現代のスノーボーダーに伝えたいこと

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.52
Nicolas Müller © Tim Zimmerman/Red Bull Content Pool
By 野上大介

冒頭からネガティブな話だが、一般レベルでダブルコークやトリプルコークをメイクするのは至難の業だ。ロデオフリップの誕生に衝撃を受けたのが、今から20年前の95-96シーズン。回転数が倍以上になっているのだから当然、キッカーの大きさやアプローチスピードも倍以上だろう。当時はアイテムのスペックが想定内だったため、そこで繰り出されるトリックに現実味が帯びていた。しかし現在のレベルでは、憧れのプロスノーボーダーたちと同じ土俵に立つことは不可能に等しい。

野球やサッカーの場合、レベルは違えど、同じ規模のフィールドでプレーすることが前提となる。だからこそプロのプレーを見る目はシビアになり、憧れの選手の偉大さもリアルに伝わってくるわけだ。キッカーなどの人工物でさえ冒頭で述べた格差があるのだが、弊誌が発信する情報も含め、世界トップクラスのメインストリームは、バックカントリーで繰り広げられるマウンテンフリースタイル。それこそがスノーボードの原点であり、自由なライディングを追い求めてきた結果、その領域に辿り着いたのだ。しかし、一般スノーボーダーの目線では到底、そのスケール感すら想像できない。

大自然が育んだ多様なヒットポイントを己のスキルと感性でクリエイトし、そこで生まれるトリックをラインで繋いでいく。舞台が舞台だけに、その難しさはピンとこないかもしれないが、カッコよさは十分に伝わるはずだ。単発のトリプルコークで魅せるのではなく、広大な雪原を縦横無尽に駆け巡り、トゥイークやシンプルなスピンを織り交ぜながら攻略していく、いわゆるフリーライディングである。一般目線で見たとき、そのスケールはプロ野球と少年野球以上の差があるのかもしれないが、楽しみ方には共通項があるように感じてならない。

ここでひとつの映像を紹介したい。弊誌ウェブサイトでも大きな反響があった、VOLCOMより公開されている『STANDING OVATION』。往年のライダー、ジェイミー・リンとブライアン・イグチが出演しているのだが、まだ観ていないようであればこちらから動画と記事をご覧いただきたい。

このムービーから伝わってくるだろう。アラスカのディープパウダーを滑ることは難しいが、このロケーションをスケールダウンさせて考えてほしい。地形に富んだゲレンデであれば、このようにターンを刻みながらフリースタイルに楽しむことができる。それは、プロライダーたちが求めていることと何ら変わりはない。

自由に滑り、自由に表現し、自由に楽しむ。これこそが、スノーボードの醍醐味なのだから。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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