シーズン序盤に気をつけたいこと

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.58
Marcus Kleveland © Markus Fischer/Red Bull Content Pool
By 野上 大介

首を長くして待ち続けた本格シーズンがいよいよ開幕。すでに初滑りを終えた人も多いのかもしれないが、シーズン序盤は多くの危険が潜んでいることを忘れてはならない。なぜかと言えば、普段からトレーニングを心がけている人は別として身体ができあがっていないこと、また、身体ができあがっていたとしてもライディングの感覚が鈍っているからだ。さらにゲレンデのコンディションが安定していないので、ブッシュや岩が出ていることもあるだろう。

加えて、滑走意欲を抑えきれずに浮き足立ちやすい時期だからこそ、兜の緒を締めて臨んでほしい。そして、短いスノーシーズンだからこそ雪解けまで思いきり楽しんでほしい。そこで、大きなお世話かもしれないが自身の体験談を綴らせていただくので、気を引き締めるための一助になってくれれば幸いだ。

記憶が定かではないが5、6年ほど前の年末、新潟の某ゲレンデに滑りに行ったときのこと。その日は朝からずっと雪が降り続いていて、初滑りにも関わらず夕方までパウダー三昧。太ももはパンパンだったが、少しずつボードに乗る感覚を取り戻していたように記憶している。すると、足慣らしが目的だったはずなのに、いつしか欲が出てしまっていたのだろう。コースの大半はトラックでボコボコになっていたので、誰も滑っていないコース脇の斜度が緩いポイントに目をつけ、残り物をいただこうと目論んだ。下半身はフラフラだったがフルスピードで直滑り、板に乗れているようで乗れていない感覚のまま突っ込んだわけだが、朝から誰も踏み入れていない緩斜面だったため予想以上のディープパウダー。結果、ノーズが思い切り詰まってしまい、フロントフリップ状態で頭からパウダーに埋まった。スピードがあったためか深く突き刺さってしまい身動きがまったくとれず、もがけばもがくほど深くはまっていくアリ地獄状態。パニック状態に陥る寸前に、後方を滑っていた仲間が雪面から出ているボードに気づき助けてくれて事なきを得たのだが、本当に焦った。念を押すが、これはコース内での話。近年はゲリラ豪雨に代表されるよう、異常気象が日常茶飯事だからこそ気をつけてほしい。

そして4シーズン前のこと。序盤から降雪に恵まれた当たり年だった。年末はしっかりとグルーミングバーンでカービングターンを刻みながらライディング感覚を取り戻し、年が明けるとバックカントリーを攻めたり、地形が豊富なゲレンデで遊んだりと、いい形でシーズン序盤を終えた。しかし、忘れもしない2012年1月14日。弊誌が当時プロデュースしていたフリースタイルとフリーライドの要素を融合させた新感覚3Dパーク「NATURIDING LAND」のオープン日ということで、視察を兼ねて滑りに行った。この時点では雪が足りていなかったのでコースの完成度は半分くらい、という事前情報を耳にしていたのだが、後に取り返しのつかないことになってしまう。前年にそのアイテムを飛んだ経験があったこと、さらに滑り込んでいた自信や周囲に魅せようという欲、そして自らが企画したパークを目の前にして高まりすぎたテンション。これらを制御できず、さらに自信を過信に履き違えた状態でテイクオフした結果……想定よりもアイテムが小さかったため、ランディングポイントを大きく飛び越えてフラット着地。左膝の大腿骨粉砕骨折と外側側副靱帯の損傷という大ケガを負ってしまった。あれから4年近くが経過するが、いまだリハビリを強いられる生活を余儀なくされている。

ネガティブな話で申し訳ないが、自然が相手でありリスクを伴う遊びだからこそ、本格シーズンを目前に控えた今、改めて気を引き締めてもらいたいという願いを込めて綴らせてもらった。白銀の世界で宙を舞う解放感、凍てつく空気の中を疾走する爽快感、キント雲に乗っているかのようなパウダーでの浮遊感……。これらを何度も味わってもらいたいからこそ。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

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