どうして、スノーボーダーになったのか?

元ライダーの元雑誌編集長が綴る SNOWBOARDING IS MY LIFE. Vol.89
Mark McMorris © Scott Serfas/Red Bull Content Pool
By DAISUKE NOGAMI

スノーボードを始める動機ってなんだろう。一般的にスポーツを始めるケースを考えてみると、体育文化に根づいている競技であれば学校教育の一環として取り組む、地域に密着したクラブ活動に参加する、父や母からの影響を受けて始める、などが挙げられる。近年は親がスノーボードを経験している家庭が増えているが、まだ学校教育に根づいていないことや、金銭的な負担が大きいことから、一部の富裕層を除き、一般的にはアルバイトなどでお金を稼げるようになってからスタートする人が大半なのかもしれない。雪山の近くで生まれ育ち、幼少期から始めるというケースも少なくないだろうが。

僕は千葉県に生まれ、両親はスキーなどのウィンタースポーツを一切やらない家庭で育った。始めた動機は、ファッション性が高く、フリースタイルなアクションのカッコよさに惹かれたから。当時18歳、単純に“モテそう”だったからかもしれない。90年代初頭にボードにまたがった同世代たちは、スケートボードの延長線上にあったストリート感あふれるスノーボードに魅せられたはずだ。ネルシャツやバギーパンツを身にまとい、短くてファットなボードにまたがって、スケートライクなライディングスタイルで遊んでいたものだ。まだ発展途上にあったため技術的にイージーで、かつスケーターのファッションが流行していたことも重なってか、瞬く間に多くのスノーボーダーが誕生。雪上での新しい遊びが、とにかく新鮮だった。

その後、スケートボードと差別化を図るようにジャンプが大きくなり、スピンは複雑化しながら回転数が増加。ストリートテイストよりも防寒や防水性に重きが置かれるなかでファッション性が見出され、スノーボードという遊びが確立した。1998年になると国際的なメジャースポーツと化し、より広く周知されたことで、日本ではレジャースポーツとしての顔も持つようになった。“スノボ”や“スノボー”と略称で親しまれるようになり、冬旅行の目的のひとつとして取り組まれるように。その結果、あらゆる属性のスノーボーダーがゲレンデにあふれていったわけだ。

こう綴っていると、間口が広がったのだから参加人口は増加していそうなものだが、そうではない。「レジャー白書2014」(公益財団法人日本生産性本部)によると、2002年の540万人をピークに、その後も増減はあるものの、減少傾向が強いことは否めない。スノーボード人口に関しては1997年からのデータしかないのだが、2002年までは右肩上がりで増え続けていた。これは先述したように、国際スポーツとなりメジャー化したことでレジャー層が増えた結果だろう。だが、以降もライディングやギアは進化し続けていったのだが、それとは対照的に人口は減り続けている。いったいなぜか。

推論と肌感覚にはなってしまうが、国際スポーツとして技術向上に比重が大きく傾いたことで、一般的な視点に立ったとき、僕が始めた90年代のような手軽さが見えづらくなってしまったのだろう。また、スノーボード人口が急激に増加したことで多様な人々が入り乱れ、カッコよさが薄まってしまったのかもしれない。少子化や鮮度の低下も一因だが、何よりも始めたいと思わせる動機づけが弱いことが問題なのだろう。

しかしここ数年、バックカントリーがひとつのムーブメントを起こしている。昨今のアウトドアブームも相まってか、復活組はもちろん、登山の延長として新規層も増えていると関係者からよく耳にする。以前ならトリック習得に精を出していた10代後半~20代の若者たちの一部も、パークではなくバックカントリーでのライディングスタイルを志すという話も聞く。山岳スポーツという観点から見れば、パウダーターンを求めるスノーボーダーは増えているのかもしれない。

また、ベテランスノーボーダーたちは長きに渡って培ってきたターン技術を駆使し、ボウルライディングやバンクドスラローム、さらに言えば、“雪板”と称される自ら削った板にバインディングレスでまたがってパウダーを楽しむなど、新たな文化を築き始めているのだ。スノーボードが生活に欠かせない、ライフスタイルとして取り組んでいる大人たちが探究し続けているのだから、その奥行きは広がるばかりだ。

反面、街にいるような若年層の視点に立ったとき、現在のスノーボードには入り口が見当たらない。国際スポーツだからこそ、親の意思もあるだろうが、ジャンプ練習施設で高回転スピンを操るキッズスノーボーダーは増加した。僕と同世代にあたる団塊ジュニアのスノーボーダーたちは40代に突入し、先述したようにターンを追究しながらライディングに明け暮れている。そう、これら二極化の加速が止まらない。ここに危機感を覚えた。その理由は、双方ともに一般的な入り口にはなりづらいからだ。

高回転スピンやダブルコークを目指すハードルがすさまじく高いことは、容易に想像できるだろう。そして、始めた当初は仲間たちとスノーボードビデオを観まくっていたのだが、ターンのシーンは十中八九早送りしていた。経験を積んだうえでないと、ターンの面白さや奥深さを理解することは難しい。もちろん、ターンなくしてフリースタイルを語ることはできないわけだが、ここでは始める動機づけとして弱いという意味で綴らせていただいた。

こうした考えを、ここ数年持ち続けている。フリースタイルの原点に立ち返る必要性、そして、失いかけている何か。この何かを見つけ出し、そして再燃させるべく、一世一代の大勝負に出ることを決意した。この続きは、次回のVol.90でお届けしたい。 

 

野上大介(Daisuke Nogami)
大学卒業後、全日本スノーボード選手権大会ハーフパイプ種目に2度出場するなど、複数ブランドとの契約ライダーとして活動していたが、ケガを契機に引退。その後、アウトドア関連の老舗出版社を経て、トランスワールドジャパン株式会社が発刊するスノーボード専門誌「TRANSWORLD SNOWboarding JAPAN」に12年間従事。編集長として10年間に渡り職務を遂行し退社、現在に至る。2013年に開催された、アクション&アドベンチャースポーツのインターナショナル・フォト・コンペティション「Red Bull Illume Image Quest 2013」の日本代表審査員。また、X GAMESのほか各種スノーボード競技において、テレビでの解説やコメンテーターとして活動するなど、その幅を広げている。

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