横乗りが育む文化

元ライダーの元雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.76
SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.76
By 野上 大介

2013年の秋、ソチ五輪直前に平野歩夢のインタビュー記事を制作するため、彼の生まれ故郷である新潟県村上市を初めて訪れた。数ヶ月後、歩夢が銀メダルを獲得したことを受けて再び出向き、翌年には歩夢の父である英功さんの動画インタビュー取材のために3度目の訪問。そして今週、およそ1年半ぶりに村上へ足を運んだ。

偶然ではあるのだが、訪れた4回ともすべて水曜日だった。歩夢が4歳からスノーボードとスケートボードを始めたという話は、ソチ五輪前後にあらゆるマスメディアから発信されていたのでご存知の方も多いと思うが、彼は英功さんが運営する日本海スケートパークで滑りに磨きをかけてきた。それは今も変わらないのだが、その日本海スケートパークでは毎週水曜日の夜に、初心者対象のスクールを開校している。

メダリストが誕生した、いわば聖地であるため、たくさんのキッズスケーターがいることはもちろんなのだが、引率で来ているの親たちもスケートを楽しんでいる姿が見受けられるのだ。近年、スノーボードなどの横乗りスポーツを経験していない親たちが、我が子をオリンピアンに育てるべくゲレンデに通いつめ、子供をスクールに入れるとブーツも履かずにレストハウスで待機……なんて話をよく耳にする。それを否定するつもりはないし、ほかの一般スポーツでも同じことはよくあるだろうが、日本海スケートパークで毎回目にする、親子でスケートボードを楽しんでいる姿を見ていると、横乗りならではセッション感覚で親子のコミュニケーションが図れる新時代が幕開けしたんだということを実感させられる。

英功さんも現場で指導にあたっているのだが、ローカルスケーターたちがボランティアで協力している体制は美しい。国内最大級である高さ4.6mを誇る巨大バーチカルが常設されているなど超本格パークでありながら、水曜夜のスクールではアットホームな雰囲気が漂っている。彼らによる指導のもと、子供たちが目を輝かせながら遊びを本気で楽しんでいる姿。競技スポーツとしてだけではなく、横乗りならではの価値観を守ったうえで育まれていく文化。毎回思わされる。こうした積み重ねによって、ライフスタイルやカルチャーとして根づいていくのだと。 

 

野上大介(Daisuke Nogami)

大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社を経て、トランスワールドジャパン株式会社が発刊するスノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」に12年間従事。編集長として10年間に渡り職務を遂行し退社、現在に至る。2013年に開催された、アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、X GAMESやオリンピックなどのスノーボード競技において、テレビでの解説やコメンテーターとして活動するなど、その幅を広げている。

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