日本の文化としてスノーボードが根づく可能性

元ライダーの元雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.83
By 野上 大介

 

 

東京・渋谷まで約40分、群馬・丸沼高原まで2時間あまり。関越自動車道・練馬ICまでアクセス良好な自宅からの、おおよその所要時間だ。丸沼高原は、首都圏スノーボーダーが集中する沼田ICからもっとも遠距離に位置するのだが、関東地方とは思えない上質な雪が楽しめるため、群馬でも人気の高いゲレンデとして名を馳せている。

前職で培った経験値から推測するに、関東在住のスノーボーダーは全体のおよそ4割を占め、東京、埼玉、神奈川がその中心だ。東京に次いで埼玉在住のスノーボーダーが多かったように記憶しているが、その理由としては関越/東北自動車道がともに利用しやすく、さらに、東京や神奈川に比べると雪山までの距離が近いからだろう。また、神奈川のスノーボーダーが関越自動車道を目指すには都内を抜ける必要があったのだが、圏央道の開通によりアクセスが快適となり、雪山がより近くなったに違いない。

高速道路が全国津々浦々に伸びていること、そして、国土面積の約70%が山岳地帯であることから、我が国のゲレンデ数は世界でも指折りだ。国土交通省の外局である観光庁より2015年1月に発表された「スノーリゾート地域の現状」によると、アメリカは478、日本は395というゲレンデ数が記されている。さらに深掘りしてみると、リサーチした年度がわからないため数字は異なるものの、「海外の万国反応記」というサイトには、世界各国のゲレンデ数を比較した数字が紹介されており、日本はアメリカに次いで2番目に多いのだ。これを聞いてどう思うだろうか。アメリカの国土面積に比べると、日本はおよそ25分の1しかないのだが、ゲレンデ数に大差はない。それだけ密集したエリアに多くのゲレンデがあるのだから、街から雪山が近いということが言えるのではないか。

さらに「スノーリゾート地域の現状」を詳しく見ていくと、長野にゲレンデが集中しており全体の20%を有し、北海道が12.9%、新潟が12.2%と、これら1道2県で全体の45.1%。続いて、群馬と岐阜がともに5.8%、福島が5.6%、山形4.3%、兵庫3.8%、広島3.3%、青森・岩手・宮城・秋田・富山が2.5%、滋賀が2%で、それ以外の県は2%未満となっている。

反対に、屋内ゲレンデや雪を必要としないジャンプ練習施設、人工芝(ブラシ)のスロープを除き、いわゆるゲレンデが存在しない都府県を見ていこう。これらの都府県は、降雪に適した山岳地帯がない、もしくは、降雪に恵まれない気候ということになる。紹介していくと、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川は先述した関東地方に当たるのだが、大阪、奈良、和歌山のスノーボーダーが兵庫や滋賀の雪山へ足を運ぶことは、関東圏スノーボーダーが群馬や栃木を目指す感覚に近いのではないだろうか。関西圏に住んだことがないので断定できないが、そうであればアクセスしやすいはずだ。

そして残りの県は、長崎、熊本、鹿児島、沖縄になるのだが、近県にゲレンデがあるとはいえ絶対数は少なく、ウィンタースポーツに興ずるハードルは高いと言えるだろう。

しかし、ほとんどの政令指定都市からは雪山へのアクセスが素晴らしいだけでなく、数多のゲレンデが存在している。それでいて、全エリアとは言い切れないものの、日本の雪山は世界に誇れるポテンシャルを持ち合わせているのだ。特に北海道でのそれを指すが、“JAPOW”と称される極上パウダースノー。日本海側に面した山々に降り注ぐ豊富すぎる降雪量。だからこそ、オーストラリア、韓国、台湾、中国などからやってくる外国人たちが訪日旅行で楽しみたいスポーツのダントツ1位として、スノーボードやスキーなどのウィンタースポーツがランクインするわけだ(「スノーリゾート地域の現状」より)。

───週末。早朝5時くらいをメドに関越自動車道に乗れば、渋滞することなく7時すぎには丸沼高原に着く。しっかり準備をして朝イチのパウダースノーを堪能し、フリーライディングやパークライディングを楽しんだ後、渋滞を避けて少し早めにゲレンデを出発。夕方には都内に到着し、帰宅するもよし、別の用事を済ますもよし───これを近いと感じるか、遠いと思うか。恵まれていると考えるか、普通だと何も感じないか。

ここまで述べてきたように、日本はスノーボードをするうえで最高の環境が用意されている。価値観は千差万別だろうが、だからこそ、これまで以上に日本の文化としてスノーボードを浸透させたい。そう願いながら筆をおくことにする。

 

野上大介(Daisuke Nogami)
大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社を経て、トランスワールドジャパン株式会社が発刊するスノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」に12年間従事。編集長として10年間に渡り職務を遂行し退社、現在に至る。2013年に開催された、アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、X GAMESやオリンピックなどのスノーボード競技において、テレビでの解説やコメンテーターとして活動するなど、その幅を広げている。

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