暖冬がもたらした怪我の功名

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.62
Scotty Lago © Christian Pondella / Red Bull Content Pool
By 野上 大介

いよいよ本格的なウィンターシーズンがやってきそうだ。来週は東日本・西日本ともに一気に真冬の寒さとなり、大雪が降るとの予想が気象庁から発表されている。これを聞いてテンションが高まらないスノーボーダーはいないだろう。筆者もそのひとりだ。

年末は群馬・沼田エリアへ、3連休は新潟・南魚沼エリアへ足を運んだのだが、人工降雪が混じったアイシーなバーンや、圧雪できない凸凹なバーンに苦戦を強いられた。ヒザを痛めていることとブランクが重なり、ハードなコンディションでひたすらカービングを刻みながら、滑る感覚を取り戻す作業を繰り返していた。

3連休の最終日、前日から降り出した雪はやむことなく、山へ向かう途中の光景が冬景色に一変していた。目的のゲレンデに到着して滑り出すと、今シーズン最高の雪質。滑る感覚を少しずつ取り戻していたことももちろんあるが、悪条件のバーンを滑り込んできたことで、カービングの質が高まっているように感じられた。

その昔。ハーフパイプの大会に出場していた頃、あらゆるコンディションのパイプで安定感のあるライディングができるようにと、全国各地のパイプを滑るように心がけていたのだが、アイシーなパイプで滑り込むことを特に意識していた。当然エッジングがシビアになるので、ラインどりやテイクオフのすべてにおいて“ごまかしが利かない”滑りを体得できると考えていたからだ。軟らかいパイプではトランジションからリップにかけてエッジがかかっている状態でも飛ぶことはできるが、硬いパイプだとエッジが雪面に食い込まないためラインがずれやすくなり、高く飛べないケースが多い。

パイプで飛ぶことをエアターンと呼ぶように、先に説明したトランジションからリップにかけてはターンの前半部分、エア中がターンを切り換える抜重時にあたり、着地してバーチカルからトランジションにかけての下り部分がターン後半と類似した動きとなる。硬いパイプで高さを出せるようになり、かつ、リップ・トゥ・リップの滑りを身につけられたことで、あらゆるパイプに対応できるようになったのだ。

これはゲレンデでのターンにも置き換えることができるはずだ。悪条件にも関わらず丁寧にカービングを刻んでいたスノーボーダーであれば、来週以降にリフレッシュされた全国各地のゲレンデを、例年以上に気持ちよく滑れるはず。パウダーターンの質も高まっているかもしれない。

日本は世界的に見ても雪質に恵まれた国である。暖冬の結果として、今シーズンの序盤はかんばしくない条件下で滑ることを強いられたスノーボーダーが多かったことだろう。結果論になってしまうが、神が与えてくれた“上達のための修行期間”だったと考えて、来週以降に開幕するだろう本格シーズンを例年以上に楽しんでほしい。

 

国内No.1スノーボード情報サイト「TRANSWORLD WEB」をチェック!

────────────────────

野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

 

 

Next Story