アラフォーからの再挑戦

元ライダーの雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.73
Taylor Gold © Marv Watson/Red Bull Content Pool
By 野上 大介

 

20代中頃までは定職に就かず滑り続けていたのだが、当時はハーフパイプの大会を転戦する活動が主流だった。筆者も例外なく、アマチュア大会はもちろんのこと、プロ・アマオープンの大会にも積極的に参戦していた。パイプを始めるまではフリーライディングが中心だったのだが、毎週のように全国各地で大会が行われていたこともあり、エアの高さやトリックの習得に勤しむため、毎日のようにハイクアップしながらパイプを滑っていたものだ。

現在42歳。あれから15年以上の歳月が流れたわけだが、先日、ひさしぶりにパイプを滑った。高さ6m超のスーパーパイプではなく、4mほどのパイプ。当時滑っていたサイズだ。しかし、その長すぎるブランクと4年前に負傷した左膝がいまだ芳しくないこともあり、緊張感と恐怖心がつきまとっていた。

リフトからパイプをチェックするとすでに滑っているスノーボーダーがおり、リップラインは波を打っている状態だった。その日がパイプの最終営業日だったためか形状が崩れかけていたことは否めないのだが、トランジションからバーチカルにかけてのシェイプは上々のよう。パイプを滑ってはいなかったものの見ることが仕事になっていたためか、その目だけは確かだったのかもしれない。

1本目はスピードを落として形状をチェック。間違っても、再びケガをすることは許されない状況だ。ライディングに関しては攻めるタイプだと自己分析しているため、慎重になりすぎるくらいがちょうどいいと自分に言い聞かせながら滑っていた。そのパイプはライダー時代によく訪れており、設置場所も変わっていなかったため、ハイクアップしながら当時の出来事がフラッシュバックしてきた。しかし、ハイクアップする息は当時よりも確実に上がっており、一歩一歩踏み出す足どりも当然重い。もちろん、パイプの滑走技術は恐ろしく落ちていたので、懐かしさと悔しさが入り乱れた複雑な心境だった。

でも、ものすごく楽しかった。

受傷してしまった左膝は着地時の衝撃に耐えられないため、キッカーやナチュラルヒットで飛ぶことを避けてきた。通院している病院のトレーナーと相談した結果、パイプのリップ・トゥ・リップであればさほど衝撃を受けないから飛んでもいいという許可を得ていただけに、飛びたくて仕方なく訪れたこの日。全盛期の半分以下ではあったものの、ひさしぶりに飛んでグラブできた充実感、そして、4年以上かけてここまで回復することができた達成感を味わった。ケガやブランクがあるからこそ慎重にならなければいけないものの、やはり、少しでも高く飛びたい。そんな葛藤の中でアドレナリンが分泌されて上手く滑れたときに得られる感覚───あの言葉では表しづらい高揚感のような気持ちは、ゲレンデでターンをしているだけでは味わえないものなんだと、改めて気づかされた。

最後になるが、私、野上大介は今月末をもってトランスワールドジャパン株式会社を退職する運びとなった。これまでのキャリアを活かし、その延長線上で自分自身ができる可能性を模索しながら、スノーボード業界をこれまで以上に盛り上げるべく、再び邁進していく覚悟だ。方向性などについては当コラムで改めて報告させていただくが、その一世一代のチャレンジに向け、今回、ハーフパイプに再挑戦したような気持ちを持ち続け、いつまでもスノーボードとともに歩んでいこうと思っている。

一生涯、スノーボーダーでいるために。

 

野上大介(Daisuke Nogami)
スノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWBOARDING+」編集長。1974年、千葉県生まれ。全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。現在に至る。アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、ソチ五輪スノーボード競技におけるテレビでの解説やコメンテーターとしても活動するなど、その幅を広げている。

Next Story