これまでの10年、ここからの10年。

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.71
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.71
By 野上 大介

 

2006年3月号の制作から弊誌の指揮を執るようになり、はや10年が経過した。現在発売している2016年4月号まで含めると、計86冊を手掛けたことになる。弊誌の編集長としては歴代最長であり、もしかすると、業界内でもそうなのかもしれない。ここまで続けてこられた理由───それは、スノーボードを愛しているから。このひと言に尽きる。そこで今一度、激動だった10年間を振り返っていきたい。お付き合いいただければ幸いだ。

編集長という大役を仰せつかるとすぐに、米ネバダ州ラスベガスへ飛んだ。各社が来季ギアを発表する大型展示会・SIA(現在はコロラド州デンバーで開催)の視察・取材のためだったのだが、先述した処女作の校了中につき、展示会場で電源を拝借しながら校正していたことを昨日のように思い出す。帰国するとすぐにイタリアへ渡り、トリノ五輪ハーフパイプ種目を取材した。慣れない職務ではあったものの、指揮だけでなく自ら動きまくり、書きまくり……あっという間に時が過ぎ去っていった。

その間、シーンは大きく移り変わっていく。史上最高峰の映像プロダクションとして名を馳せたMACK DAWGの作品に布施忠が出演し、國母和宏がUS OPENハーフパイプで2位という実績をすでにあげていたわけだが、まだまだ世界レベルからはほど遠かった。布施が先頭に立っていばらの道を切り拓き、國母も単身で海を渡り切磋琢磨を繰り返し、少しずつ日本人スノーボーダーの存在価値を世界中に知らしめていった。

その國母は5年という歳月をかけてSTONPを運営、日本人ライダーたちをプロデュースした。その成果として工藤洸平らが本場のアメリカからも認められる存在となったわけだが、その傍らで國母自身もスキルと認知度を高め、今では北米有力メディアが選出するライダーのトップ10には必ず名を連ねるほど。さらに、バックカントリーで撮影された映像で競われるX GAMESの一戦・REAL SNOW BACKCOUNTRYのオンライン投票では最多得票数を獲得するまでに至った。

コンテストシーンでは周知のとおり、ソチ五輪ハーフパイプで平野歩夢が銀、平岡卓が銅メダルを獲得。昨シーズンのUS OPENハーフパイプでは平岡が、スロープスタイルでは角野友基が、それぞれ頂点に輝いた。角野はビッグエア種目の伝統の一戦、AIR+STYLEロサンゼルス大会でも優勝。今季は平野がLAAX OPENとX GAMESオスロ大会で優勝を飾るなど、ハーフパイプ、スロープスタイル、ビッグエアのフリースタイル種目において、この3名は間違いなく世界のトップランカーとして君臨しているのだ。

さらには、日本の雪質や地形が世界中から評価されていることが挙げられる。今シーズンの積雪量に関しては例外になってしまうが、日本のパウダースノーは“JAPOW(ジャパウ: JAPAN POWDERの略)”と称され、北海道・ニセコに始まり、長野・白馬、さらに各エリアへと外国人スノーボーダーが進出している事実。為替の影響もそうだが、日本人ライダーたちの活躍が後押しした背景も間違いなくある。

そう、現在の日本スノーボード界は世界トップクラスと肩を並べる……いや、それ以上の成長を遂げているのかもしれない。

しかし、それらの進化とは反比例するように、一般スノーボーダーたちの志向は大きく変化した。10年前はキッカーでの360などトリックが人気を集めていたのだが、現在ではそのニーズが減退。今、もっとも注目度が高いコンテンツはターンだ。これを分析すると、ひと昔前のように多くのスノーボーダーが山に“コモる”という文化が崩壊した結果、滑走日数が圧倒的に少なくなっていることが要因だろう。人口の減少はもちろん、社会で囁かれている若者のアウトドア離れやクルマ離れも一因と言えるのではないだろうか。 

ポジティブな要素としては、全盛期にフリースタイルを楽しんでいた層がアラフォー世代に突入し、パウダーや地形を攻略できる大人のスノーボーダーに変貌。一部ではライフスタイルとして定着し、それが彼らの子供たちへと受け継がれている。また、前述したオリンピックなどでのライダーたちの活躍が日本中で注目されると、我が子をオリンピアンに育てたいという親が急増。キッズスノーボーダーが世に溢れだしている。その反面、20代スノーボーダーが空洞化となっている気がしてならない。

メディアの在り方も激変した。出版不況と言われながらデジタル化が加速している昨今。言い換えれば、より多くのスノーボーダーに情報が届けられるようになったわけだ。

ライフスタイルや文化としての定着、地球環境の保護……など課題は山積しているが、永続的にスノーボードが楽しめる環境作りの一助となるべく、10年後を見据えて今まで以上に動きまくっていきたい。そう思うのだ。

 

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野上大介(Daisuke Nogami)
スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

 

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