夏だからこそ雪山の写真を眺めるススメ

元ライダーの元雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.85
  © Scott Serfas/Red Bull Content Pool
By Daisuke Nogami

「夏は何をされているんですか?」
15年以上に渡ってこの仕事を続ける中で、幾度となく質問された言葉だ。南半球の季節が日本と反対であることは誰もが知っているだろうから、山があれば滑れるということは想像に難くないはず。しかし、海を渡ってまで滑るという発想は一般的にないようで、ましてや、北半球の氷河でスノーボードができるなんて夢にも思わないのかもしれない。スノーボーダーでなければ、室内ゲレンデやマットを敷き詰めたジャンプ練習施設の存在など知る由もないのだろう。

明後日から7月に突入する。夏至を過ぎ、本格的な夏がやってくるわけだ。気象庁が発表している週間天気予報によると、東京では7月1日から5日間連続して最高気温が30℃以上の真夏日との予報(6月29日現在)。今夏はラニーニャ現象発生の可能性が高いとされており、冬季の降雪が期待できる反面、真夏は酷暑が予想されている。うだるような暑さによって、例年以上にスノーボードと乖離した生活になりそうだが……。そんなときにこそ頭を柔らかく使わないと。あえてスノーボードに触れることで、酷暑を乗り切れないものだろうか。そんなことを考えていたら、ある記事にたどり着いた。

小学館より発行されている総合週刊誌「週刊ポスト」の2011年8月12日号の記事なのだが、寒そうな風景写真を見ることで体感温度を下げる効果があるという内容。同記事内では色彩心理学者の山脇恵子氏に取材しており、一部を引用すると、「氷は冷たい、冷凍庫は寒い、ということは誰もが身体で経験していること。目で見た“冷たい風景”は脳内で過去の経験と結びつき、“寒い!”という記憶が呼び起こされる。イメージトレーニングが現実に同じ作用をもたらすように、写真を見て呼び起こされたイメージに脳が騙され、実際に寒さを感じるということは十分にありえます。加えて色の影響も。赤には筋肉の収縮や心拍数、血圧の上昇など人を興奮状態にする力がありますが、その対極にあるのが青です。青の特徴は鎮静作用。脈拍、血圧を抑え、精神をリラックスさせる。心身のクールダウンにはもってこいの色なんです」とのこと。この記事を執筆した記者は、宮城県気仙沼市の製氷冷凍工場の写真を前にして、なんと体感温度はマイナス3℃だったそう。汗もピタリと止まった、と記されている。

雪山に行ったことがない人には効果は薄いのかもしれないが、スノーボーダーであれば間違いなく効果覿面。夏だからこそ、滑りたいという思いを馳せながら、スノーボードのライディングや雪山の写真を眺めてみてはいかがだろうか。雪面が青味がかっている写真のほうが、体感温度も下がって精神もリラックスするということになるので、当コラムのイメージ写真を眺めて試してみてほしい。


そんな話が広まり、夏にもスノーボードが話題にのぼってくれたら幸いだ。

 

野上大介(Daisuke Nogami)
大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社を経て、トランスワールドジャパン株式会社が発刊するスノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」に12年間従事。編集長として10年間に渡り職務を遂行し退社、現在に至る。2013年に開催された、アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、X GAMESやオリンピックなどのスノーボード競技において、テレビでの解説やコメンテーターとして活動するなど、その幅を広げている。

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