最後の大仕事

元ライダーの元雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.74
※写真は2015年1月に星野リゾート アルツ磐梯で開催したTransAM JAPANの特設パークです
By 野上 大介

3月いっぱいでトランスワールドジャパンを退職することは前回のコラムで報告させていただいたとおりだが、実のところ最後の大仕事が残っている。当初は1月上旬に予定していたのだが少雪や大雨の影響で3回に渡るリスケジュールを余儀なくされたものの、開催地である星野リゾート アルツ磐梯の多大なる配慮により、4月9日(土)に会場を同リゾートの裏磐梯猫魔に移して開催が決定していたTRANS JAM(トランスジャム)が行われるからだ。

このTRANS JAMは、昨シーズンまでTransAM JAPAN(トランザム・ジャパン)と銘打って行われていた、一般スノーボーダーを対象としたお祭り要素の強い大会。全長200mに満たないコンパクトなスペースを利用して、あらゆるラインどりが楽しめるよう、各会場の地形や条件を活かして特設パークを造成して行われている。会場がコンパクトなので全体を見渡せることはもちろんなのだが、スロープスタイルというフォーマットながらも一体感を生み出すことが狙いでもある。

さらなるこだわりとしては、ライディングスキルや性別、年齢を問わず、老若男女のアマチュアスノーボーダーが楽しめる、いわば雪で造成した“楽園”であることだ。カービングスキルに自信のないスノーボーダーであればストレートなラインで楽しむことができ、ボードのトーションを活かした地形遊びを得意とする上級スノーボーダーであれば、サイドインなど多彩なラインが選べるようコースを設計していることが最大の特徴である。

イベント名のとおりジャムセッションで行われるのだが、そこにも垣根はない。キッズからオジさんまでが同じヒートでセッションする。参加人数によって多少の誤差は生じるが、ひとり5~6本は滑れるはずなので、当然、前述したようにあらゆるラインで攻めることが可能だ。巨大ジャンプでもなければ、複雑なジブアイテムが用意されているわけでもない。ファンに、クリエイティブに、各々のスキルに応じた自分らしいラインが描ける。だからこそ、楽園と言えるのだ。

4年前の同じ時期、翌年からTransAM JAPANをローンチさせるべく、そのプレイベントを行おうとした際もここ、裏磐梯猫魔だった。1週間前から会場入りし、パークプロデューサーであるBRAVE PROJECTの平学氏や、同リゾートのディガークルー(現PYRAMID SNOW PARK DESIGN)代表である山田雄二氏らによる協力のもと、まさしくコンセプトどおりの楽園が完成した。しかし、大会当日は大雨に見舞われ、さらには雷が鳴ってしまったことで、大会は中止。偶然ではあるが、その会場でトランスワールドとして最後の大仕事を迎えることに、勝手ながら運命を感じている。是が非でもリベンジしたい。

この大会でありお祭りは、昨今の日本スノーボードシーンに対するアンチテーゼでもあった。五輪種目であるスノーボード競技はトリックの難易度が急激に上がったことで、キッカーは巨大化の一途を辿り、リスキーなジブアイテムが増えた。ダブルコークや1080以上のスピンが必要とされ、オリンピックを目指すキッズやジュニアたちの戦場と化しているのかもしれない。はたまた、トリックでは若手に勝てないもののターンの質では負けない大人たちが新しい文化を生み出し、ボウルやバンクで見事なラインどりを披露している。

だが、トランスワールドとしても野上大介としても、やはりメインストリームはジャンプを中心としたフリースタイルスノーボーディングであり、アマチュアスノーボーダーにとって大会は必要不可欠な場として考えていた。その瞬間にしか味わえない緊張感、そこでしか滑ることが許されない特設パーク、だからこそ周囲からダイレクトに伝わってくる多くの刺激……こういった環境がスノーボーダーのスキルを高め、そして、よりスノーボードの本質的な魅力を感じることができると信じているからだ。

だからこそ、このイベントを続けてきた。ビッグキッカーが飛べない一般スノーボーダーでも、クリエイティブなラインを刻みながら低回転スピンで魅せる上級スノーボーダーたちと同じ土俵に立つことで、必ずや新しい価値観や世界観が見えてくるはずだから。

このTRANS JAMは、当日エントリーも受け付けている。これまでも全力を注いできたわけだが、トランスワールドでの最後の大仕事であることも含め、参加してくれる全スノーボーダーを最高潮へと導きたい。シーズンの締めくくりであり、来シーズンに対するモチベーションを高めてもらうためにも、全力でお届けしたい。

4月9日(土)は、福島・裏磐梯猫魔で待っている。

※写真は2015年1月に星野リゾート アルツ磐梯で開催したTransAM JAPANの特設パークです

 

 

野上大介(Daisuke Nogami)

大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契 約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社を経て、トランスワールドジャパン株式会社が発刊するスノーボー ド専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」に12年間従事。編集長として10年間に渡り職務を遂行し退社、現在に至る。2013年に開催された、アクション&アドベンチャースポーツの インターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、X GAMESやオリンピックなどのスノーボード競技において、テレビでの解説やコメンテーターとして活動するなど、その幅を広げている。

Next Story