事実上の世界一を証明した國母和宏

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.56
Kazuhiro Kokubo © STONP OR DIE
By 野上 大介

圧倒的な勝利だった。

X GAMESを主催するスポーツ専門チャンネル・ESPNが贈るバックカントリー・ムービーの世界頂上決戦「REAL SNOW BACKCOUNTRY」において、オンラインによる一般投票から選出されるファン・フェイバリット部門で國母和宏が1位に輝いた。世界中の選りすぐり5名のみがこのコンテストへの参戦が許されていたのだが、結果と併せて出場ライダーを紹介していきたい。ファン・フェイバリット部門の2位はギギ・ラフ(オーストリア)で獲得票数が全体の21.29%、3位はジェレミー・ジョーンズ(アメリカ)で同11.17%、4位はジョン・ジャクソン(アメリカ)で同10.15%、5位はミッケル・バング(ノルウェー)で同6.52%だった。このような錚々たる面々を押しのけ、國母は過半数以上となる50.87%を獲得しての受賞となったわけだ。

このコンテストは、各ライダーがフィルマーとタッグを組んで約90秒に編集された映像作品で争われており、事前に参加ライダーとフィルマーにより他チームへの投票を行って順位を決していた。その模様が11月22日にESPN on ABC(アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニーのスポーツ番組)で放映され、その本戦で國母は銀メダルを獲得。ジョンが金、ギギが銅メダルをそれぞれ手中に収めたのだが、世界中のスノーボーダーによる一般投票を加味するとジョンの支持率が低かったこと、加えてギギとの大差も踏まえると、フリースタイラーの終着駅であるバックカントリーという舞台において、事実上の世界一であることを証明したわけだ。

ここから綴ることは、出場ライダーすべての映像をご覧になったうえで読んでいただきたいので、もしまだ観ていないという人がいたらX GAMESのウェブサイトでチェックしてほしい。ジェレミーの映像は異彩を放っており、アラスカを約100kmに渡りさまよったうえで滑走するという冒険家さながらのバックカントリー・ムービー。究極のスノーボーディングではあるが、およそ1割の支持率にとどまった。以外の4名は、プロスノーボーダーが目指すメインストリームであるバックカントリー・フリースタイルの映像だ。この中で國母が突出していた理由。それは、ほぼすべての映像がナチュラルヒットであることに尽きる。

90秒という限られた時間の中に、各々の集大成となるフッテージを詰め込んで作品ができあがっていたわけだが、その制作におけるポイントは大きく分けて6つあったように感じる。1つ目はスティープな斜面を独自のラインで攻略すること、2つ目はディープパウダーで美しいターンを描くこと、3つ目はナチュラルヒットを活かした創造性あふれる表現力、4つ目はトリックの難易度、5つ目はジャンプの大きさ、6つ目はいわゆるスタイル。前半の3つに関しては言わずもがなであるが、後半の3つに関しては飛びやすくキックを造ったほうが格段に難易度が下がる。一般スノーボーダーでもわかりやすく説明すると、パークのキッカーで飛ぶ場合と、自然地形の落ち込みで飛ぶことを想像してほしい。キッカーでオーリーしたほうが安定して高く飛べ、自然地形では高さも安定感も出しづらいことが理解できるはずだ。しかも、この自然地形にパウダースノーが降り積もっているのだから、その不安定さはさらに増す。こうした難しいシチュエーションに國母はこだわり、ご覧になった約90秒の映像作品を残したのだ。わずか150cm程度のボードに跨がって、大自然が育んだ手つかずの雪山に自らを同調させ、さらに己の生き様(=スタイル)を表現したということだ。

最後に、この得票数の差は、その数値だけで計ることはできない。なぜなら、北米や欧州のスノーボード人口を考えれば、それ以上に圧倒的な差があったと言い換えることができるから。2010、11年とUS OPENのハーフパイプで2連覇を果たし、その後、大ケガや移籍を経験した後に、日本人スノーボーダーの想像を遥かに超えるステージにまで登り詰めた國母。いや、世界中のスノーボーダーの想像を超える結果に違いない。

國母和宏、27歳。またしても彼が、日本のスノーボード界に革命を起こした。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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