現代のスノーボーダーにもの申す

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.50
Nicolas Müller © Scott Serfas/Red Bull Content Pool
By 野上大介

思い出してほしい。スノーボードを始めた動機として最たるものは、「飛びたい」「回したい」という欲求で間違いないだろう。もちろん、筆者もそうだった。スケートボードのように自由奔放なライディングスタイルに憧れを抱き、この世界に飛び込んだ。

それらスノーボードの代名詞と言えるアクションは、90年代初頭までウィンタースポーツの顔だったスキーとの決定的な違いである。技の習得という目的意識からか、スノーボーダーたちはライディングに対するモチベーションが非常に高かったため、若者を中心にゲレンデを席巻していった。山にコモるという文化が広がり、リゾートバイトは引く手あまた。ゲレンデサイドもスノーボーダーを受け入れるようになり、ハーフパイプやパークが続々と新設されていったわけだ。

筆者が始めた当初は発展途上だったため、パークはほとんどなかった。反面、アマチュアの登竜門としてパイプの大会が根づいていたため、みながRを駆け抜けていた時代。「パイプにはライディング要素の多くが詰まっている」、そんな言葉を耳にしたことがないだろうか。

時は流れ、スノーボード人口こそ極端には減少していないもののコモり組は激減し、対してパークは増加。クオリティはともかくとして、今やほとんどのゲレンデにパークが用意されている。環境が整備されたうえに、始める動機は今も昔も変わらない。ある程度の滑走技術を体得すると、当然ながらすぐにパークを目指すことになる。

ここに落とし穴があったのかもしれない。フリーライディングを軽視する時代が長すぎる。

ひと昔前はパークが少なかったので、遊べるポイントを探しながら縦横無尽にゲレンデ内を駆け巡っていた。自然とボードコントロールの技術が身につき、パイプライディングでそれが研ぎすまされていったものだ。しかし、シーンが成熟していくにつれ、雑誌やビデオではビッグエアやジブが多く取り沙汰され、それを見て育っていくスノーボーダーは前述したように、当然、真っ先にパークへと足を運ぶ。

事実、カービングができなくてもジャンプやボックスでは遊べるが、パイプで飛ぶことができないというスノーボーダーは多いだろう。次第にパイプは敬遠されるようになり、リゾート側も維持管理費がかかるため常設を断念。結果、ライディングの基礎ができていないスノーボーダーが急増している、という見解だ。

この話を聞いて面白くないと感じる読者諸兄姉もいることだろう。トリックの練習に勤しんで何が悪い、と。でも聞いてほしい。急がば回れではないが、基礎を固めたほうがトリックの習得が早まることは間違いない。

シーズン前の気づきとして綴らせてもらった。今シーズン、どう滑るかはあなた次第だ。

 

国内No.1スノーボード情報サイト「TRANSWORLD WEB」をチェック!
────────────────────

野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

Next Story