時代を超えても変わらない普遍的な価値観

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.49
Travis Rice © Cole Barash/Red Bull Content Pool
By 野上大介

例年に比べると残暑が厳しくなかったため、夏から秋へと季節の移り変わりが明確だった2015年。そんな最中に各映像プロダクションから新作ムービーが続々と届けられていることも重なり、一気に冬モードへと気持ちが切り替わったスノーボーダーも少なくないのかもしれない。そこで今回は、スノーボードムービーの現在進行形を辿ってみることにする。

スノーボードを始めたばかりの頃、知人から借りた一本のビデオに衝撃を受けた。当コラムでも再三紹介しているが、現シーンの礎を築き上げたと言っても過言ではない名作『ROADKILL』。そこに詰まっていたもの。それは、カッコよさはもちろん、自由な雰囲気、セッションの楽しさ、トリップの臨場感、ニュースクールスタイルなど、あまりにも斬新な映像に心を躍らせ、そして奪われた。

あれから20年以上の月日が流れたが、以来、いちスノーボーダーとして、いちライダーとして、いち編集者として、観る目線は変われど、スノーボードビデオを観続けてきた。ビデオテープからDVD、そしてブルーレイへと姿を変えたことでフッテージの迫力が増し、さらに映像のフルハイビジョン化や4Kへと進化したことにより、その迫真のパフォーマンスはリアルに近づいた。もちろん、進化したのは映像だけではない。記録媒体のそれよりも、ライディングは大幅な成長を遂げたのだ。

そして現在。そのライディングは、僕らの想像をはるかに超えるレベルに達した。ギアやアイテムの進化もさることながら、常に新しいことを追い求める、いわばプロスノーボーダーの宿命とでも言うやつだろうか。同じロケーションを嫌い、オリジナルのスタイルにこだわり、似通ったトリックやラインでは満足しない。貪欲に楽しみ、カッコよさを追求し続けた結果、現在の領域にまで辿り着いた。

さらに“雪山”というエリアや期間が限定されたフィールドでの遊びだけに、その道で生計を立てているプロスノーボーダーと一般スノーボーダーとでは、滑走日数の差が大きすぎる。もちろん、生まれもったセンスやそこに至るまでの努力など、モノサシでは計り知れない部分も多い。しかしこのままでは、その格差は広がる一方ではないか。語弊を恐れずに言えば、“魅せる側”と“観る側”、それぞれの価値観に相違があるのだ。

さらに言えば、ライダーたちが撮影場所のメインとして考えているのはバックカントリー。しかし、一般スノーボーダーが滑るフィールドは、グルーミングされた人工的なコース。野球やサッカーであれば、同じ長さや広さのスタジアムで、同じルールに則ってプレーできる。だからこそ、プロのすごさを実感できるわけだ。スノーボードでもすごさはわかるし伝わってくるのだが、今ひとつ現実味に欠けてしまう。なぜかと言えば、そのロケーションすら想像がつかないのだから……。

そんな時代だからこそ、各ビデオプロダクションは試行錯誤を繰り返し、様々な表現方法を模索している。プロである以上、ライディングをプッシュし、スノーボードをクールに進化させるということは大前提だろう。その方向性がトリックの追求なのか、ライディングスタイルの新提案なのか、双方にベクトルが向いているように感じる。前者は、スノーボードの可能性を示唆することやキッズに夢を与えるなど、アスリートとして取り組んでいる側面。後者は、バックカントリーという手つかずの大自然で、いかにオリジナルに表現できるかという、アーティスティックな一面。こういった芸術家(ライダー)たちの表現法(スタイル)を、いかにオーディエンスに届けるか───ここにスノーボードの未来がかかっている。このように言ったら言い過ぎだろうか。

ライディングは急成長を遂げた。フィールドも限りなく広がった。スポーツである以上、“技術的”なことは伝えていかなければならない。他スポーツとは一線を画する遊びでもあるからこそ、“芸術性”はさらに強く発信しなければならない。どちらにせよ、ライダーたちがなぜ滑り続け、そして表現し続けているのかを、今一度考えてほしい。根本にあるものは、冒頭で述べたROADKILLの頃から何も変わっていない。それは、ライディングを「楽しむ」こと。そして、その滑りが「カッコいい」こと。

それがスノーボードなのだから。

 

国内No.1スノーボード情報サイト「TRANSWORLD WEB」をチェック!
────────────────────

野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

Next Story