ることはできない。前述したように、既存のパークに対するニーズは薄れている。それは、単純に人口減少だけで片づけられる問題ではないのかもしれない。

誤解を恐れずに言えば、山側から谷側のフォールラインに対してアイテムが正対しているパークレイアウトがほとんどだ。その場合、ジャンプであればまっすぐ飛び越えること、ジブアイテムであれば形状は違えどまっすぐ抜くことが、一般的なスノーボーダーが表現できる範囲となる。そうなると、ジャンプの大きさや回転数、難易度、もちろんスタイルも含まれるが、いわゆるトリックでしか差別化できない。ひと昔前はそれでよかった。“山にコモる”という文化が定着していたこともあり、一般スノーボーダー全体のレベルが今よりも高かったからだ。しかし、現状を踏まえるとニーズはそこではない。弊誌の読者アンケートでもそうなのだが、トリックよりもフリーライディングを求める声が増えている。繰り返しになるが既存のパークレイアウトは、エアやスピン、そしてジブトリックへの依存度が高すぎるのだ。社会人スノーボーダーの割合が年々増え続け、ケガのリスクと天秤にかけたとき、キッカーで540に挑戦したり、レールでリップスライドにトライする層は間違いなく減っている。とは言え、フリーライディング中に自然地形を活かしたレイバックやスラッシュ、ダウン地形を利用してレベルに応じたエアを繰り出しているわけだ。ここに大きなヒントが隠されている。

冒頭でも述べたように、パークを造る人間はスノーボーダーたちが求めるニーズを熟知していなければならない。海を渡れば、それらを知り尽くしたパークデザイナーという職業が確立している。日本にももちろん存在するが、その数は確実に少ない。そこに雇用がなければ、ノウハウや技術があっても食っていくことはできないし、そこを目指す人間も出てこない。だから、アイテムの大小のみで差別化を図っているゲレンデが大半なのだろう。

ここでひとつの動画を紹介したい。当サイト「藤原ヒロシ氏の推薦動画 HF PICKS」でも取り上げられている作品なのだが、プロスノーボーダーたちがライディングでのあらゆる表現を可能にする夢のような“楽園”ができるまでを追ったドキュメンタリー映像だ。流れてくるライディング映像を観ればわかるだろう。あらゆる可能性を感じることができ、パーク内を縦横無尽に駆け巡っているライダーたち。これは、雪だからこそできる職人たちの巧みな技術による賜物。滑り手のニーズを理解しているからこそ造成でき、滑り手が作り手の想像を超えたとき、そのパフォーマンスは感動を生むのだ。

スケールが大きすぎるため別次元の話に聞こえてしまうかもしれないが、一般スノーボーダーを対象としたパークにも置き換えることができるはず。なぜなら、彼らにとっての“遊び場”でなければならないはずだから。

サーフィンの場合、大自然が生み出す波にサーファーが同調させる必要があるため、そのポイントごとに特徴が異なる波質に合わせてサーフボードを削るシェイパーという職業が確立している。スノーボードの場合、ボードの開発が重要であることはもちろんなのだが、波面よりも雪面のほうが安定しており、なによりバインディングで固定されている分、ボードを操作しやすいことが特徴。

だからこそ、滑るための面を創り出すこと、イコール、アイテム造成が重要なのだ。そのようなパークが増えていけば、スノーボーダーたちの滑走モチベーションは高まり、シーンの活性化にも繋がっていくのだろう。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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