急激な積雪量増加の落とし穴

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.63
 
By 野上 大介

暖冬と騒がれてきた今シーズンではあるが、全国各地から降雪の便りが届いている。1ヶ月近く遅れはとったものの、ようやく本格シーズンが開幕を告げた。前回のコラム「暖冬がもたらした怪我の功名」でも綴ったように、悪条件のバーンでも丁寧に滑り込んできたスノーボーダーにとって、好条件でのライディングは肉体的にも心理的にも最高のパフォーマンスが繰り出せるはずだ。

さて本題。ここ数年はいわゆる“当たり年”だったことや、登山などのアウトドアブームも重なって、スノーシーンではバックカントリーでのライディングが空前のブームを迎えている。だが、今シーズンは北海道や北東北を除き、プロスノーボーダーでさえもバックカントリーに足を踏み入れることが許されないほどの雪不足だったため、この“需要”に対してようやく“供給”が始まった段階と言えるだろう。

今週末、バックカントリーやサイドカントリーを目指すスノーボーダーがいるかもしれない。シーズンが限定されているからこそ焦る気持ちやはやる気持ちが顕著に表れやすいだけに、兜の緒を締めて楽しんでほしい。知識・技術・装備・経験を有するスペシャリストは自ら判断できるだろうが、バックカントリー歴の浅い一般スノーボーダーが多いだけに、ここではフランスで立て続けに起こった雪崩の事故について触れることにする。 

13日午後、フランス南東部アルプス山脈のゲレンデ、レ・デュー・アルプで雪崩が発生。フランス人の高校生2人とウクライナ人の観光客1人の、合わせて3人が死亡した。現場の標高は2,500mの急斜面で、雪崩発生の危険度を示す5段階区分ではレベル3と、平均よりも発生リスクが高いとされていた。しかも、クローズされていたコースでの事故。この日だけで33cmの新雪が積もっていたそうだ。

さらに18日には、レ・デュー・アルプから北東に124kmほどに位置するイタリア国境に近いリゾート、バルフレジュス近辺でも雪崩が発生。訓練中だったフランス外国人部隊の兵士5人が死亡、6人が負傷した。こちらの現場も2,350~2,600mほどの標高で、このエリアにも激しい降雪があった模様。そのような状況で、兵士50人ほどによるスキー訓練が行われている最中の事故だったようだ。

なぜ、5日間で2度も相次いで雪崩事故が起こったのか。日本と同様に、フランスも暖冬に見舞われていた。12月は気候が穏やかで、積雪が少なかったそうだ。これは、根雪になる前、もしくは根雪になっていたとしても安定していなかったため、雪層が不安定だったと考えられるのではないだろうか。

根雪について触れておくと、通年であれば、秋の半ばから晩秋頃の初雪を含め、それ以降に降った雪が外気温の高さにより融けるのだが、冬に入ると日常的に寒冷な状態が継続することで融雪が進まなくなり、すべての積雪が融けてしまう前にさらに雪が降り積もっていく。新たに積もった雪は気温上昇などにより一部融雪するが、地表に近い下部の雪は溶けずに常に残った状態となる。これが根雪だ。

エリアによって降雪状況は異なるため一概に根雪が育っていないとは断言できないが、そういった地域が例年に比べると確実に多いということは肝に銘じておきたい。また、雪層が不安定な状況では、強風が吹き荒れることで雪崩のリスクが高まることも覚えておいてほしい。

雪崩の専門家ではないため語弊や言葉足らずな部分があったかもしれないが、今回お伝えしたフランスでの雪崩事故は、現在の日本の状況に重ね合わせられる部分があるように感じたため綴らせてもらった。バックカントリーやサイドカントリーを求めるのであれば、その道のプロフェッショナルであり、滑走する雪山に精通したガイドが開催しているツアーに参加すべきだ。バックカントリーの滑走条件として先述した、知識・技術・装備・経験のひとつでも欠けているスノーボーダーは、不用意に立ち入ることが許されない聖域なのである。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)

スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

 

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